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第二章 異世界の王都 転移した彼女 謎の白骨遺体
37 犯人の捜査は意外性のある人物から
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『 アリアナ、カイト、セルフィーヌ 』
「さて、どの人物から捜査する? リンちゃん」
手帳を開いていた俺は、目をこすっているリンちゃんに問いかけた。
「御主人様ぁ、その捜査……明日じゃダメですかぁ?」
「ん? どうした?」
「あたし眠くて、眠くて……ふぁ~あ」
大きなあくびをするリンちゃんは、猫である。
省みると、今日はずっと外を飛び回って捜査していたから、日課である昼寝が満足にできなかった。それはとてもきついことだろう。身体的にも精神的にも。猫ちゃんはとてもデリケートな生き物なのだ。自由気ままに生きるのが、猫のポリシーでもある。
「じゃあ、こうしよう。今日は一人だけ捜査して終わりにしない?」
「ん~ほわぁぁぁ、一人だけですよぉぉぉ、ねむぃ」
「お願い、リンちゃん」
「しかたないですねぇ、御主人さまぁ~ふぁ~あ」
大きなあくびをするリンちゃん。手で口を隠す仕草が、か、かわいい……。
「じゃあ、誰にします?」
リンちゃんの尋ねかたが、あまりにも適当だったから、俺もつい当てずっぽうになった。
「おそらく犯人は変体スキルもちだから、ここは思い切って……」
「誰にしますぅ?」
「男を調査しよう」
「ふぇ? いいんですか? さっきシュラクさんが、マントの購入はベルという美少女だし、勇者様だって美少女っぽいじゃないですか」
「でも、犯人はドアの隙間から抜け出せるほどの変体スキルを持っていると推測される」
「たしかに……変体かもしれせんね」
「ああ、大変なことに変体なんだ」
「む……もうあたし眠いんで帰っていいですか? あとは御主人様だけでよろしく」
「ああ、ごめん、真面目にやるから」
「本当ですよぉ、ちょっと眠気がさめました」
「そっか、わはは」
「うふふ」
弾ける笑顔を交わしながら、俺たちは夜空を舞った。
容疑者の一人である男『カイト』という人物に捜査を絞り込み、とりあえず家に向かうことにする。住所はギルド街からゲートに抜ける通りを示していた。行ってみると、三階建ての建物があった。レンガ材が組まれた建物で、見るからに中世っぽい。地球から飛んできた冒険者なら、一度は住んでみたいなあ、と思わせる雰囲気を醸している。
「いいとこに住んでるな」
「ですね~あたしもこんな家の屋根で日向ぼっこするのが夢ですぅ」
「へ~、やっぱり猫なんだね」
「そりゃあ、寝て、食べて、好きな雄猫とイチャイチャして過ごしたいですうよぉ」
「え? 雄猫? リンちゃんってそういう彼氏とかいるの?」
「いえ、いませんよ。いないから脱走したんじゃないですかぁ、言わせないでください」
「ああ、なるほどね……なんか納得した」
「でも、おかげで御主人様と、ぎゅっとできて幸せです」
この笑顔に俺はいつもやられてしまう。
猫とは言え、今は普通の女の子のリンちゃんだ。その笑顔と言ったら、守ってやりたくなることこの上ない。感謝したいのは、こっちも同じことだ。その気持ちを言葉で表すと照れくさいので、俺はリンちゃんの肩を抱きながら言った。
「よし、いくぞ」
「はい」
「さて、どの人物から捜査する? リンちゃん」
手帳を開いていた俺は、目をこすっているリンちゃんに問いかけた。
「御主人様ぁ、その捜査……明日じゃダメですかぁ?」
「ん? どうした?」
「あたし眠くて、眠くて……ふぁ~あ」
大きなあくびをするリンちゃんは、猫である。
省みると、今日はずっと外を飛び回って捜査していたから、日課である昼寝が満足にできなかった。それはとてもきついことだろう。身体的にも精神的にも。猫ちゃんはとてもデリケートな生き物なのだ。自由気ままに生きるのが、猫のポリシーでもある。
「じゃあ、こうしよう。今日は一人だけ捜査して終わりにしない?」
「ん~ほわぁぁぁ、一人だけですよぉぉぉ、ねむぃ」
「お願い、リンちゃん」
「しかたないですねぇ、御主人さまぁ~ふぁ~あ」
大きなあくびをするリンちゃん。手で口を隠す仕草が、か、かわいい……。
「じゃあ、誰にします?」
リンちゃんの尋ねかたが、あまりにも適当だったから、俺もつい当てずっぽうになった。
「おそらく犯人は変体スキルもちだから、ここは思い切って……」
「誰にしますぅ?」
「男を調査しよう」
「ふぇ? いいんですか? さっきシュラクさんが、マントの購入はベルという美少女だし、勇者様だって美少女っぽいじゃないですか」
「でも、犯人はドアの隙間から抜け出せるほどの変体スキルを持っていると推測される」
「たしかに……変体かもしれせんね」
「ああ、大変なことに変体なんだ」
「む……もうあたし眠いんで帰っていいですか? あとは御主人様だけでよろしく」
「ああ、ごめん、真面目にやるから」
「本当ですよぉ、ちょっと眠気がさめました」
「そっか、わはは」
「うふふ」
弾ける笑顔を交わしながら、俺たちは夜空を舞った。
容疑者の一人である男『カイト』という人物に捜査を絞り込み、とりあえず家に向かうことにする。住所はギルド街からゲートに抜ける通りを示していた。行ってみると、三階建ての建物があった。レンガ材が組まれた建物で、見るからに中世っぽい。地球から飛んできた冒険者なら、一度は住んでみたいなあ、と思わせる雰囲気を醸している。
「いいとこに住んでるな」
「ですね~あたしもこんな家の屋根で日向ぼっこするのが夢ですぅ」
「へ~、やっぱり猫なんだね」
「そりゃあ、寝て、食べて、好きな雄猫とイチャイチャして過ごしたいですうよぉ」
「え? 雄猫? リンちゃんってそういう彼氏とかいるの?」
「いえ、いませんよ。いないから脱走したんじゃないですかぁ、言わせないでください」
「ああ、なるほどね……なんか納得した」
「でも、おかげで御主人様と、ぎゅっとできて幸せです」
この笑顔に俺はいつもやられてしまう。
猫とは言え、今は普通の女の子のリンちゃんだ。その笑顔と言ったら、守ってやりたくなることこの上ない。感謝したいのは、こっちも同じことだ。その気持ちを言葉で表すと照れくさいので、俺はリンちゃんの肩を抱きながら言った。
「よし、いくぞ」
「はい」
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