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エピローグ
2 おまえはクビだ
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ポカラ少年はすごく喋る。勇者黒咲とは大違いだった。
どれ? ポカラ少年のステータスオープンしてみるか。俺はパチンと指を弾いた。
『 ポカラ 性別:男 』
『 レベル:51 年齢:14 』
『 異世界年齢:12 』
『 ちから: 97 』
『 すばやさ:152 』
『 みのまもり:106 』
『 かしこさ:160 』
『 うんのよさ:255 』
『 さいだいHP:370 』
『 さいだいMP:999 』
『 こうげき力:105 』
『 しゅび力:180 』
『 EX: 2176000 』
『 G: 14000 』
『 スキル:ネクロマンサ 』
『 呪い: 』
『 魔法:土・火 』↓
魔法の部分はあまりにも膨大な情報量だったので省略した。
別に、このポカラ少年と戦闘するわけではないし、興味もない。
だが、気になるところと言えば、年齢と異世界年齢が近いことだな。
ポカラ少年がどうやって死亡したのか知らないが、若くして死んだらしい。比較して申し訳ないが、勇者黒咲より異世界で本気出す的なハングリー精神はないのかもしれない。
さらに、ネクロマンサというスキル。
これがとにかくダークサイドな雰囲気が漂っている。人の命をなんだと思っているのだろうか、この少年は。
「それでは、ステラダンジョンを案内しますね。ちなみに、あなたたちが死んでも僕が蘇生してあげますから安心してください」
その言葉に反応したあかねちゃんは、冷徹な視線をポカラに向けると口を開いた。
「断る。私たちを蘇生する権利はあなたにはない」
「え?」
まさかそんなことを言われるとは思わなかったのだろう。ポカラは下を向いて唇を噛んだ。
あかねちゃんの論破はさらにつづく。
「逆にあなたが死んだらどうしてほしい? 蘇生してほしいか?」
「ぼ……僕は死なない、そんなヘマはしない」
「そんなことは訊いていない、もし、あなたが死んだら蘇生してほしいのかと訊いているんだ」
「僕は……僕は……死んだらそっとしておいてほしい」
「なぜ?」
「だって、死んだのに生き返るなんて……あ!」
どうやら気づいたようだ。
自分がしていたことが、どれほど残酷な行為であるかということに。
しかも、この少年は国家の上層部によって育てられ、その手の内で踊らされているに過ぎない。この少年はいずれ最強の何になるつもりなのだろうか。いずれにしても、そんなものは気が狂っている。悪魔を作り出しているようなものだ。国家の上層部の真相を暴くつもりは、いまの俺にはない。そんな時間もないし。だが、ひとつだけわかったことは……。
魔王を討伐してほしくない組織がありそうだ。
おそらく、ポカラはそのような魔王討伐反対派から送られてきたスパイだという可能性がある。
アーメイはこのことを疑っているだろうか?
そもそも反対派がいる事実を知っているのだろうか?
わからないが。ここでポカラを切ったほうがいい。このスキルは怪しすぎる。
俺はここへきて、魔王討伐をするべきかどうか悩んでいたが、やっと決心がついた。
「よし、みんなでダンジョンにいこう」
リンちゃんとあかねちゃんは俺を見つめると、ニコッと笑ってうなずいた。
すぐにアーメイが眉根を寄せて尋ねてきた。
「でも、ポカラの案内は必要よ……いくらわたしが超天才でもステラダンジョンの構造までは未知だから」
「心配するな、俺にまかせろ。ダンジョンの構造など、サーチスキルと無属性魔法でなんとでもなる。ああ、少年はもう帰っていいよ」
俺はポカラに向かって一瞥すると、そう言ってやった。子どもは静かに寝てろって感じだな。
ポカラは顔を真っ赤にして叫んだ。
「でも! 僕しかレイクドラゴンへの道を知らないんだぞ! 罠にハマったら全滅するよ!」
俺はふっと鼻で笑った。
「大丈夫だ。君のたどった足跡を『サーチ』するから」
みんなの目線が俺に集まっていた。
え? そんなことできるの? と言わんばかりの顔を並べている。
俺の『サーチ』というスキル探偵業務に特化している。
盤面でアイコンを表示できるのだから、指定した人物の足跡もデータとして残せるだろう。
俺はリンちゃんに、「ちょっと歩いて」と促す。
「え? こうですか?」
「ああ、もういいよ、ありがとう」
俺は指を弾いてウィンドウを出す。
その上部にはリンと表示されてあった。
