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49.キラキラ王子様
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追記
ラスキスの顔面についての描写を変更致しました。
アイドル顔→女神顔
皆様の脳内に居るラスキスにも影響してしまうかと思います。
私の計画力不足でご迷惑をおかけしますが、どうかご理解お願いいたします。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「しかし、救国の乙女の夫は未だに3人か?」
さっきまではすごく深刻な顔で怒っているようにも見えた王様だけど、一度話がついたら少し笑顔になっていた。
イカつい雰囲気じゃなくなったからイケおじ鑑賞会でもしてようかな。
「そうでございます」
「それは少なかろう。それに、見たところ年嵩の夫が多い様子。
良き者をこちらから紹介しよう。入れ」
いや、イケおじに気を取られてる場合じゃなかったみたい。カイル達が気にしてた、王子を夫にする話が始まった。
正直さっきのは話だけでこっちが本命っぽかったし、ちゃんと見とかないと。
「失礼致します」
普通の挨拶と共に、普通に入ってきたはずの青年は、全く普通じゃなさすぎて固まってしまった。
女神だと言われたらそのまま信じてしまいそうなくらいの、超絶美貌。
ツィリムは中性的な中にも少し男の子成分がある天使くんだけど、この人はかなり女性的な、圧倒的な美しさだ。
王様よりも色の薄い金髪と、透き通った金の瞳がより一層神々しさを演出している。
最近は旦那様たちとずっと一緒にいるから、イケメン耐性が付いているからギリギリ理性を保てているけれど、危うくふらっと靡いてしまいそうだ。
「初めてお目にかかります、救国の姫さま。私の名はラスキス・イラ・アセスリート。どうぞよろしくお願いいたします」
片膝をついて優雅に私の右手をとり、柔らかく微笑むその仕草はまるでおとぎ話の王子様のよう。
あまりの美しさにその場の空気は完全に彼のもので、私は言葉を失って固まることしか出来ない。
私を抱えているエルの腕の力が抜けて、後ろに倒れそうになったから慌ててエルを見たら、完全に彼に魅入られたように固まっていた。
つんつん、と見えないように胸元をつついたらようやく意識を取り戻してくれたみたい。
「姫さまは、異国からおいでになったと聞いております。この国では戸惑うこともあるかと思いますが、わたくしとも仲を深めていただきたく存じますよ」
顎のあたりで切りそろえられた髪が揺れるだけでもう神々しくて。
ぼーっとした脳みそでちょこっと頭を下げようとしたら、エルにガっと頭を掴まれて胸元に寄せられた。
「……本当に彼でいいんですか?」
「どういうこと?」
「もう夫を決めてしまうんですか、と聞いています」
「えっ……いや全然。今決めなきゃダメ?」
彼の雰囲気にふわーっとなっているだけで、結婚したいと思っている訳ではない。
恋愛というより、教祖様を崇めているような気分。
「イズミルが視線を向けて合図をしたら、彼を気に入ったということになります。
だから僕が止めたのですが。
まだもう少し彼を知る時間が必要でしょう?」
「うん」
さっきまでエルもぼーっとしてたのに、もう立て直してくれたらしい。
ずっと雰囲気に飲まれている私とは大違いだ。
「では、そのまま動かずに僕にひっついていてください」
私の頭をひと撫でしてくれたあとで王さまとの話に戻るエル。
ラスキス君がしばらく私たちの家に通うことで話が落ち着きそうだ。
そんな話を聞きながら、ここでも文化の違いだなーということを身に染みて感じていた。
大人しくして話をしない。それは守っていたつもりだけど、私が会釈するだけで結婚OKになるとは全然思ってなかった。
それを察してくれたエルには感謝だし、みんなに支えてもらってようやく生きていけてるんだな、と思った。
「救国の乙女は夫を大切にする人柄のようだ。我が息子も、その愛と幸福に触れられることを願い、この場を納めるとする」
なんだか私に『息子を旦那にしろよ』って圧をかけてる気のする締めの言葉で今日の一大イベントは終わりになった。
馬車を手配するまでの間は、控え室で待たせてくれるらしい。
「ふぅ。カイル、エル、ツィリム、本当にありがとう。みんなが居なかったら、私だけじゃどうにもならない所だったよ」
万能翻訳機能で言葉は分かるのに、言い回しが難しすぎて通訳が要りそうだったからね。
「俺たちが大切な妻を守るのは当たり前だ」
「おれは、あんまり何も出来なかった。ごめん」
ツィリムがしょぼんとしてしまったから慌てて髪をなでなでする。
「ツィリムもいつも頑張ってくれてるよ。ありがとう」
「イズミル、今回紹介された王子についてはどう思いましたか? 当面家に来ることになってしまいましたが、嫌ならばいつでも変更できます」
