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第二章 ヴァンパイアの呪い

18 ヴァンパイア『血を吸って死んでやる』

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「僕はヴァンパイア……」

 いいのだろうか?
 本当にいいのだろうか?
 僕のようなモンスターが、生きていても……。
 
 ──いいのだろうか?
 
 今宵も、静かになった村を、僕は徘徊していた。
 昼間は、鉱山で発掘する冒険者たちで賑わっているが、夜は静かだ。
 少し冷たい風が、吹いている。
 
「……ここ、いいな」

 誰も通らない暗い道。
 よし、ここがいい。襲うなら、ここだ。
 商店街から離れた、灯りの届かない暗い道。ここを彼女が通ったら襲おう。
 
 ──ああ、ニナ、僕のニナ……こっちおいで……。
 
 無理だ、もう無理だ!
 ニナの血を吸いたくて、僕は悪いやつになっている。
 頭はとっくに狂い始めていた。
 口のなかの牙は、より大きくなるし、下半身はどうしたって硬くなる。
 ああ、試したい。ニナの血を吸って、死にたい。
 悲しくて切ないが、それが僕の運命だ。

「僕はヴァンパイア……」

 ニナ以外、考えられない。
 彼女の血を吸ったら、自殺しよう。
 だから今宵こそ、彼女を襲おうと思う。
 もうこの世に、未練はない。
 ブサイクな僕は、ヴァンパイアとして生きている価値はない。
 ニキビだらけで肌はボロボロ、髪の毛も天パでチリチリ。
 おまけに声はブサボで、話していてもすぐに噛む。
 こんな気持ち悪い僕なんて、生きていたって、辛いだけ、苦しいだけ。
 
 ──ああ、神様……なぜ僕なんてつくった?
 
 くそー! 死んでやる、死んでやる!
 だが、ただでは死なない。
 どうせ死ぬなら最後に、絶世の美女の血を吸って死んでやる。
 
 ──それが僕の願い……呪われたって、かまわない。
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