旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん

文字の大きさ
上 下
24 / 56

24.こちらの方がいいでしょう?

しおりを挟む


いつもの私は目覚まし時計で起きているけれど、今日は違った。
ふんわりたお日様のような香りに包まれて、抱き上げられる。

あ、エルの匂い。


「イズミル、起きてください。もう時間ですよ」

まだ上手く動いてない頭が、ようやくエルの顔をきちんと認識してくれた。

「起きましたか? 今日は忙しいですから、早めに起きてくださいね」

ふんわりとした笑顔を向けてくれて、ようやく目が覚めた。

「おはよう。ごめんね、寝坊しちゃった?」

「いえ、僕が勝手に起こしに来ただけで、そんなに遅くなっているわけではないですよ」


言いながら私をベッドに下ろし、着替えを用意してくれる。

あっ、やばい。
のんびりご飯食べてる場合じゃなかったんだ。

「ごめんツィリム、イフレート。全然準備できてなくて」

申し訳なくなってそういうとツィリムはきょとんとした顔をした。
ん?何かおかしなことしたかな?

横で他の作業をしていたエルが助け船を出してくれた。

「イズミル、そういう時は笑顔でありがとうって言えばいいんですよ。
みんなイズミルのために、イズミルが喜んでくれるようにやってるんですから」

なるほど、考え方の違いかな?

「教えてくれてありがとう。ツィリムもイフレートも朝早くからありがとう。今日忙しいと思うけどよろしくね?」

私の感覚ではこれだけ他人に面倒をかけるのは申し訳なくなっちゃう。
でもしてくれてるみんなが求めてるのは、私が動くことじゃなくて、私が謝ることでもなくて、笑顔でありがとうっていうことなんだってこと。

でも確かにその方が嬉しいよね。
ツィリムも喜んでくれたみたいだし。

「ありがとう、いってらっしゃい」




ふたりを送り出してすぐ私の準備をしなきゃいけない。
とは言っても必要なものはほとんど持っていてくれたから、ちょっと可愛いワンピースに着替えて大人しく待ってるだけなんだけどね。

やることはないのかな?
何もないからむしろソワソワして落ち着かないんだけど。
こんな話も今度しないといけないなぁってちょっと思った。

私のためを考えてしてくれてることだけど、私はそれが嫌ってどう伝えたらいいのかわからないけど……

つらつら考え事をしている間にカイルとエルの準備も終わったみたい。
3人で馬車に乗ってカイルの時と同じ神殿に向かう。

エルの隣に座って景色を眺めているのは本当に楽しい。
けれど 最初とても珍しく感じた景色も、今はちょっとずつ慣れていってて、窓に釘付けではなくなってる。






「そういえば、今日はカイルの時と同じ?」

「そうですね、ほぼ同じです。
家族は来ないんですが、カイルの時も話はしていないからほとんど関係ないと思います」

とってもいい機嫌がいいエル。
普段は結構落ち着いてる人だけど、こういう面もあるんだなぁ。


「出会ってからたった2ヶ月ちょっとですけどとっても長く感じました。今日やっと僕はイズミルの夫になれるんですから」

ゆっくりと髪を撫でてくれる手が気持ちいい。
この手は私は守ってくれるって知ってるから。

「それに、イズミルは僕が素の自分でいてもいいって言ってくれました。
イズミルは何の気無しに言ったことだと思いますが、そう言ってくれたことが私にとってどれだけ嬉しかったか」

イズミルのことはもちろん大切にしたいと思うし、魅力的だと思うのも間違いない。

それでも僕は神殿関係者であり、身元責任者でもある僕は神託の乙女だからイズミルを魅力的に捉えているのではないか、と言われて否定しきれないところがあった。


でも僕は僕なりに、イズミルを大切にしてあげればそれでいい。


大切にしたいと思えるものが自分の腕の中にあることがこんなに幸せだってことイズミルと出会ったから知ることができた。

僕1人のものというわけにはいかないけれど……

今日は、今日だけは僕の腕の中にいて。




馬車から降りる時、イズミルは抱き上げられるのを嫌う。
だから先に降りて、手を貸すだけにしてみたら、はにかんだような笑顔で手を乗せてくれた。

「ありがとう」

このやり方でよかったみたいだ。

普通はこんな風にしないけど、イズミルにはこっちの方がいいようだから。

「では行きましょうか」

イズミルの腰に手を回し支えるようにしてエスコートする。

「本来、どうしても抱き上げられない時にすることですけど、イズミルにはこの方がいいかと思って」

少し驚いたような顔をしたから慌てて聞いてみた。

「いつもの方が良かったですか?」

「ううん、こっちの方がいい。けど、こんな風にしてくれたことなかったからちょっとびっくりしちゃっただけ」

「イズミルは、抱き上げられるのはあまり好きではないですよね?居心地悪そうなので」

「うーん、そうかな。ありがとう、気づいてくれて」


朝からちょっと緊張気味だったイズミルも少し気が紛れたのか、いつものように明るく笑ってくれた。


ツィリムとイフレートが準備をしてくれているから、その部屋にイズミルを連れていく。

「すぐ着替えてきますので、お願いします」

2人にイズミルのことを頼んで自分は先に着替えに行く。

隣の部屋に準備しておいたのは、イズミルが僕のために選んでくれた衣装。
他人が見たらちょっと気持ち悪いくらいニヤニヤしてると思う。

いやいや考え事してる場合じゃない。
早く着替えて彼女のところへ戻らないと。




******

新連載始めました。
『俺の天使は盲目でひきこもり』
可愛い女の子と、それを見守る婚約者のお話しです。
よかったら読んでみてください!

しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

転生先は男女比50:1の世界!?

4036(シクミロ)
恋愛
男女比50:1の世界に転生した少女。 「まさか、男女比がおかしな世界とは・・・」 デブで自己中心的な女性が多い世界で、ひとり異質な少女は・・ どうなる!?学園生活!!

女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?

青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。 そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。 そんなユヅキの逆ハーレムのお話。

異世界で婚活したら、とんでもないのが釣れちゃった?!

家具付
恋愛
五年前に、異世界に落っこちてしまった少女スナゴ。受け入れてくれた村にすっかりなじんだ頃、近隣の村の若い人々が集まる婚活に誘われる。一度は行ってみるべきという勧めを受けて行ってみたそこで出会ったのは……? 多種多様な獣人が暮らす異世界でおくる、のんびりほのぼのな求婚ライフ!の、はずだったのに。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた

愛丸 リナ
恋愛
 少女は綺麗過ぎた。  整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。  最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?  でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。  クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……  たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた  それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない ______________________________ ATTENTION 自己満小説満載 一話ずつ、出来上がり次第投稿 急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする 文章が変な時があります 恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定 以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください

二度目の人生は異世界で溺愛されています

ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。 ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。 加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。 おまけに女性が少ない世界のため 夫をたくさん持つことになりー…… 周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...