さらに、地面に向けてウィンドウを透かして見ると、足跡がくっきりと表示されていた。
「これなら誰がどこを通ったのか一目瞭然だな」
あかねちゃんが感心してくれるので、俺は得意になって大仰にうなずく。
「だろ? 密かにスキルを磨いていたのさ」
「やるじゃないか……ちょっとだけカッコいいぞ」
「ふふふ」
俺は目を閉じて腕を組んで、照れるのを必死で抑える。
すると、アーメイが微笑を浮かべながらポカラに向かって手を振った。
「じゃあね~ポカラはお留守番おねがいね」
ポカラの身体は、小刻みにブルブルと震えていた。
口はへの字に曲がり、わなわなと拳を作って握りしめている。ぶつぶつと何かを言っているようだ。耳を傾けてみると、こんな言葉を漏らしていた。
「僕はいずれ最強になるんだ……最強になって王都でスローライフするんだ……」
こわ……。
このポカラという少年は、精神的に異常なところがありそうだ。関わり合いたくタイプに確定。
俺はリンちゃんに目配せして、風魔法で飛ばしてと促した。
あかねちゃんをお姫様抱っこしようとしたが、きっとアーメイが嫉妬するからやめた。
それを察したリンちゃんは「おっけーです」と言って笑う。
そして、吹く風に身をまかせる俺たち。
なんだかな……。ポカラという存在がめちゃくちゃ怪しく思えてきた。
気になるので、アーメイに話しかけた。
「裏でうごめく魔王討伐反対派の勢力があるだろ?」
「ああ、探偵さんも気づいたわね、わたしもいま探っているところよ」
「もしかして、ポカラの監視役ってわざと受け入れているのか?」
「さすが探偵さんね。そうよ、ポカラは『ネクロマンサ』というスキルで死んだ者をあやつり人間にすることができるからね」
「つまり、アーメイが死んだら……あ、そういうことか」
「嫌な感じよね」
「まったくだ」
相変わらず、ぶつぶつと根暗なことを言うポカラを眼下に、俺たちは蒼穹へと舞い上がっていった。
どれ? ポカラ少年のステータスオープンしてみるか。俺はパチンと指を弾いた。
『 ポカラ 性別:男 』
『 レベル:51 年齢:14 』
『 異世界年齢:12 』
『 ちから: 97 』
『 すばやさ:152 』
『 みのまもり:106 』
『 かしこさ:160 』
『 うんのよさ:255 』
『 さいだいHP:370 』
『 さいだいMP:999 』
『 こうげき力:105 』
『 しゅび力:180 』
『 EX: 2176000 』
『 G: 14000 』
『 スキル:ネクロマンサ 』
『 呪い: 』
『 魔法:土・火 』↓
魔法の部分はあまりにも膨大な情報量だったので省略した。
別に、このポカラ少年と戦闘するわけではないし、興味もない。
だが、気になるところと言えば、年齢と異世界年齢が近いことだな。
ポカラ少年がどうやって死亡したのか知らないが、若くして死んだらしい。比較して申し訳ないが、勇者黒咲より異世界で本気出す的なハングリー精神はないのかもしれない。
さらに、ネクロマンサというスキル。
これがとにかくダークサイドな雰囲気が漂っている。人の命をなんだと思っているのだろうか、この少年は。
「それでは、ステラダンジョンを案内しますね。ちなみに、あなたたちが死んでも僕が蘇生してあげますから安心してください」
その言葉に反応したあかねちゃんは、冷徹な視線をポカラに向けると口を開いた。
「断る。私たちを蘇生する権利はあなたにはない」
「え?」
まさかそんなことを言われるとは思わなかったのだろう。ポカラは下を向いて唇を噛んだ。
あかねちゃんの論破はさらにつづく。
「逆にあなたが死んだらどうしてほしい? 蘇生してほしいか?」
「ぼ……僕は死なない、そんなヘマはしない」
「そんなことは訊いていない、もし、あなたが死んだら蘇生してほしいのかと訊いているんだ」
「僕は……僕は……死んだらそっとしておいてほしい」
「なぜ?」
「だって、死んだのに生き返るなんて……あ!」
どうやら気づいたようだ。
自分がしていたことが、どれほど残酷な行為であるかということに。
しかも、この少年は国家の上層部によって育てられ、その手の内で踊らされているに過ぎない。この少年はいずれ最強の何になるつもりなのだろうか。いずれにしても、そんなものは気が狂っている。悪魔を作り出しているようなものだ。国家の上層部の真相を暴くつもりは、いまの俺にはない。そんな時間もないし。だが、ひとつだけわかったことは……。
魔王を討伐してほしくない組織がありそうだ。
おそらく、ポカラはそのような魔王討伐反対派から送られてきたスパイだという可能性がある。
アーメイはこのことを疑っているだろうか?