エルが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「いやあ、すっごいイケメンだったね! この国はイケメン多いと思っていたけど、レベルが違う感じ」
「噂には聞いていましたが、凄い美形ですよね! 僕もうっかり見入ってしまいましたよ」
エルも同意してくれているし、こっちの世界の基準でもやっぱり超絶美形なんだ。
「俺としては、ラスキス殿下が出てきた時点で王宮側が本気でイズミルを落としに来てると感じたな」
「うん。危うく落とされそうだった」
そう言った瞬間、ツィリムの機嫌があからさまに悪くなった。
この子はヤキモチ焼きさんだからね~、あとでフォローしてあげないと。
「ラスキス殿下は第5王子で外務の役に付いていて、あの美貌を存分に活用していらっしゃる。
交渉に長けたいい歳の男にでも効果のある顔だからな、イズミルが惹かれて当たり前だ」
「確かに、あの顔で何かお願いされたら何でも聞いてあげたくなっちゃうかも。
でも、本人の性格はどうなんだろうね? 顔が凄いのは分かったけど、一緒に生活するなら中身の方が大事でしょ?」
「うーむ。少なくとも、積極的に攻撃しては来ないと思うし、王家との繋がりとして結婚するならそれなりにいい相手だとも思う」
「カイルが賛成してることは分かったよ。私はやっぱり性格も気に入った人が良いから、会ってちゃんと話してみないと分からないかな」
「じゃあ、帰ろ?」
広間を出てからもエルに抱っこされていたのに、ツィリムが奪うように私を抱き寄せた。
「もういいよね? 帰ろ?」
ヤキモチさんが我慢出来なくなったらしい。
帰るって連呼している。
「うん、いいよ。帰ろっか」
でも、それだけじゃなくて明らかにツィリムの様子がおかしい。普段あまり話さない子だけど、ここまで頑なじゃないのに。
「俺たちはまだやることがあるから、ツィリム頼むな」
カイルとはその場で別れ、エルも馬車止めまでは来てくれたけどそこから他所へ行ってしまった。
馬車はツィリムが動かしてるみたいで、動き出してもツィリムは座席に戻って来なかった。
そのおかげで少し考える時間ができた。
王さまとの話は言い回しが難しい時もあったけどとりあえず悪くはなかった。たぶん。
話の大事なところは私でも分かる感じだったし。
あとの問題はラスキス君のことかな。
でも、無理ならごめんなさいって言えばいいだけだし、最悪、嫌々って言い続けてチェンジを繰り返すことで先延ばしに出来る気もする。
ただ、目下のところ一番の問題は様子のおかしいツィリムのこと。
何だか思い詰めた雰囲気だったけど、どうしたのかな。
ラスキスの顔面についての描写を変更致しました。
アイドル顔→女神顔
皆様の脳内に居るラスキスにも影響してしまうかと思います。
私の計画力不足でご迷惑をおかけしますが、どうかご理解お願いいたします。
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「しかし、救国の乙女の夫は未だに3人か?」
さっきまではすごく深刻な顔で怒っているようにも見えた王様だけど、一度話がついたら少し笑顔になっていた。
イカつい雰囲気じゃなくなったからイケおじ鑑賞会でもしてようかな。
「そうでございます」
「それは少なかろう。それに、見たところ年嵩の夫が多い様子。
良き者をこちらから紹介しよう。入れ」
いや、イケおじに気を取られてる場合じゃなかったみたい。カイル達が気にしてた、王子を夫にする話が始まった。
正直さっきのは話だけでこっちが本命っぽかったし、ちゃんと見とかないと。
「失礼致します」
普通の挨拶と共に、普通に入ってきたはずの青年は、全く普通じゃなさすぎて固まってしまった。
女神だと言われたらそのまま信じてしまいそうなくらいの、超絶美貌。
ツィリムは中性的な中にも少し男の子成分がある天使くんだけど、この人はかなり女性的な、圧倒的な美しさだ。
王様よりも色の薄い金髪と、透き通った金の瞳がより一層神々しさを演出している。
最近は旦那様たちとずっと一緒にいるから、イケメン耐性が付いているからギリギリ理性を保てているけれど、危うくふらっと靡いてしまいそうだ。
「初めてお目にかかります、救国の姫さま。私の名はラスキス・イラ・アセスリート。どうぞよろしくお願いいたします」
片膝をついて優雅に私の右手をとり、柔らかく微笑むその仕草はまるでおとぎ話の王子様のよう。
あまりの美しさにその場の空気は完全に彼のもので、私は言葉を失って固まることしか出来ない。
私を抱えているエルの腕の力が抜けて、後ろに倒れそうになったから慌ててエルを見たら、完全に彼に魅入られたように固まっていた。
つんつん、と見えないように胸元をつついたらようやく意識を取り戻してくれたみたい。
「姫さまは、異国からおいでになったと聞いております。この国では戸惑うこともあるかと思いますが、わたくしとも仲を深めていただきたく存じますよ」
顎のあたりで切りそろえられた髪が揺れるだけでもう神々しくて。
