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64.本当の狙い
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「ミィの栽培方法、ねぇ」
「はい。
ただし私も確証があるわけではないので、まずは実験的に何株かで栽培、収穫した上での話になります。
グレインビル領で試せるならそうしたいんですが、まずはジャガンダでやってもらいたいんです。
本当は私直接ジャガンダに行き····」
「却下だぞ、アリー」
「····わかってます、バルトス義兄様」
バルトス義兄様、あわよくば直接現地に行こうとしてたの気づいたか。
もう、勘が鋭くて素敵なんだから。
「アリーちゃんの体の弱さは聞いてるよ。
大きな転移陣を国家間で張るにもまだ交易が盛んとは言えないからねぇ。
今は馬や船乗り継いで1週間もかかるから現地に来るのは難しいだろう。
うちは人員の確保や費用面で収益が見込めるならやってみても良いよ。
アリーちゃんの事だから、儲けは狙ってるんだろうし、うちにも利益を落としてくれるのを見越してんだろ?」
「ジャガンダも気候の変動が大きいと聞いてますし、距離が遠すぎて個人での転移は義兄様達でも厳しいですからね。
もちろん利益は見越してます。
今の世界情勢は大きな戦争がなくなって他国との交易が増えて中流階級以上の庶民も増えた分、上質な何かを求める傾向になっています。
ミィは苦味とえぐみ、雑味が抑えられれば十分国産商品として他国に出荷できる上、私が思う物が採取できれば違う商品を生み出すことも可能です。
ここからはカイヤさんの商会の方針のすり合わせも必要となるんですが、2人だけで話しますか?」
「そうだね、別の部屋でいったん話を聞かせてもらっても?」
「義兄様達には先にお話ししているので、カイヤさんと2人で話をしてきますね。
ウィンスさん、あと1品試食を用意しているんですが、お腹の具合はどうですか?」
「本当に?!
ぜひお願いしたいな」
僕はニーアに目配せしてカイヤさんと別室へ移った。
ーーーー
「これが計画書です」
別室に用意してあった資料を渡す。
「なるほど、栽培方法自体は手間がかかるもんじゃないのか。
でも日光に当てないだけで、本当にあの苦味が無くなるのかい?」
「他の植物にもあることなんですが、あの苦味は日光によるダメージを修復する為にできるものです。
富裕層が増える時に人が求めるのは上級嗜好品ですから、小さな手間を加えて良質の物を栽培して大きな利益にする行為は人件費を考慮しても損は無くなってジャガンダでも好まれるようになるかと。
加えてミィは古くなれば炒って劣化を隠すこともできるので、保存も効きます。
何より初期投資が少なく、現状の小規模栽培というのも理想的です。
まだ交易国としては日が浅い国なので、栽培方法を普及させたいのであれば情報の秘匿はしない方が良いと思いますし、秘匿して情報料を取りたいのならその逆も可能でしょう」
「へぇ、アリーちゃんはうちの商会の目的に気付いてるわけだね」
「どうでしょうね?
でもカイヤさんがただの商会の会長だとは思ってませんよ。
これでも貴族令嬢なので、商人としての言動の中にも品があることくらいは気づいてます」
そう、カイヤさんは口調はともかくふとした所作が綺麗だ。
恐らく生まれはジャガンダの貴族か、それに近い。
「アリーちゃんの本当の目的は?
うちの商品の開発や普及をしたところでこの領の利益とするには少ないし、この領の収益的な潤いを考えれば必要なわけでもない。
単なるお人好しでもないだろう?」
「探し物を早く見つけることですよ。
その為には信用できる情報やツテがあるにこしたことはありませんから。
あとは、食とあらゆる可能性への探求心ですね」
そう、僕は情報が欲しい。
早くあの子を見つけたくて仕方ない。
そして僕がこの世界に来る前にした彼との約束を果たさなければいけない。
「なるほどねぇ。
何を探してるか教えてくれるかい?」
「まだ駄目です」
「信用にたらないと?」
「その時ではないっていうだけですよ。
私の欲しい情報を安全にカイヤさんが得るにはもう少し商会の力を大きくしてもらわないと。
会長としての立場と権威が己を守る武器になるくらいに。
それにカイヤさんにはまだ恩を売ってないので。
恩は先に売るものっていうのが信条なんです」
「恩だけ貰って逃げるかもしれないよ?」
「なら私がそこまでの人間だっただけです。
商人は基本的には現金主義であるべきでしょう。
人と成りを見て客観的に判断するのは当然だし、利用価値もないのに馴れ合うのはお互いにとって良くありません」
カイヤさんは一瞬きょとんとして、笑いだした。
「····あはは!
なるほど、私も判断されてるわけか!
