異世界探偵はステータスオープンで謎を解く

エピローグ

１０ 了

　荒凉たる大地に立っていた。
　木々もない、草花もない、広がっているのは赤黒い砂と岩の山ばかり。
　上空には閃光が伸びており、その下に漆黒の球体がうごめいている。
　俺は全身を無属性魔法の光りで覆っていた。
　テラからのこのようなアドバイスをもらっていたからだ。
　
『　イズミアキト　フェムトマシンは脳内に侵入する　光りで防護せよ　』

　かなりの魔力を消費するが、問題ない。
　なぜならノヴァクリスタルを舐めたので、身体の魔力は無尽蔵だ。
　ただし、限定的だ。効果がなくなったら魔力は枯渇する。急がないといけない。
　
　俺は太陽の光りをあつめ、『ライトソード』を創って装備した。
　漆黒の球体は、俺のことを嘲笑うかのようにうごめく。
　その形状は摩訶不思議。
　瞬間的に消えたり、出現したり、なんとも言えない奇怪な動きを見せている。

　俺は『ライトソード』を振りかざし、一刀両断する。
　漆黒の球体は、サラサラと砂時計のように崩れ落ちた。
　その瞬間、蒼穹に伸びていた閃光が消えていく。
　清々しく晴れわたり、一陣の風が強く吹いた。
　テラの声が聞こえる。
　
『　ありがとう　イズミアキト　では　地球に帰還します　』

　また光に包まれた俺は、ひとつ大きく深呼吸した。
　胸の内側が熱くなる。白くて深い、空のなかに溶けていく。
　異世界の思い出が、笑顔が、みんなの笑い声が消えていく。
　それでも、俺に不安はない。
　大切な仲間たちが戻る場所、地球。

「また会おうな」

　とつぶやき、俺はあの夏に帰った。









「んん……」

　ザラついた舌で顔を舐められている感触が伝わってくる。
　俺は温かな力に身をまかせた。

☆ 


　彼女はきっとこの星にいる、につづく。