上 下
21 / 491

20.レイヤード義兄様のお友達

しおりを挟む
 本格的な冬が始まり、僕は義父様の執務室で過ごす事が多くなった。
冬は体調が不安定になりやすいのもあって、義父様が魔法で直々に部屋の温度と湿度管理をしてくれる。
今年は特に直前の秋シーズンを体調不良で過ごしちゃったから、体力と体重が落ちてしまった。
そのせいで過保護に拍車がかかったんだと思う。

 例年は執務室と少し小さめの客室で半々に過ごすけど、今年はほぼ8割は義父様のいる執務室。
執務室にも客室にも僕がいつでも寝転べる大きめのソファが設置されてるんだ。

「そろそろだけど、アリーは本当にかまわないのかい?」
「レイヤード兄様のお友達のこと?
ここは兄様のお家でもあるから、兄様が自分のお友達を招くのに僕の許可はいらないでしょ?」
「彼らの目当てはお前だよ?」
「ふふ、お友達の兄妹が気になるのは不思議なことじゃないでしょ?
それに昔はバルトス兄様のお友達に会ったこともあるもの」
「王太子や彼の側近達とは年が離れすぎていたし、すでに全員婚約者がいたから今回とは状況が違うよ。
それにあの腹黒宰相と王都騎士団団長の息子も混ざってる」
「そちらとは本当に初めましてだよね。
でも僕はせいぜい挨拶くらいしかしないし、むしろ裏方さん達のお耳と尻尾としか触れ合うつもりないよ?
兄様にもそれで良いし、むしろそうしろって言われてるもの。
それに本当にまずかったら父様も兄様も僕に会わせないはずでしょ」
「まぁそうなんだが····」

 義父様が珍しく歯切れ悪く話す。
僕は眺めていた領地の収支報告書をそっと机に置く。
実は僕の携わった領地の特産品の管理を秘密裏に任されているのだ。

 義父様は何がそんなに気になるんだろう?
初対面の義兄様のお友達もいるし、少し注意しといた方がいいのかな。

 そう思っていると、コンコンと部屋をノックされる。
義父様が許可すると義兄様が入ってきた。

「ただいま、父上、アリー。
僕の友達が挨拶したいそうなんだけど、2人ともかまわない?」
「ああ」
「今行くね」

 義父上にエスコートされて客室まで一緒する。
抱っこされなくて良かった。

 客室にはすでに見知ったルドルフ殿下がソファに座り、その後ろに待ち望んだ黒と銀灰の獣人さんが立っている。
机を挟んで対面のソファには金髪に同色の狐耳とふさふさ尻尾の赤目獣人の少年、焦茶の髪に青目の人属の少年が並んで座る。

 僕達が入ると全員が起立して自己紹介を兼ねてご挨拶。
僕は義父様に紹介されてドレスの裾をつまんで略式の挨拶を返した。

「こんにちは、アリアチェリーナです」
「体調が悪かったと聞いていたが、もう良いのか?
少し痩せてしまったようだが」
「はい、家族のお陰で落ち着きました。
ご心配ありがとうございます」

 殿下も僕も余所行きニッコリ笑顔だ。

「よろしければアリアチェリーナ嬢ともご一緒にお茶などしたいのですが、かまいませんか、侯爵?」

 焦茶青目のキリリとしたインテリ系少年はマルスイード=ルスタ。
義兄様とよく似た背格好の彼が腹黒宰相の息子だ。

「ご子息からはよくアリアチェリーナ嬢のお話を伺っております。
よろしければ私もご一緒したいです。」

 金狐獣人さんが王都騎士団長の息子さんでラルク=ハーティス。
確か彼とマルスイード様はレイヤード義兄様と同い年だったはずだけど、背も体格も大きい。
そこの護衛2人と比べればまだ発展途上だけど、鍛えているのは服の上からもわかる。
ちなみに後ろの護衛2人は近衛騎士団の団長、副団長で主要王族の身辺警護や王宮内の取り締まりが主な仕事。
対して彼のお父さんは王都内の紛争や警備、他国への諜報が主な活動である王都騎士団団長で、5つの部隊を取り仕切る。

 それはともかく、殿下の口元が一瞬ニヤリと笑う。
あらかじめ僕を誘うように2人に根回ししてたな。
あーあ、義兄様も気づいたよ。
深みを増した義兄様の氷の微笑に3人共に目を逸らすなら、小細工しなければ良いのに。

「もちろん皆様がよろしければ、ご一緒させて下さいませ。
殿下とは商業祭でお約束しておりましたもの。
この客室は防犯も結界で万全ですの。
もちろん護衛の方ともお話させていただけるのでしょう?」
「もちろんだ、アリアチェリーナ嬢。
侯爵、レイヤード、かまわぬか?」

 ニコニコ、ニコニコと笑顔で殿下にモフりアピール、殿下は義妹を貸せアピール。
お互いちょっと力が入っている。
初対面の2人も何となく僕と殿下の空気に押され気味だ。

「かまいませんよ。
アリー、失礼のないようにね。
レイヤード、アリーを頼むよ」
「はい、父上。
アリー、行こう」

 義父様は退出し、僕と義兄様は一番奥のソファへと腰かけた。
黒豹と銀灰狼の尻尾が目に入って思わずにやけそうになったのを必死に抑えたのは言うまでもない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

処理中です...