10才の世間知らずな深窓のご令嬢だと思ってると私の方が食われちまうね。
どちらにしても、この話には乗らせてもらうよ。
といってもこれからお試し栽培となるから、収穫して加工するまでに2年がかりか。
うちの国のベイもまだまだ普及が必要だし、特産品とするには先がほど遠い話だ」
「ありがとうございます。
そうですね、利益については栽培して収穫率を出してから具体的な試算になるでしょうね。
まずは収穫に至るまでのミィの栽培先の確保ですが、うちの領も1枚噛むので研究費として資金は提供します。
そこらへんは今度領主である父様とも話す必要があると思うので、現地の状況に沿った試算書をまとめてもらえますか。
それからベイについてですが、ウィンスさんと共同戦線で売り出すのも良いかもしれませんよ?」
「いったん国に戻ってからだから、2週間以内に領主宛に送るよ。
共同戦線はさっきの試作品の話かい?」
「新規顧客の開拓ができるかもしれません。
それでは、戻りましょうか」
戻った僕達はウィンスさんの満面の笑顔で迎えられた。
「はい。
ただし私も確証があるわけではないので、まずは実験的に何株かで栽培、収穫した上での話になります。
グレインビル領で試せるならそうしたいんですが、まずはジャガンダでやってもらいたいんです。
本当は私直接ジャガンダに行き····」
「却下だぞ、アリー」
「····わかってます、バルトス義兄様」
バルトス義兄様、あわよくば直接現地に行こうとしてたの気づいたか。
もう、勘が鋭くて素敵なんだから。
「アリーちゃんの体の弱さは聞いてるよ。
大きな転移陣を国家間で張るにもまだ交易が盛んとは言えないからねぇ。
今は馬や船乗り継いで1週間もかかるから現地に来るのは難しいだろう。
うちは人員の確保や費用面で収益が見込めるならやってみても良いよ。
アリーちゃんの事だから、儲けは狙ってるんだろうし、うちにも利益を落としてくれるのを見越してんだろ?」
「ジャガンダも気候の変動が大きいと聞いてますし、距離が遠すぎて個人での転移は義兄様達でも厳しいですからね。
もちろん利益は見越してます。
今の世界情勢は大きな戦争がなくなって他国との交易が増えて中流階級以上の庶民も増えた分、上質な何かを求める傾向になっています。
ミィは苦味とえぐみ、雑味が抑えられれば十分国産商品として他国に出荷できる上、私が思う物が採取できれば違う商品を生み出すことも可能です。
ここからはカイヤさんの商会の方針のすり合わせも必要となるんですが、2人だけで話しますか?」
「そうだね、別の部屋でいったん話を聞かせてもらっても?」
「義兄様達には先にお話ししているので、カイヤさんと2人で話をしてきますね。
ウィンスさん、あと1品試食を用意しているんですが、お腹の具合はどうですか?」
「本当に?!
ぜひお願いしたいな」
僕はニーアに目配せしてカイヤさんと別室へ移った。
ーーーー
「これが計画書です」
別室に用意してあった資料を渡す。
「なるほど、栽培方法自体は手間がかかるもんじゃないのか。
でも日光に当てないだけで、本当にあの苦味が無くなるのかい?」
「他の植物にもあることなんですが、あの苦味は日光によるダメージを修復する為にできるものです。
富裕層が増える時に人が求めるのは上級嗜好品ですから、小さな手間を加えて良質の物を栽培して大きな利益にする行為は人件費を考慮しても損は無くなってジャガンダでも好まれるようになるかと。
加えてミィは古くなれば炒って劣化を隠すこともできるので、保存も効きます。
何より初期投資が少なく、現状の小規模栽培というのも理想的です。
まだ交易国としては日が浅い国なので、栽培方法を普及させたいのであれば情報の秘匿はしない方が良いと思いますし、秘匿して情報料を取りたいのならその逆も可能でしょう」
「へぇ、アリーちゃんはうちの商会の目的に気付いてるわけだね」
「どうでしょうね?
でもカイヤさんがただの商会の会長だとは思ってませんよ。
これでも貴族令嬢なので、商人としての言動の中にも品があることくらいは気づいてます」
そう、カイヤさんは口調はともかくふとした所作が綺麗だ。
恐らく生まれはジャガンダの貴族か、それに近い。
「アリーちゃんの本当の目的は?
うちの商品の開発や普及をしたところでこの領の利益とするには少ないし、この領の収益的な潤いを考えれば必要なわけでもない。
単なるお人好しでもないだろう?」
「探し物を早く見つけることですよ。
その為には信用できる情報やツテがあるにこしたことはありませんから。
あとは、食とあらゆる可能性への探求心ですね」
そう、僕は情報が欲しい。
早くあの子を見つけたくて仕方ない。
そして僕がこの世界に来る前にした彼との約束を果たさなければいけない。
「なるほどねぇ。
何を探してるか教えてくれるかい?」
「まだ駄目です」
「信用にたらないと?」
「その時ではないっていうだけですよ。
私の欲しい情報を安全にカイヤさんが得るにはもう少し商会の力を大きくしてもらわないと。
会長としての立場と権威が己を守る武器になるくらいに。
それにカイヤさんにはまだ恩を売ってないので。
恩は先に売るものっていうのが信条なんです」
「恩だけ貰って逃げるかもしれないよ?」
「なら私がそこまでの人間だっただけです。
商人は基本的には現金主義であるべきでしょう。
人と成りを見て客観的に判断するのは当然だし、利用価値もないのに馴れ合うのはお互いにとって良くありません」
カイヤさんは一瞬きょとんとして、笑いだした。
「····あはは!
なるほど、私も判断されてるわけか!
10才の世間知らずな深窓のご令嬢だと思ってると私の方が食われちまうね。
どちらにしても、この話には乗らせてもらうよ。
といってもこれからお試し栽培となるから、収穫して加工するまでに2年がかりか。
うちの国のベイもまだまだ普及が必要だし、特産品とするには先がほど遠い話だ」
「ありがとうございます。
そうですね、利益については栽培して収穫率を出してから具体的な試算になるでしょうね。
まずは収穫に至るまでのミィの栽培先の確保ですが、うちの領も1枚噛むので研究費として資金は提供します。
そこらへんは今度領主である父様とも話す必要があると思うので、現地の状況に沿った試算書をまとめてもらえますか。
それからベイについてですが、ウィンスさんと共同戦線で売り出すのも良いかもしれませんよ?」
「いったん国に戻ってからだから、2週間以内に領主宛に送るよ。
共同戦線はさっきの試作品の話かい?」
「新規顧客の開拓ができるかもしれません。
それでは、戻りましょうか」
戻った僕達はウィンスさんの満面の笑顔で迎えられた。
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