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二章〜未来〜

【第六話】決戦

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「なるほどなぁ」
 奴の魔導が何となくだが見えた、だが見えただけだどうすりゃいいかはわからねぇ、理由は2つ、そのうち1つは奴の魔導だ、奴の魔導は驚く程シンプル、ただの【身体強化ビルドアップ】だ同じようなやつとは何度も戦ってきた、だがこいつは少し違う、【身体強化ビルドアップ】による身体能力の向上こいつはそれが他の奴とは桁違いだ、ただの突進ですら壁にめり込む威力だ、ここは【魔法連合マジカリスタ】最大のセキュリティを誇る施設だぜ?そこにまるで豆腐なんかに突っ込んでんのかってくらいの勢いだ
「…魔錆日でこれとかお前どうなってんだぁ?」
「…我は神に選ばれし者よ…貴様らのような愚か者とは違う…」
 割とまずい、俺が万に1つも負けることはなくてもかなりのダメージは覚悟した方が良さそうだ
戦槍ランス…アルケミー」
 俺は自らの手に槍を出現させ突っ込んだ、だがもちろんかわされる
「単純バカがぁ」
 その瞬間自分の服を無数の剣山にして防御したやつは拳を下げ、後ろへ跳んだ
「…不思議だな」
「あ?」
「【部屋ルーム】の魔導は自らの魔力でドームを創りその中のものならなんでも操れるというものではなかったか…私自身はともかく私の服やこのマスクを使えば私をいとも容易く殺せるのではないか…?」
「ちぃ…」
 気づかれたか、そう俺が不利な理由2つ目それはあいつと俺の魔導の相性だ、俺の魔導には少しのラグがある、その時間僅か1秒直接手で触れている時を除けば必ず1秒はかかる、あのアンドロイド相手の時はあらかじめ【部屋ルーム】を貼っていたからその間に細工を仕掛けることができたが今回は違う、どうにかしてあいつの動きを1秒間だけ止めるかもしくは直接手で触れるかすればあいつを殺せるが
「それが出来ねぇから困ってるってのによぉ!」
 奴の足元の地面をせり上げて天井と挟み押し潰そうとしたが、なんと殴って砕いたせり上がってる地面をまるで瓦割りのようにだ
「このっ…バケモンがぁ!」
「よそ見をしていていいのか?」
 気づいた時にはもう後ろに回られていた、しまったと後ろ振り向いた時には俺は反対側の壁に打ち付けられていた
「…どうした…これで終わりか…こんなものか…がっかりだ…」
 やつが無防備に近づいてくる
「バカがぁ…」
 その瞬間自分の背中の壁を押し出して飛び出した
やつは今は無防備、完全に避けることは不可能だつまり
「チェックメイトだぁ」
 飛び出した時に指先が一瞬だけ触れた、その触れた瞬間に奴の服の内側だけを鋭利な刃物に変えて串刺しにした。
鉄の処女アイアン・メイデンとでも言うかぁ…あぁーいってぇ~ここまでは久々かぁ…クックックおもしれぇなぁ!?」
 俺は天を仰ぎ言った、あぁ今の自分はなんてついているのだろうと今この世界でここまで幸せなのは俺以外にいるのかと、楽しくてたまらないこんな晴れやかな気分は初めてだ、もし全ての人物の運命を決める神がいるのならば一言言いたい、


「ハッ!なかなかやるじゃねぇかジジィ!気に入ったぜ!」
「気に入られても特に嬉しくはないがのう、ほれ」
 空中で身体を捻り蹴りを一発繰り出す、だが全く効きてる様子は無い、一応全力なんじゃがな
「そこまで効かないとちょっとへこむのぉ、お主なんなんじゃ」
「は?何って普通に人間だよ、科学者達によって遺伝子構造から何から何まで変えられた、哀れな人間さ」
「それが本当ならお主魔導を使えないのか?【科学連合サイエンティスタ】はそういう人体実験は自国でやるからの」
「そーだけどなんか文句あんのか?おめぇも同じだろ、魔導の気配を感じねぇまさかとは思うがおめぇ俺と同じ改造実験の」
「お主が思っとるのとは多分じゃが逆の人間じゃろうな、昔に研究のレポートを見たことがある人間の原子配列を当人の思うがままに操ることが出来る人間の研究、今のお主にそっくりじゃの」
 呆気にとられていた、それはもう大層なマヌケ顔でだと思っておったら、急に俯きながら震えて話し出した
「貴様等科学者のせいで…俺は…俺たちは…どれほど惨めだったと思っている!【科学連合サイエンティスタ】を追い出され!人として生きるだけでどれほど苦労をしたか!」
「あぁうるさいのぉ、言っておくがわしはその研究全く関わっとらんぞ、わしは興味がなかったからの」
 なだめようと自分は無関係だと伝えるが、わなわなと震えるやつに声は届くはずもない
「はぁ…仕方ないのぉ【血燐けつりん】」
 【血燐けつりん】自身の血液中にあるナノマシンを一斉に稼働させ身体能力を底上げする、わしの体内の内蔵はほとんどアンドロイドと変わらん自身のダメージになることはない
「すぐに片をつけるかの」
「やってみろクソジジイ!!!!!!【金剛石ダイヤモンド】!!!!!!」
 瞬間、2人が飛び出し2人のちょうど真ん中でぶつかり合った、いや正確にはぶつかりそして弾き飛ばされた
「ゲホッガハッ、ハァ…ハァ…科学者なんぞに…負けるとは…」
「だから言っとるじゃろわしは全く関係ないと、なぜわしを目の敵にするそれはお門違いってやつじゃよ」
「うるせぇ!科学者のせいで俺は…俺は!!!!」
「あほらしいのぉさっさと先に行かせてもらうぞ」
 スタスタと立ち去ろうとする、すると後ろから声が聞こえてくる、待て逃げるのかなどという罵声…なのか、だがあいにくわしにはもう何も無い、世界や他の人間なぞしらん、そうして無視を続けているとだんだんと声がほそくなっていき、ついには何もならない静寂となった



 危険信号を【bit】が鳴らす、私の偵察機のスペックでは勝てないことを物語っている
「だからと言って、負ける訳にはいかないのよ!【解放バースト】【拡散ショット】」
 羽の兵装を解放し拡散して放つ、だがやつはいくら体が崩れようとお構い無しに突っ込んでくる、アンドロイドならば当然だしかもこいつは私よりも最新のバージョンが搭載されている、私のスピードではこいつの攻撃を避けることは不可能だ
『【集中弾シュート】』
 気がついたら目の前にいた、私のセンサーも追いつけない程のスピードだ、私は奴の攻撃を左肩に受けた、幸い動かせないほど損傷がある訳では無いまだ左腕はつかえる
「【反重力アンチグラビド】【核砲ニトロショット】!」
 ビルマ戦の何倍にも威力が上がった攻撃で攻め立てる、今回はあの時と違い【針釘】は撃てない、つまり真っ向からで勝つしかない!
「【bit】!【全解放フルリリース】!」
 その時【bit】が弾けそして私の周りに浮遊している
「【融合ユナイト】!」
 次々に私のからだと合体していく、【bit】はただの偵察機では無い、いつもは容量が多く咄嗟の動きができないため外していた私専用の強化パーツ、その名を【マジカリズムアーマー】!
「【火炎陣】!」
 そう言った時奴の足元に魔法陣が形成され、巨大な火柱が出現した、この【マジカリズムアーマー】は多種多様あらゆる魔法陣をどこにでも形成することが出来る
「これが!科学と魔法2つの力だ!【核砲ニトロショット】!」
 立て続けにもう1発放つ、これでやれたかと思ったが、そうは上手くいかない、強引にからだが壊れながら突っ込んできたが当たっても全くダメージが無い、だが何度も何度もからだを私に打ち付けてくる、まるで任務に取り憑かれた人形…いやまるでは違う、私たちアンドロイドは人形だ
「…あなたも、何かを感じることができたなら、何かを思うことが出来たら…なにか違ったのかもね…すいません」
 そう言いながら私は彼の首を切り先へ進んだ、その時私は初めてどこかもわからない痛みを感じた。



 カツンカツンという音は変わらず聴こえる、いや少し音が増えた、これは水滴の音か?その音のさきには、返り血に塗れたヘルクの姿があった。
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