そもそも反対派がいる事実を知っているのだろうか?
わからないが。ここでポカラを切ったほうがいい。このスキルは怪しすぎる。
俺はここへきて、魔王討伐をするべきかどうか悩んでいたが、やっと決心がついた。
「よし、みんなでダンジョンにいこう」
リンちゃんとあかねちゃんは俺を見つめると、ニコッと笑ってうなずいた。
すぐにアーメイが眉根を寄せて尋ねてきた。
「でも、ポカラの案内は必要よ……いくらわたしが超天才でもステラダンジョンの構造までは未知だから」
「心配するな、俺にまかせろ。ダンジョンの構造など、サーチスキルと無属性魔法でなんとでもなる。ああ、少年はもう帰っていいよ」
俺はポカラに向かって一瞥すると、そう言ってやった。子どもは静かに寝てろって感じだな。
ポカラは顔を真っ赤にして叫んだ。
「でも! 僕しかレイクドラゴンへの道を知らないんだぞ! 罠にハマったら全滅するよ!」
俺はふっと鼻で笑った。
「大丈夫だ。君のたどった足跡を『サーチ』するから」
みんなの目線が俺に集まっていた。
え? そんなことできるの? と言わんばかりの顔を並べている。
俺の『サーチ』というスキル探偵業務に特化している。
盤面でアイコンを表示できるのだから、指定した人物の足跡もデータとして残せるだろう。
俺はリンちゃんに、「ちょっと歩いて」と促す。
「え? こうですか?」
「ああ、もういいよ、ありがとう」
俺は指を弾いてウィンドウを出す。
その上部にはリンと表示されてあった。
さらに、地面に向けてウィンドウを透かして見ると、足跡がくっきりと表示されていた。
「これなら誰がどこを通ったのか一目瞭然だな」
あかねちゃんが感心してくれるので、俺は得意になって大仰にうなずく。
「だろ? 密かにスキルを磨いていたのさ」
「やるじゃないか……ちょっとだけカッコいいぞ」
「ふふふ」
俺は目を閉じて腕を組んで、照れるのを必死で抑える。
すると、アーメイが微笑を浮かべながらポカラに向かって手を振った。
「じゃあね~ポカラはお留守番おねがいね」
ポカラの身体は、小刻みにブルブルと震えていた。
口はへの字に曲がり、わなわなと拳を作って握りしめている。ぶつぶつと何かを言っているようだ。耳を傾けてみると、こんな言葉を漏らしていた。
「僕はいずれ最強になるんだ……最強になって王都でスローライフするんだ……」
こわ……。
このポカラという少年は、精神的に異常なところがありそうだ。関わり合いたくタイプに確定。
俺はリンちゃんに目配せして、風魔法で飛ばしてと促した。
あかねちゃんをお姫様抱っこしようとしたが、きっとアーメイが嫉妬するからやめた。
それを察したリンちゃんは「おっけーです」と言って笑う。
そして、吹く風に身をまかせる俺たち。
なんだかな……。ポカラという存在がめちゃくちゃ怪しく思えてきた。
気になるので、アーメイに話しかけた。
「裏でうごめく魔王討伐反対派の勢力があるだろ?」
「ああ、探偵さんも気づいたわね、わたしもいま探っているところよ」
「もしかして、ポカラの監視役ってわざと受け入れているのか?」
「さすが探偵さんね。そうよ、ポカラは『ネクロマンサ』というスキルで死んだ者をあやつり人間にすることができるからね」
「つまり、アーメイが死んだら……あ、そういうことか」
「嫌な感じよね」
「まったくだ」
相変わらず、ぶつぶつと根暗なことを言うポカラを眼下に、俺たちは蒼穹へと舞い上がっていった。
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