旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん

文字の大きさ
上 下
39 / 56

39. 言葉で伝えることが大事

しおりを挟む

とりあえずの応急処置は終わったみたいなので気になっていた事を言っておく。

「こんなガチガチに固いベンチに寝かせてて大丈夫かな? ベッドに運んだ方が良くない? 医務室とか」

「このままで全然大丈夫だ。新人の頃に皆一度はなる症状だし、俺もツィリムもなったことがある。
本当に、放っておけば治る」

「そんなによくある事なら大丈夫ね。ありがと」

ツィリムが目を覚ますまではここでのんびりしてるのかな、と思っていた所でエスサーシャさんが話し始めた。

「カセスターニャが落ち着いたんなら、ちょっとだけ聞きたいこと聞いていい?」

「イズミルの体質のことか?」

「そう! 何、あの魔素の量!? 信じられないんだけど!」

私は分かってなかったけど、かなり異常なことだったらしいね。

「異世界の人だという事は知っているだろう? それに加えて少し変わった体質持ちなだけだ」

「ちょっとどころじゃないじゃん! オレにもその魔素使わせて欲しいし!」

私に向かってそんな真剣に訴えられても何も分かってないんだよ、ほんとに。
魔素を使わせてあげるなんて、どうしたらいいのか分かんないし。

伺うようにカイルを見ると、

「丁度いい機会か」

ぼそりと呟くようにそう言った。

「そのうち話として広めるつもりだからセラルシオに先に話してしまってもいいだろう。
イズミルの魔素の量は尋常じゃない。おそらく龍脈に直接繋がっているから実質的に無限だと思う」

「えっ、そんなに!?」

「ああ。ただ、そうなると戦力として、最悪戦争に連れて行かれたり、ということになる可能性もあるだろう。イズミルが望まないことを無理にさせてくることはないと思いたいが、今の情勢を見ていると戦になってもおかしくはないからな」

「たしかに」

「ただ閉じ込めて隠しているだけだと、いざと言う時に連れ去られてしまうかもしれない。
積極的に力を示して、イズミルの主張もしっかり言って、なるべくこちら側で状況をコントロールできるようにしようとしてるんだ」

「なるほどね。それで、こんなに連れ回してるのか」

納得したようにウンウンと頷くエスサーシャさん。

「じゃあさ、オレに魔素使わせてくれるよな!?」

「ああ、なんなら派手に使ってくれる方が良いかもな。
王宮の上層部にも話を通したいが、今のままじゃあ聞いてくれんだろう。
だが、お前が魔術回路は一級なのに魔素が無さすぎる『もったいない』奴だと言うことは皆が知っているし、そんな奴が有効活用出来そうだとなればイズミルに権力がある程度集まると思うからな」

「権力が集まる、って……
めんどくさいことが多そうだけど大丈夫?」

「確かに面倒事は増えるだろうな。
ただ、イズミルの性質上、今のままでずっといることは不可能に近い。それほどまでに多すぎる魔素が身体から流れ出しているんだ。
今は抑えきれているが、いずれどこかしらにはバレる。それが王宮の中でも戦争好きな過激派だったりした方がもっと面倒なことになるから、今のうちに穏健派に寄っておく方が安全だと思う。
ちなみに付け加えると、今の国王も王太子も穏健派で戦争に消極的だから大丈夫だ」

「なるほどねぇ……」

私には、戦争をする可能性が前提にあることがまず考え難くて、しかも自分のことが無理やり兵器にされそうとか、なかなか実感が湧かないし、対応を考えるなんてまず無理。

「カイル、私のこと一生懸命考えてくれて、ありがとう。それに、ちゃんと私に分かるように説明してくれたことも、嬉しいよ」

思ったことを言葉にして伝えることが大事だし、と思って言うと、カイルはあんまり見ることがないくらいに明るく笑ってくれた。

「イズミルに、そう言って貰えるのが、俺は一番嬉しい」

ぎゅーって抱きついたら、頭をぽんぽんと撫でてくれて、それだけで、もうほんと……

「しあわせだよ」

怖いこともあるけれど、やっぱり私の旦那様最高じゃない?

なんて思ってたら。

「おふたりさん、お邪魔したら悪いと思うけどさ、オレのこと忘れてない?大丈夫?」

めっちゃニヤニヤしたエスサーシャさんの声を聞いて、慌ててカイルから離れた。

「あのっ、えっと!ごめんなさいっ」

「いやいや、いいんだよぉー?
むしろいいモノ見せて貰っちゃったしねー!」

「セラルシオ、うぜぇ」

「あはは、カイルがツィリムみたいなこと言ってる」

「笑うんなら魔素使わせねぇ!」

「悪かったってさ! でも、オレの目の前でイチャイチャする君らも悪くない?」

照れ隠しか、カイルの口調が荒くなるし、それに追撃するエスサーシャさんも面白い。
こうやってワイワイ騒げるのも、めっちゃ楽しいよね!


しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

異世界で婚活したら、とんでもないのが釣れちゃった?!

家具付
恋愛
五年前に、異世界に落っこちてしまった少女スナゴ。受け入れてくれた村にすっかりなじんだ頃、近隣の村の若い人々が集まる婚活に誘われる。一度は行ってみるべきという勧めを受けて行ってみたそこで出会ったのは……? 多種多様な獣人が暮らす異世界でおくる、のんびりほのぼのな求婚ライフ!の、はずだったのに。

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。 (この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??) これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。 所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。 暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。 ※休載中 (4月5日前後から投稿再開予定です)

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

処理中です...