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序章〜終わり、そして始まり〜

【第十話】終わり

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  どうすればいいのか分からない、僕は無我夢中で走った、お母さんも置いてきて、ジャックも置いてきた、二人が心配になりふと足を止めた、
「、、、、やっぱり、戻った方がいいのかな」
  そんなことを呟いたその時、
「戻る必要はないぞ」
  言葉を失った、冷や汗が出る、身体中が震えるのを感じる、逃げたくても逃げられない、恐怖で身体が動かない、おそるおそる後ろを振り向くと、そこにはあの悪魔のような人間がいた、
「う、うわあああああ!!!」
  僕は腰を抜かしながら、悪魔から離れる様に後ずさる、
「そんなに怯える必要はないだろう、すぐに楽になるのだからな」
  (もうダメだ、僕は死んだ、助けてお母さん、助けてジャック、助けて神様)
  なんて思っていると、ふとある言葉がよぎった
  (あたしと、お母さんのために逃げてくれ)
  それはジャックの最後の言葉だった、二人とも僕を守るために死んだ、お母さんが死んだ時必死に僕に隠そうとしていたけど、ホントは全部分かっていた、あんなに自分に余裕がない時でも、僕のことを考えてくれて、精一杯の笑顔を僕に見せてくれていた、お母さんもそうだ、この悪魔には誰よりも恐怖しているのに、僕とジャックを守るために命をかけて救ってくれた、
  二人がくれた、僕の命無駄にすることは絶対に出来ない!!!
「、、、、ねない」
「は?」
「僕はまだ死ねないんだああああ!!!」
  そう言うと、僕は悪魔に魔弾を撃った、何発も何発も、大量に撃った、だけど
「、、、、やはりこんなものか」
  悪魔は涼しい顔して立っていた、
「だったら、これでどうだ!!!」
  僕は悪魔の目の前に立ち、悪魔の顔の目の前に手をかざして、
「【閃光フラッシュ】!!!」
  と言った、すると悪魔は苦しむような声を出しながら、うずくまった、
  (今だっ!!!)
  僕は出口に向かって一直線に走った、
  (出口は見えてる!!このまま走り去れば!!)
  そう思ったその時、
「【破壊デストロイ】」
  後ろからそんな声が聞こえて来た瞬間、僕は左手に違和感を覚えた、何も感じないのだ、視線をふと左手にやると、左手が消えていた、
「あ、、、、ああああ!!」
  瞬間激痛が走り出した、悶え、苦しみ、吐瀉物も何度も吐き出した、
「ちぃ!!外したか、、、、まあいい、これで奴は動けない、これで思う存分、奴を殺せる」
  悪魔が寄ってくる、このままだと死ぬ、そう思った僕は何故か冷静だった、冷静だった僕は一つの作戦を考えた、賭けだし成功率は多分低い、でもこれをやらなきゃ、僕は確実に死ぬ、そんなのは嫌だ!!!
  (絶対決める、そして絶対に逃げる!!!)
  あと五歩、四歩、三歩、二歩、一歩、ここだ!!!
「【斬撃ブレイド】!!!」
  振り向きざまに奴に食らわせた、【斬撃ブレイド】は奴の右肩に命中し奴の右腕を吹き飛ばした、恐ろしい断末魔が屋敷全体に響き渡る、その隙に僕は立ち上がり、走り出した、不思議と痛みは消えていた、
「ぐっ、待てぇ!!!」
  僕は無我夢中に走り出した、あの悪魔の城から脱出したのだ、僕は思わず、叫び出した、
「やった!!!ついに出た!!!やったよお母さん!!!やったよジャック!!!」



  なんという屈辱、この俺が片腕を無くし、あまつさえ取り逃がすだと、
「こんなこと、あっていいはずがない!!!」
  思わず床を叩きつける、叩きつけた床には、少しヒビが入っていた、
「だが、、、、奴ももうじき死ぬ、なんせ腕がないんだからな、血が止まらず出血多量でいずれ死ぬだろう、望んだ結果ではないが、変わらん、そう変わらんのだ、、、、」
  俺は自分に言い聞かせる様にそう言った。



「、、、、ん、んあ」
  目が覚めると、そこは知らない家の中にいた、
「捕まった、、、、訳じゃ無さそうだな、左腕の治療もされてある、一体誰が」
「目覚めましたか、御客人」
「うわあ!!びっくりした、急に話しかけて来るんだもの」
「失礼、記憶インプットしておきます」
  なんだか変なのが現れたこいつの家なのだろうか、
「解、ここはルズリグル博士の研究所ラボにございます、当機の所有物ではございません」
「え?僕まだ何も言っていないけど、なんで思ったことがわかるの?」
「解、当機のAIに搭載されている、シンクラーディング、と呼ばれる装置を利用致しました、シンクラーディングというのは、いわゆる心と呼ばれる人間の器官のデータをスキャンし、ラーディングした後に、スキャンした内容についての仮説をたてる装置のことで、心の場所特定については、人間の脳をスキャンしており、思考している内容をスキャンすることにより、心で感じたことの仮説を立てることが出来ます、あとスキャンの方法についてですが、、、、」
「OK、もういい充分に分かったから」
「承知」
  本当に変なやつに絡まれた、その白と黒のふわふわした服と言い、変なやつ
「解、この服は【メイド服】と呼ばれるもので、主に給仕や清掃などの雑務をこなす時の服にございます、着替えても良いのですが、気に入っているので」
  そう言うと、笑顔でお辞儀をした、赤みがかかった奴の髪が揺れる、やっぱり変なやつと思ったら、
「ほっほっほっ、お目覚めかな」
  そう言いながら、奴の膝丈ぐらいまである白い服を着た、髭を伸ばした老人が出てきた、
「博士、おはようございます」
「おぉ、おはよう」
「誰だ!!!」
  僕は奴に魔弾を撃つ構えを取った、するとやつは
「命の恩人にそりゃないじゃろ」
「命の恩人?」
「お前さんが荒野のど真ん中で倒れとるから拾ってきたんじゃよ」
「この腕は」
「ついでじゃ、今日はもうゆっくりしていけい」
  そう言いながら奥の部屋へとまた戻って行く、
「ゆっくりってどうすれば」
「こちらへどうぞ」
「、、、、登場の仕方もうちょい何とか出来ないもんかね、一々驚いてたらきりがない」
「どうぞ」
  少し高圧的に繰り返す、僕はしぶしぶついていった、



  用意されたベッドに寝そべりながら考えた、
  (これで、、、、終わったのか?)
  (たしかにあそこからは逃げられたけど)
  (まだ何も、、、、)
  ここで突然眠気が襲って来た、
  (いいや、もう寝てしまおう)
  その日僕は死んだ様に寝るとはこんな感じなのかと身をもって体験した。  

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