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一章〜復讐〜

【第七話】決着

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  俺はゆっくりと後ろを振り向いた、そこには首と身体がふたつに別れているの姿があった、
「…死んだ…?死んだのか…?」
  恐る恐るやつに近づき、指先でやつの体に触れてみた、何も反応は無い、今度は頭を鷲掴みにして、持ち上げてみた、切り口から血が滴るのを見た、その血に触れてみた、まだ生暖かいものを感じる、そっと頭を地面に置く、再び切り離された胴体を触ってみた、すると今度は温もりが少し無くなっていた、体も少し硬くなってきている、ここで確信に変わった、
「コイツは…死んだ…」
  それがわかった途端謎の高揚感が湧き上がってきた、それは歓喜なのかは定かでは無いが、その高揚感に身を任せ、俺は大声で高笑いした
「ハハハハハハハハハハ!!!!死んだ!!!!死んだぞ!!!!ざまぁねぇぜ!ハッハァハッハッハ!!!!」
  そこに転がってるものを叫び続けながらどんどん壊していく、その転がってるものが何も抵抗出来ないただの肉片に変わったことに、その時の俺はとても歓喜していた。


「これでよしっと、一応これで最低限動けはするじゃろ、どうじゃ?違和感はあるか?」
  私は試しに、指を折りたたみ拳を作ってそして開いて、という動作を2~3回行った、以前の腕と違い感覚はないが、問題なく手としての機能は完全にこなせるだろう
「問題ありません」
「そうか、足はどうじゃ?」
  私は膝を曲げて伸ばしてをまた2~3回ほど繰り返す、こちらも腕と変わりなく感覚はないが足としての機能は完全にこなせると思われる
「こちらも問題ありません」
「そうか、流石に重力装置はねは持って来れんかったが、何とか動けるようで安心したわい、さて、急がんとなヘルクがどうなっとるかわからんからのぉ、えらい怪我して動けんくなっとるかもしれん」
「っ…急ぎましょう」
  私は腰にある、【噴射装置ジェットパック】を起動して全速力で【主人マスター】の元へ向かった、【主人マスター】…無事でいて下さい…


  探しに出て少したった頃、【主人マスター】がいた、私は思わず笑みが零れた、大声で【主人マスター】を呼ぼうとしたが、呼ばなかった、いやと言った方が正しいだろうか、そこには私の知る【主人マスター】はいなかった、いたのはただ狂気に満ちた形容しがたい化け物、強いて言うなら

悪魔デモン

  そこには、もう復讐という人生の目的を果たし、ただただ居場所を探し、迷い、喜び、そして悲しんでいる、ただの悪魔が、奴らにとっての悪魔がそこに生まれた

  止めたい、止めて…止めてどうする?私に何ができる?私はただのアンドロイド、人間には、なれない、私じゃの生きる意味にはなれない、それがとても辛い、心が痛い、
  何もできない、自分が憎い、嘆くことしかできない、自分が憎い、人間じゃない、自分が憎い、色々な感情が渦巻く、この心で、機械仕掛けの冷たい心で何ができるのだろう、私に心がある理由とはなんだろう、確かに博士が私の心を作ってくれた、だがそれだけなのだろうか?何か意味があるんじゃないか?私の意味とは?
  そんな風に考えているうちに肩にポンと手を置かれる、ふっと振り向くと、博士がいた
「見ろ、あれがお前の【主人マスター】じゃ、あいつは幼少期を狭く苦しい独房で育ち、そして唯一の拠り所だった肉親までも失った、そんな男の末路があれじゃ、行き場所のない感情全てを憎むべき相手にぶつけておる、おそらくそこにしか心の拠り所がないんじゃろう、お前に何ができるだろうか、何もできないかもしれん、ただ何ができる何ができないじゃない、もうあいつにはお前しかいない、お前がやらなきゃあいつは救えんのじゃ、何ができるできないなんかは関係ない、お前が何かしてやらなきゃあいつはいずれ潰れてしまう、支えてやってくれ、それが今のお前にできることじゃ」
  私は自分の手のひらを見ながら呟いた
「…支える」
  こんな小さな手で何が支えれるだろうか、でももし、何かの支えになるなら、いやならなかったとしても、私はあなたに尽くします、それが私の生きる意味だから、今は、そう思うから、作り物の冷たい機械仕掛けの心が命じた、私の想い、全てをあなたに捧げたい、あなたのその悲しみを少しでも背負いたい、たとえそれが許されなくても、私はあなたの…側にいたい。



  あれからどれだけの時間がたったのだろうか、もう肉片ひとつ残らなくなったところで、【主人マスター】がこちらを振り向いた、そのままこちらに歩いてきて、一言「…帰るぞ」
  私は今出せる最大の笑顔で応えた、

「はい!」
  あなたはこれからどうなっていくのか、私にはわからない、だけどあなたがどうなろうと、私はあなたの側にいます、この数時間であなたは人間でなくなってしまったのかもしれない、でも、それでも、あなたは私の【主人マスター】です。

  この光景は滑稽だろうか?人間であるはずのヘルクが人間でなくなっていくのに対し、機械、アンドロイドであるはずのリィズが人間らしくなり、感情が芽生えていく、確かに普通の人間とアンドロイドならばおかしいだろう、だが彼らはこれでいいのかもしれない、もしかするとこれは選択として間違っているのかもしれない、だがそれは誰にもわからない、我々にもわからないし、本人達にもわからない、だが見届けることはできる、どうかこの2人いや、1人と1機を見届けて欲しい、いつか私に牙を剥くその時まで、見届けて欲しい、

さぁいこう物語はまだ、始まったばかりだ。


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