83 / 491
5
82.私の現実~クラウディアside1
しおりを挟む
お兄様に放逐宣言された私は半ば無理矢理この別荘の使用人に部屋に押し込まれ、あろうことか鍵をかけられましたわ。
これではレイヤード様に許しを請いに行く事すらできません。
婚姻をもって公爵家から放逐····婚姻すればもう公爵家との関わりを完全に断たれてしまう。
私は恐怖に涙する事しかできませんでした。
翌日、ほとんど一睡もしていない状態の私は部屋から出され、よりによってあの偽物と同じ馬車で辺境領へ向かう事になりましたわ。
しばらく走ってからこの馬車がとても快適な事に気づきました。
けれどそれ以外は不快な事しかありませんでしたわ。
馬車に乗る前はお兄様が不安なお顔をされ、レイヤード様や侍女からはまるで私がこの偽物に危害を加えるかのような扱いを受けましたの。
いくら私でも公爵令嬢として偽物とはいえ他家の令嬢に直接的な攻撃など致しませんわ。
「危ないから持ってて」
なのにあの偽物は私に向けられた事のないレイヤード様の優しげな微笑みと共に渡された護身用らしい魔具を素直に受け取り····思わず睨み付け、けれどそんな人間だと思われているのも悲しくなり、溢れそうになるものが治まるよう視線を外してしまいました。
その後はお兄様や叔父様に謝罪と許しを得ようと思うものの無視され続けて機会をえられませんでした。
本来ならば格下の偽物が私の世話をすべきですのに終始無視してこの快適な馬車の中で寛がれ、初めはこれまでの事を忌々しく思い出しておりましたが、今朝の叔父様やレイヤード様の微笑みが私ではなくこの偽物に向けられていた事を思い出しては妬ましくなりましたの。
心が弱くなっていっているのでしょうか。
昨夜のお兄様や叔父様、そして愛しいレイヤード様に、もっと違う言葉で尽くせばわかっていただけたのではないかとあの時の自分を悔いるようになりました。
結局私は皆を騙しているこの偽物に負けてしまったのです。
「お前は何も言わないのね」
せめてこの2人きりの時間の間に私の前でだけでも化けの皮を剥がしてやりたい。
無力感に苛まれる自分を叱咤しつつも口調は弱々しくなっているのを自覚してしまいます。
何とか睨みつけながら本音を暴こうと言葉を続けていきましたわ。
「私は家族からフォンデアス公爵令嬢については何も聞かされておりませんでした。
そのような状況では何かを思う事そのものがありませんよ」
なのにすました返事ばかりで苛立ちがつのり、つい怒鳴ってしまいました。
それが良かったのか····。
「レイヤード兄様に付きまとった事、決まってもいない婚約者に成りすまそうとなさった事はグレインビル侯爵令嬢として、また兄様の義妹として今後は許しません。
調査資料を昨夜確認し、事実確認は致しました。
もちろんフォンデアス公爵家、グレインビル侯爵家の約3年前に取り交わした示談書にも目を通しております。
公爵令嬢であってもその言動はグレインビル侯爵家やその侯爵令息を社会的に貶めておりましたし、我が国の貴族法にも抵触しておりました。
家格が上であれば何でも許される事ではございません。
だから示談書という不名誉な公爵家からの書類が我が侯爵家に存在するんですよ」
やっと本音を吐き出しましたわね。
けれど偽物があげ連ねる言葉に私がした事があまりに常識から外れているのを自覚しそうになって、もうやめて欲しくて睨みつけて、けれど止める素振りもなく最後は品位にかけているとまで言われてカッとなってしまいましたの。
「お前のような元は卑しい捨て子などに!」
自分で張り上げた声に、けれどこれは人として言うできではないとこの時はまだどこかで冷静な自分もいましたが、徐々にそんな自分は消えていきました。
淡々と話すこの偽物の言葉が、今まで見ない振りをしていた物を突きつけてきます。
「だから何です。
元は何であれ、今の私はグレインビル侯爵閣下が認めたグレインビル侯爵令嬢です。
当然の事ですが、家格など関係なくたかが一介の令嬢が貴族家当主の決定に口を挟む権利はございません。
これが最下位とされる男爵家であっても同じです。
そのような事を平気でなさっているのですから、そう思われるのは仕方がない事でしょうね。
さしずめあなたは考え違いも甚だしい傲慢な小娘です」
「たかが一介の!?
傲慢な小娘!?」
「はい、私も貴方もたかが一介の貴族令嬢でしかありません。
貴族の身分など当主の意向でどうとでもなる、何の権限もない、先祖や親の威光に縋っているだけの貴族の娘なのですよ、フォンデアス公爵令嬢。
あなた自身に公の力や権限が何かございまして?
そのように考え違いも甚だしいから当主の気持ち1つで嫁がされるのです」
もう止めて!
知りたくない!
自分の置かれた現実を受け入れたくないのに!!