ぼーっとした脳みそでちょこっと頭を下げようとしたら、エルにガっと頭を掴まれて胸元に寄せられた。
「……本当に彼でいいんですか?」
「どういうこと?」
「もう夫を決めてしまうんですか、と聞いています」
「えっ……いや全然。今決めなきゃダメ?」
彼の雰囲気にふわーっとなっているだけで、結婚したいと思っている訳ではない。
恋愛というより、教祖様を崇めているような気分。
「イズミルが視線を向けて合図をしたら、彼を気に入ったということになります。
だから僕が止めたのですが。
まだもう少し彼を知る時間が必要でしょう?」
「うん」
さっきまでエルもぼーっとしてたのに、もう立て直してくれたらしい。
ずっと雰囲気に飲まれている私とは大違いだ。
「では、そのまま動かずに僕にひっついていてください」
私の頭をひと撫でしてくれたあとで王さまとの話に戻るエル。
ラスキス君がしばらく私たちの家に通うことで話が落ち着きそうだ。
そんな話を聞きながら、ここでも文化の違いだなーということを身に染みて感じていた。
大人しくして話をしない。それは守っていたつもりだけど、私が会釈するだけで結婚OKになるとは全然思ってなかった。
それを察してくれたエルには感謝だし、みんなに支えてもらってようやく生きていけてるんだな、と思った。
「救国の乙女は夫を大切にする人柄のようだ。我が息子も、その愛と幸福に触れられることを願い、この場を納めるとする」
なんだか私に『息子を旦那にしろよ』って圧をかけてる気のする締めの言葉で今日の一大イベントは終わりになった。
馬車を手配するまでの間は、控え室で待たせてくれるらしい。
「ふぅ。カイル、エル、ツィリム、本当にありがとう。みんなが居なかったら、私だけじゃどうにもならない所だったよ」
万能翻訳機能で言葉は分かるのに、言い回しが難しすぎて通訳が要りそうだったからね。
「俺たちが大切な妻を守るのは当たり前だ」
「おれは、あんまり何も出来なかった。ごめん」
ツィリムがしょぼんとしてしまったから慌てて髪をなでなでする。
「ツィリムもいつも頑張ってくれてるよ。ありがとう」
「イズミル、今回紹介された王子についてはどう思いましたか? 当面家に来ることになってしまいましたが、嫌ならばいつでも変更できます」
エルが心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「いやあ、すっごいイケメンだったね! この国はイケメン多いと思っていたけど、レベルが違う感じ」
「噂には聞いていましたが、凄い美形ですよね! 僕もうっかり見入ってしまいましたよ」
エルも同意してくれているし、こっちの世界の基準でもやっぱり超絶美形なんだ。
「俺としては、ラスキス殿下が出てきた時点で王宮側が本気でイズミルを落としに来てると感じたな」
「うん。危うく落とされそうだった」
そう言った瞬間、ツィリムの機嫌があからさまに悪くなった。
この子はヤキモチ焼きさんだからね~、あとでフォローしてあげないと。
「ラスキス殿下は第5王子で外務の役に付いていて、あの美貌を存分に活用していらっしゃる。
交渉に長けたいい歳の男にでも効果のある顔だからな、イズミルが惹かれて当たり前だ」
「確かに、あの顔で何かお願いされたら何でも聞いてあげたくなっちゃうかも。
でも、本人の性格はどうなんだろうね? 顔が凄いのは分かったけど、一緒に生活するなら中身の方が大事でしょ?」
「うーむ。少なくとも、積極的に攻撃しては来ないと思うし、王家との繋がりとして結婚するならそれなりにいい相手だとも思う」
「カイルが賛成してることは分かったよ。私はやっぱり性格も気に入った人が良いから、会ってちゃんと話してみないと分からないかな」
「じゃあ、帰ろ?」
広間を出てからもエルに抱っこされていたのに、ツィリムが奪うように私を抱き寄せた。
「もういいよね? 帰ろ?」
ヤキモチさんが我慢出来なくなったらしい。
帰るって連呼している。
「うん、いいよ。帰ろっか」
でも、それだけじゃなくて明らかにツィリムの様子がおかしい。普段あまり話さない子だけど、ここまで頑なじゃないのに。
「俺たちはまだやることがあるから、ツィリム頼むな」
カイルとはその場で別れ、エルも馬車止めまでは来てくれたけどそこから他所へ行ってしまった。
馬車はツィリムが動かしてるみたいで、動き出してもツィリムは座席に戻って来なかった。
そのおかげで少し考える時間ができた。
王さまとの話は言い回しが難しい時もあったけどとりあえず悪くはなかった。たぶん。
話の大事なところは私でも分かる感じだったし。
あとの問題はラスキス君のことかな。
でも、無理ならごめんなさいって言えばいいだけだし、最悪、嫌々って言い続けてチェンジを繰り返すことで先延ばしに出来る気もする。
ただ、目下のところ一番の問題は様子のおかしいツィリムのこと。
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