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38.ポーションは勇気のいる色合い

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「ポーション貰ってきました、どうぞ」

エスサーシャさんが私に差し出してくれたものは、薄い紫色の液体が入った瓶。
ファンタジー感満載でテンション上がるけど、飲むとなるとちょっと勇気のいる色合いだなぁ。

「これ、飲んだらどうなるの?」

カイルに聞いてみる。

「液体に魔素を練りこんだものだな。俺が前に使ってた粉あるだろう?結界を張る時に使っていたやつ。
あれとだいたい同じものだ」

「へぇ、魔素が入ってるんだ。じゃあ私でも良くない?」

「えっ?」

「あ、違うかった?ごめん」

「いや、何を考えてるのか分からなくて」

「前に魔導馬車に乗った時に、ツィリムが私の魔素を使ったことがあったでしょ?あれって難しいの?」

「なるほど!」

びっくりするくらい大きな声で同意してくれた。

「普通は魔素を渡すと供給元になる人がめちゃくちゃ疲れるから緊急時以外はやらないんだが、イズミルは平気だったな」

「うん」

「じゃあ俺を媒介にして魔素を渡すぞ。ツィリムの隣に座ってくれるか?」

カイルは、ツィリムの頭の方に座った私の手を持って、もう片方の手をツィリムの額にあてる。
私は何も感じないから分からないけど、カイルは真剣な表情で目を閉じていて、少し汗も浮かんでいる。

よっぽど大変なんだろうな、と思うし汗を拭ってあげたいけど集中の邪魔かもしれないから黙って座っているだけにしとこっと。


「よし、これで大丈夫だろう。馴染むまで少し時間がかかるが、しばらくしたら目を覚ますと思う」

「ポーションはいらなかったですね」

エスサーシャさんが笑っている。

「でも、持ってきて貰えなかったら見てることしか出来なかったと思いますから。ありがとうございました」

「魔術師団ではポーション使わない感じ? ですか?」

カイルとの会話だから気を使っていないようで、取って付けたような敬語にちょっと笑ってしまう。

「エスサーシャさん、楽に話して頂いて大丈夫ですよ。私に気を使って貰ってますよね?」

「あ、気にしなくていい?ありがとー」

切り替え早っ!

「セラルシオが丁寧に話してると俺も違和感凄かったからな。無理はしない方がいいと思うぞ」

「そっか。ごめんごめん!やっぱ慣れないことはしない方がいいね!」

急に軽い感じになってちょっとびっくりしたけど、これがエスサーシャさんの素なんだろうな。

「それで、ポーションの話だったか?
魔術師団ではポーションを使うことはほとんどないな。皆、自分の限界は知っているし魔素切れなんて起こさない。
ツィリムは今回張り切りすぎただけだ」

「私のせい、かな。ツィリム、ごめんね」

意識はないけれどそっと頭を撫でながら謝ると、ツィリムの表情が柔らかくなった気がした。



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