なのにこの偽物は更に辛辣に、そして淡々と私の現実を告げていくのです。
これではレイヤード様に許しを請いに行く事すらできません。
婚姻をもって公爵家から放逐····婚姻すればもう公爵家との関わりを完全に断たれてしまう。
私は恐怖に涙する事しかできませんでした。
翌日、ほとんど一睡もしていない状態の私は部屋から出され、よりによってあの偽物と同じ馬車で辺境領へ向かう事になりましたわ。
しばらく走ってからこの馬車がとても快適な事に気づきました。
けれどそれ以外は不快な事しかありませんでしたわ。
馬車に乗る前はお兄様が不安なお顔をされ、レイヤード様や侍女からはまるで私がこの偽物に危害を加えるかのような扱いを受けましたの。
いくら私でも公爵令嬢として偽物とはいえ他家の令嬢に直接的な攻撃など致しませんわ。
「危ないから持ってて」
なのにあの偽物は私に向けられた事のないレイヤード様の優しげな微笑みと共に渡された護身用らしい魔具を素直に受け取り····思わず睨み付け、けれどそんな人間だと思われているのも悲しくなり、溢れそうになるものが治まるよう視線を外してしまいました。
その後はお兄様や叔父様に謝罪と許しを得ようと思うものの無視され続けて機会をえられませんでした。
本来ならば格下の偽物が私の世話をすべきですのに終始無視してこの快適な馬車の中で寛がれ、初めはこれまでの事を忌々しく思い出しておりましたが、今朝の叔父様やレイヤード様の微笑みが私ではなくこの偽物に向けられていた事を思い出しては妬ましくなりましたの。
心が弱くなっていっているのでしょうか。
昨夜のお兄様や叔父様、そして愛しいレイヤード様に、もっと違う言葉で尽くせばわかっていただけたのではないかとあの時の自分を悔いるようになりました。
結局私は皆を騙しているこの偽物に負けてしまったのです。
「お前は何も言わないのね」
せめてこの2人きりの時間の間に私の前でだけでも化けの皮を剥がしてやりたい。
無力感に苛まれる自分を叱咤しつつも口調は弱々しくなっているのを自覚してしまいます。
何とか睨みつけながら本音を暴こうと言葉を続けていきましたわ。
「私は家族からフォンデアス公爵令嬢については何も聞かされておりませんでした。
そのような状況では何かを思う事そのものがありませんよ」
なのにすました返事ばかりで苛立ちがつのり、つい怒鳴ってしまいました。
それが良かったのか····。
「レイヤード兄様に付きまとった事、決まってもいない婚約者に成りすまそうとなさった事はグレインビル侯爵令嬢として、また兄様の義妹として今後は許しません。
調査資料を昨夜確認し、事実確認は致しました。
もちろんフォンデアス公爵家、グレインビル侯爵家の約3年前に取り交わした示談書にも目を通しております。
公爵令嬢であってもその言動はグレインビル侯爵家やその侯爵令息を社会的に貶めておりましたし、我が国の貴族法にも抵触しておりました。
家格が上であれば何でも許される事ではございません。
だから示談書という不名誉な公爵家からの書類が我が侯爵家に存在するんですよ」
やっと本音を吐き出しましたわね。
けれど偽物があげ連ねる言葉に私がした事があまりに常識から外れているのを自覚しそうになって、もうやめて欲しくて睨みつけて、けれど止める素振りもなく最後は品位にかけているとまで言われてカッとなってしまいましたの。
「お前のような元は卑しい捨て子などに!」
自分で張り上げた声に、けれどこれは人として言うできではないとこの時はまだどこかで冷静な自分もいましたが、徐々にそんな自分は消えていきました。
淡々と話すこの偽物の言葉が、今まで見ない振りをしていた物を突きつけてきます。
「だから何です。
元は何であれ、今の私はグレインビル侯爵閣下が認めたグレインビル侯爵令嬢です。
当然の事ですが、家格など関係なくたかが一介の令嬢が貴族家当主の決定に口を挟む権利はございません。
これが最下位とされる男爵家であっても同じです。
そのような事を平気でなさっているのですから、そう思われるのは仕方がない事でしょうね。
さしずめあなたは考え違いも甚だしい傲慢な小娘です」
「たかが一介の!?
傲慢な小娘!?」
「はい、私も貴方もたかが一介の貴族令嬢でしかありません。
貴族の身分など当主の意向でどうとでもなる、何の権限もない、先祖や親の威光に縋っているだけの貴族の娘なのですよ、フォンデアス公爵令嬢。
あなた自身に公の力や権限が何かございまして?
そのように考え違いも甚だしいから当主の気持ち1つで嫁がされるのです」
もう止めて!
知りたくない!
自分の置かれた現実を受け入れたくないのに!!
なのにこの偽物は更に辛辣に、そして淡々と私の現実を告げていくのです。
1
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う
ひなクラゲ
ファンタジー
ここは乙女ゲームの世界
悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…
主人公と王子の幸せそうな笑顔で…
でも転生者であるモブは思う
きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる