11 / 52
11.エルフの騎士
しおりを挟むとにかく次々とやってくる人に挨拶していく。
「はじめまして、俺はケインテット隊長の下で副隊長を務めています、ディスティアス・カルセンタです。よろしくお願いします」
おお、イケメンの爽やかな笑顔。
いつもカイルとツィリムが着ているような裾の長いローブを着ていて、オレンジ色の髪と瞳。
この世界の人は基本的に髪と瞳の色は同じみたい。
配色はファンタジーすぎるけどね。
ただでさえ他の部隊長さんやカイルの部下の方など、覚えきれないくらいたくさんの人がいるし、西洋っぽい顔だから正直判別がつかない。
イケメンなんだけどねえ……
向こうも私に顔覚えてもらおうとは思っていないみたいで、自己紹介をさらっと流してくれるけど、なんだか申し訳ないなぁ。
あっ、ちなみにケインテット隊長ってカイルのことね?
違和感すごいけど、お仕事のカイルを見れたみたいでちょっと嬉しい。
私がこんなに色々考えている理由はみんな私を空気のように扱ってて、誰も私に挨拶以外話しかけないから。
この国の文化は女性は座ってニコニコしてるだけっていう、お人形さんみたいな扱いらしい。
副団長さんとカイルが話しているのを聞きながら料理をつまんでいるけど、正直暇だ。
ツィリムが隣にいてくれるけど何か話すわけでもないし……
暇を持て余していると、黄緑の髪と瞳の人がやってきた。
部分的な鎧みたいなのを身につけていて、この国では珍しい、あまり起伏の大きくない顔。
でも切れ長の目と整った顔のイケメンさんで、スケート選手の羽生〇弦みたいな感じ。
でも一番気になるのはそこじゃなくて……
この人耳が尖ってるの!
めっちゃファンタジーだ!
髪や瞳の色には徐々に慣れていた私だけど、新たなファンタジー要素を見つけてテンションが上がった。
「耳がかっこいいですね、妖精さんみたい!」
カイルと話すのを待ってるようだったので声をかけてみた。
黄緑さんはあっけにとられて固まってしまい、私はあごをツィリムに掴まれ無理矢理ツィリムの方を向かされた。
「気軽にかっこいいとか言うな!」
あっ、やらかした……
さっき、挨拶の失敗の時はまだ笑ってくれてたけど、ツィリムの目がマジだ。
貫通されそうなほど強い視線。
「分かった、ごめんなさい。そんなに深い意味があった訳じゃないから」
「イズミにそのつもりがなくても相手は本気にするからダメ!」
「ごめんなさい」
ここでやっと固まっていた黄緑さんが復活してくれた。
「大丈夫ですよ、異世界から来た方で少しこちらのことがよくわからないでしょうから」
ツィリムの視線が少しだけ和らぎ、あごも解放してもらえた。
「申し遅れました、王宮騎士団第2部隊隊長のエスサーシャ・セラルシオです。
俺はエルフという人種で耳が少し長く尖っているのが特徴なんですよ」
エルフと聞いて妖精を想像したけど、この世界では肌の色が違う程度の違いしかないらしい。
「他にもエルフは魔術が得意な人が多いですね。
隣国のシャーラセルラはエルフが主に住む国で、魔術研究に力を入れています。俺もその国の出身ですね」
へぇー、魔術の国かぁ
「私の故郷には魔術がなかったので、シャーラセルラにも行ってみたいです!」
この国に少し慣れたら他の国にも行ってみたいなぁ……
「セラルシオが気に入ったか?」
副団長さんとの話を終えたカイルが話しかけてきた。
「暇だから話し相手になってもらってたの。元の世界にはエルフさんっていなかったから」
「ケインテット隊長、いつもお世話になっています」
エスサーシャさんはカイルと話し始め、カイルも私を会話に入れる気はなさそうなので、また暇になった。
ご飯を食べながら2人の会話を聞く。
話の内容を聞いている限り、王宮騎士団と王宮魔術師団は両方王宮の警護をしているみたい。
別の組織と言うよりは物理担当と魔術担当くらいの違いみたいで一緒に仕事をする機会が多いっぽい。
エルフは魔術が得意な人が多いって言ってたけど、エスサーシャさんは物理担当の騎士。なんでだろ?
「次取ってこようか?」
ちょうどご飯を食べ終わった私にツィリムが声をかけてくれるけど、バイキング形式なので自分で見に行きたい。
そう言うと少し驚かれたけど、ツィリムは私が変なことを言うのに慣れてきてるから、カイルに聞きに行ってくれた。
エスサーシャさんとの会話を中断してカイルが来てくれた。申し訳ない。
「イズミルが、自分で何でもしたいのはわかるから取りに行こうか」
別に1人で行けるけど、カイルとしては最大の譲歩だろうから一緒に行ってもらう。
綺麗に並んだ様々な料理に心が躍る。
色々な種類が食べられるように小さく切り分けられて綺麗に盛り付けてある料理を少しづつ取っていく。
料理はさっきから食べているから、私が取りに来たメインはデザート!
女子は甘いもの好きだからね!
色とりどりのプチケーキを取り分ける。
この国の文化にまだ慣れてない私はぱっと見ただけじゃ何味かがわからないから、カイルが横からひとつひとつ解説してくれる。
イチゴ、ナッツ、はちみつ……
色んなケーキをお皿に盛り付けて、テンション上がる!
この行動で『カイルセル・ケインテットは変わった女の夫になった』と認識されてしまったっぽいけど、異世界から来たのだからと思ってもらえてるみたいだった。
カイルも気にしてないみたいだし、いいかなぁ……
色々やらかしてしまったけど、この世界のことを勉強しなきゃいけないなってことに気づいたし、楽しいパーティーだった。
42
お気に入りに追加
1,154
あなたにおすすめの小説
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です
花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。
けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。
そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。
醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。
多分短い話になると思われます。
サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
二度目の人生は異世界で溺愛されています
ノッポ
恋愛
私はブラック企業で働く彼氏ナシのおひとりさまアラフォー会社員だった。
ある日 信号で轢かれそうな男の子を助けたことがキッカケで異世界に行くことに。
加護とチート有りな上に超絶美少女にまでしてもらったけど……中身は今まで喪女の地味女だったので周りの環境変化にタジタジ。
おまけに女性が少ない世界のため
夫をたくさん持つことになりー……
周りに流されて愛されてつつ たまに前世の知識で少しだけ生活を改善しながら異世界で生きていくお話。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
皆で異世界転移したら、私だけがハブかれてイケメンに囲まれた
愛丸 リナ
恋愛
少女は綺麗過ぎた。
整った顔、透き通るような金髪ロングと薄茶と灰色のオッドアイ……彼女はハーフだった。
最初は「可愛い」「綺麗」って言われてたよ?
でも、それは大きくなるにつれ、言われなくなってきて……いじめの対象になっちゃった。
クラス一斉に異世界へ転移した時、彼女だけは「醜女(しこめ)だから」と国外追放を言い渡されて……
たった一人で途方に暮れていた時、“彼ら”は現れた
それが後々あんな事になるなんて、その時の彼女は何も知らない
______________________________
ATTENTION
自己満小説満載
一話ずつ、出来上がり次第投稿
急亀更新急チーター更新だったり、不定期更新だったりする
文章が変な時があります
恋愛に発展するのはいつになるのかは、まだ未定
以上の事が大丈夫な方のみ、ゆっくりしていってください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる