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第二章 異世界の王都 転移した彼女 謎の白骨遺体
6 犬飼との和解
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「何をやってるんでしょうか犬男は?」
「うむ……見たかぎり……子どもたちと遊んでるようだが」
ここは『ドリーム魔法学園』の校門前。
俺とリンちゃんは壮麗な校舎や、広大なグランドの光景を見て唖然としていた。
超名門校とはこのことを言うのだな。どこを見てもキラキラと輝いていた。
おや? ふと、グランドのコートを見ると、子どもたちの姿があった。サッカーをやっているようだ。
しばらく様子を窺っていたが、その中に大人が一人混じっていた。
完全に遊んでいるようだが、よく見ると、その大人こそが、犬男だった。
その一方で、グランドの隅に青胄の兜がキラキラと輝いていた。
よく見てみると、鋼の鎧を装備した騎士がいた。数えてみると三人いて、それぞれ膝を曲げてしゃがみこんでいる。
おや? 何かを探しているようだ。もっと近づいてみないと俺にはよく見えない。
「なぁ、犬男はなんで遊んでいるんだ? それと向こうにいる騎士たちは何かしているようだが……」
「え、っと……騎士たちは何か白い物体を布袋に集めていますね。そこらに白い物体が落ちているようです」
「白い物体か……なんだろうか?」
「骨……のようですね」
「骨? それはまさか……例の殺人事件との関連性がありそうだな」
「はい……それにしても、犬男の行動は理解不能です」
「だな……いったい何が起きているんだ?」
「もう少し近づいて見張ってみましょう」
俺たちはゆっくりとグランドの端に沿って歩いた。
やがて、キンコーン、カンコーン、と鐘が鳴った。
音のするほうに振り向いて顔を上げると、校舎の鐘が鳴っていた。
そのとたん、鐘の音に反応した子どもたちが一斉に校舎の中に戻っていく。
グランドに残された犬男は、一人寂しそうにボールを蹴った。
ボールの軌道は弧を描き、ゴールネットを揺らした。素晴らしいドライブシュートだった。
「レアルだんちょー! こっちきて回収を手伝ってくださいよー!」
「おー!」
騎士たちの声が上がった。
犬男は骨の匂いをクンクン嗅いでは、地べたをはいつくばっている。大の大人にしては滑稽な姿だった。
俺はマントのフードを外し、少し離れた位置にいる青胄の騎士に近づいて話しかけてみた。
「あの、すいません、ちょっといいですか?」
「なんでしょうか?」
「あの犬みたいな人って何をしるんですか?」
「え? レアル団長のことですか? ああ、あの人は嗅覚が鋭いので被害者の骨をひろってるんですよ……大変な作業です」
「へ~、こんなところに骨があるなんて、物騒ですね」
「ええ、犯人はいったい何を考えているんだか……さっきも子どもたちが面白がって近づいてくるから邪魔でしょうがなく、困っていたらレアル団長が子どもたちと遊んでくれたんです。いい歳してるのにレアル団長は子どもみたいな人なんですよね、あはは」
指先で鼻をかいて笑う青胄の騎士の様子から見て、レアル団長と呼ばれた犬男は、部下からの信頼が厚いようだ。
しかし、そんな犬男がどうしてセガールの依頼を受けて田中さんの誘拐なんて悪事を働いたのだろうか?
不思議だな? 何か弱みでも握られているのだろうか?
チラッと犬男を見てみると、相変わらず四つん這いでクンクン地面の匂いを嗅いでいた。
青胄の騎士と会話していると、いったん離れていたリンちゃんが近寄ってきた。
手には白い物体を持っている。骨だ。ダメだよひろっては、と思った瞬間、リンちゃんは口を開いた。
「御主人様ぁ、この骨を『サーチ』してください」
「え? そんな勝手なことしちゃダメだよ」
俺は首を横に振った。騎士たちの捜査を邪魔してはいけないと思ったからだ。
しかしリンちゃんは、俺の瞳をジッと見つめて誘惑してくる。
やはり美少女に睨まれるとゾクゾクするから身体によくない。そんなに見ないでくれよ、リンちゃん。
「この骨からどんなステータスがオープンされるか見てみたくないですか?」
「あのねリンちゃん、探偵の仕事は依頼があってからするのがルールなんだ」
「でも、殺人鬼が捕まらないと、ジョゼくん家族たちが困るのでは?」
「それはそうだが、依頼がないことには動けないよ」
「ブゥゥゥ、御主人様のバカ」
リンちゃんはほっぺたを膨らませ、不貞腐れてプイッと顔をそむけた。
その仕草は可愛いけど、手に持っている頭蓋骨はまったく可愛くない。
強烈な死の臭いを放っており、可愛いさが相殺されてしまった。
むしろ、遺骨を発見するリンちゃんの嗅覚に恐怖心さえ覚えた。
すると俺たちの騒ぎに気づいた青冑の騎士が、リンちゃんに話かけてきた。
「あっ、それ頭だね! 見つけてくれたの?」
「はい。あそこの草場の影に落ちてましたよ」
「よかった~その遺骨で全部だよ、ありがとう」
「どういたしまして」
リンちゃんはボソッと言って、騎士の礼を丁寧に打ち消した。
騎士の声はずいぶんと明るかった。遺骨に慣れているようにも思えた。
いったいこれまでに何人の被害者が出ているのだろうか。想像しただけで、ゾッとした。
すると一斉に他の騎士たちがこっちを見た、当然、四つん這いになっている犬男もだ。
俺と犬男が目があった瞬間だった。遠吠えにも似たような声が響いた。
「お……おぬしーーー!」
俺は軽く右手を上げて挨拶した。爽やかな笑顔のおまけつき。
犬男は激しく体を振って埃を振り払うと立ち上がった。その仕草は完全に犬のようだった。ちょっとだけ可愛かった。
「よっ、犬飼さん、久しぶり」
「あ、久しぶり……っておい! なんでわしの本名を知っとる!?」
「俺は探偵だぞ……侮ってもらっては困る」
「いやや、わしが日本男児ということは限られた人にしか……」
犬男は言いかけて口を抑えた。
なるほど、騎士たちには自分の正体を隠しているようだ。
もしかしたら、セガールに弱みを握られている部分はこのことなのかもしれない。
「ふ~ん、そうなのか……裏騎士の犬飼さんは、普段は警察官みたいな仕事をしているんだな。関心するぜ」
「おぬし……ちょっとこっちこい」
首を傾げる騎士たちを横目に、腕を掴まれた俺は犬男にグランドの真ん中に連れて来られた。
ふとリンちゃんが気になって見てみると、騎士たちに話かけられていた。
適当に笑って足らっているようだが、心なしか、満更でもなく嬉しそうだ。
リンちゃんって他の男と話すときって、そんな感じなんだね。
「おい! おぬし、こっちを向けっ」
「なんだ? こんなところまで連れてきて」
「どうやって王都に入ってきた? いま厳戒態勢で不審な人物は一切ゲートからは入れないはずだ」
俺は王都を囲む高い壁を指差してから、その指を跳ねあげた。
犬男は口をあんぐりと開けた。
「まさか……おぬし、飛んだのか?」
「ああ」
「まったく……来るだろうとは思っていたが……まさか現場に来るとはな」
「現場?」
「ああ、ここは被害者の遺骨があった場所さ」
俺は頭をかくと、一呼吸おいてから話かけた。
「……連続殺人事件が発生しているようだな」
「ああ、いま王都は大混乱さ、王様は犯人の逃走経路を塞ぐとか言ってゲートで検問したり、漁港の水門を閉じたりと悪政をしやがる。まったく、王様の頭の中はレベル50で止まってるんだよ。おぬしみたいな、常識を覆す飛んでもないやつがいるってことを知らないんだからな」
「……なんか、色々ストレス溜まってるな」
「ああ、すまない、いきなり愚痴ってしまって……とにかくわしは普段、騎士として働いてるから、裏騎士家業のことは他言無用で頼む」
「秘密ってことか……なんで裏騎士をしてるか教えてくれたら黙っておいてやる」
犬男は肩をすくめると、後頭部をかいた。そして照れ臭そうに言った。
「バイクだ……」
「え? バイク?」
「裏騎士の仕事をするならバイクを使わせてもらえるんだよ」
「はぁ? バイクは犬飼のじゃないのか?」
「ああ、セガール殿のものだ。いや、正確にいうと、セガール殿が錬金術師の姉ちゃんに製作させたバイクと言ったほうがいいな」
「……じゃあ、犬飼はそのバイクに乗るためにスカーレットを誘拐したっていうのか?」
「ああ、簡単に言うとそうだな。あのときは誘拐しようとは思ってなかった。セガールの奴隷なんて名誉なことだからな。だが抵抗したんでつい緊縛してしまった。こっちも仕事だからな……セガール殿からの依頼をしくじるわけにもいかんし……あのときはすまなかった」
犬男は深々と頭を下げた。本当に悪いと思っているのだろうか。
俺は拳を作ってその中に『ライトボール』を初期発動するところまで持っていき、さらにパワーもマックスまで溜めた。
「おい、許されるわけないだろう! 奴隷なんて酷い目にあっているんだろうがっ!」
バキバキに火花が舞い散る俺の拳を見た犬飼は、なんとも言えない恐怖に怯え、震えるような言葉を吐いた。
「いやや、おぬしは勘違いしとる。あの少女は嫌がっておったが、ベルセリウス殿の奴隷はVIP待遇なのだぞ、一般的には羨ましいことなのだが……」
「なんだそれは? 信じられん」
「まだ会いに行ってないのか?」
「ああ」
「だったらすぐに会いにいけ……な、だからその手を光らせるのはやめよう、な」
「……わかった」
俺の拳から光りの輝きが、じわじわと消えていった。
それを見た犬飼は、ホッと胸をなで下ろすと、また頭を下げた。
「昨日の敵は今日の友、わしはもう何の依頼もセガール殿から受けておらんので安心せい」
「やれやれ……人の心や運命なんてあやふやなものだな」
「うむ……見たかぎり……子どもたちと遊んでるようだが」
ここは『ドリーム魔法学園』の校門前。
俺とリンちゃんは壮麗な校舎や、広大なグランドの光景を見て唖然としていた。
超名門校とはこのことを言うのだな。どこを見てもキラキラと輝いていた。
おや? ふと、グランドのコートを見ると、子どもたちの姿があった。サッカーをやっているようだ。
しばらく様子を窺っていたが、その中に大人が一人混じっていた。
完全に遊んでいるようだが、よく見ると、その大人こそが、犬男だった。
その一方で、グランドの隅に青胄の兜がキラキラと輝いていた。
よく見てみると、鋼の鎧を装備した騎士がいた。数えてみると三人いて、それぞれ膝を曲げてしゃがみこんでいる。
おや? 何かを探しているようだ。もっと近づいてみないと俺にはよく見えない。
「なぁ、犬男はなんで遊んでいるんだ? それと向こうにいる騎士たちは何かしているようだが……」
「え、っと……騎士たちは何か白い物体を布袋に集めていますね。そこらに白い物体が落ちているようです」
「白い物体か……なんだろうか?」
「骨……のようですね」
「骨? それはまさか……例の殺人事件との関連性がありそうだな」
「はい……それにしても、犬男の行動は理解不能です」
「だな……いったい何が起きているんだ?」
「もう少し近づいて見張ってみましょう」
俺たちはゆっくりとグランドの端に沿って歩いた。
やがて、キンコーン、カンコーン、と鐘が鳴った。
音のするほうに振り向いて顔を上げると、校舎の鐘が鳴っていた。
そのとたん、鐘の音に反応した子どもたちが一斉に校舎の中に戻っていく。
グランドに残された犬男は、一人寂しそうにボールを蹴った。
ボールの軌道は弧を描き、ゴールネットを揺らした。素晴らしいドライブシュートだった。
「レアルだんちょー! こっちきて回収を手伝ってくださいよー!」
「おー!」
騎士たちの声が上がった。
犬男は骨の匂いをクンクン嗅いでは、地べたをはいつくばっている。大の大人にしては滑稽な姿だった。
俺はマントのフードを外し、少し離れた位置にいる青胄の騎士に近づいて話しかけてみた。
「あの、すいません、ちょっといいですか?」
「なんでしょうか?」
「あの犬みたいな人って何をしるんですか?」
「え? レアル団長のことですか? ああ、あの人は嗅覚が鋭いので被害者の骨をひろってるんですよ……大変な作業です」
「へ~、こんなところに骨があるなんて、物騒ですね」
「ええ、犯人はいったい何を考えているんだか……さっきも子どもたちが面白がって近づいてくるから邪魔でしょうがなく、困っていたらレアル団長が子どもたちと遊んでくれたんです。いい歳してるのにレアル団長は子どもみたいな人なんですよね、あはは」
指先で鼻をかいて笑う青胄の騎士の様子から見て、レアル団長と呼ばれた犬男は、部下からの信頼が厚いようだ。
しかし、そんな犬男がどうしてセガールの依頼を受けて田中さんの誘拐なんて悪事を働いたのだろうか?
不思議だな? 何か弱みでも握られているのだろうか?
チラッと犬男を見てみると、相変わらず四つん這いでクンクン地面の匂いを嗅いでいた。
青胄の騎士と会話していると、いったん離れていたリンちゃんが近寄ってきた。
手には白い物体を持っている。骨だ。ダメだよひろっては、と思った瞬間、リンちゃんは口を開いた。
「御主人様ぁ、この骨を『サーチ』してください」
「え? そんな勝手なことしちゃダメだよ」
俺は首を横に振った。騎士たちの捜査を邪魔してはいけないと思ったからだ。
しかしリンちゃんは、俺の瞳をジッと見つめて誘惑してくる。
やはり美少女に睨まれるとゾクゾクするから身体によくない。そんなに見ないでくれよ、リンちゃん。
「この骨からどんなステータスがオープンされるか見てみたくないですか?」
「あのねリンちゃん、探偵の仕事は依頼があってからするのがルールなんだ」
「でも、殺人鬼が捕まらないと、ジョゼくん家族たちが困るのでは?」
「それはそうだが、依頼がないことには動けないよ」
「ブゥゥゥ、御主人様のバカ」
リンちゃんはほっぺたを膨らませ、不貞腐れてプイッと顔をそむけた。
その仕草は可愛いけど、手に持っている頭蓋骨はまったく可愛くない。
強烈な死の臭いを放っており、可愛いさが相殺されてしまった。
むしろ、遺骨を発見するリンちゃんの嗅覚に恐怖心さえ覚えた。
すると俺たちの騒ぎに気づいた青冑の騎士が、リンちゃんに話かけてきた。
「あっ、それ頭だね! 見つけてくれたの?」
「はい。あそこの草場の影に落ちてましたよ」
「よかった~その遺骨で全部だよ、ありがとう」
「どういたしまして」
リンちゃんはボソッと言って、騎士の礼を丁寧に打ち消した。
騎士の声はずいぶんと明るかった。遺骨に慣れているようにも思えた。
いったいこれまでに何人の被害者が出ているのだろうか。想像しただけで、ゾッとした。
すると一斉に他の騎士たちがこっちを見た、当然、四つん這いになっている犬男もだ。
俺と犬男が目があった瞬間だった。遠吠えにも似たような声が響いた。
「お……おぬしーーー!」
俺は軽く右手を上げて挨拶した。爽やかな笑顔のおまけつき。
犬男は激しく体を振って埃を振り払うと立ち上がった。その仕草は完全に犬のようだった。ちょっとだけ可愛かった。
「よっ、犬飼さん、久しぶり」
「あ、久しぶり……っておい! なんでわしの本名を知っとる!?」
「俺は探偵だぞ……侮ってもらっては困る」
「いやや、わしが日本男児ということは限られた人にしか……」
犬男は言いかけて口を抑えた。
なるほど、騎士たちには自分の正体を隠しているようだ。
もしかしたら、セガールに弱みを握られている部分はこのことなのかもしれない。
「ふ~ん、そうなのか……裏騎士の犬飼さんは、普段は警察官みたいな仕事をしているんだな。関心するぜ」
「おぬし……ちょっとこっちこい」
首を傾げる騎士たちを横目に、腕を掴まれた俺は犬男にグランドの真ん中に連れて来られた。
ふとリンちゃんが気になって見てみると、騎士たちに話かけられていた。
適当に笑って足らっているようだが、心なしか、満更でもなく嬉しそうだ。
リンちゃんって他の男と話すときって、そんな感じなんだね。
「おい! おぬし、こっちを向けっ」
「なんだ? こんなところまで連れてきて」
「どうやって王都に入ってきた? いま厳戒態勢で不審な人物は一切ゲートからは入れないはずだ」
俺は王都を囲む高い壁を指差してから、その指を跳ねあげた。
犬男は口をあんぐりと開けた。
「まさか……おぬし、飛んだのか?」
「ああ」
「まったく……来るだろうとは思っていたが……まさか現場に来るとはな」
「現場?」
「ああ、ここは被害者の遺骨があった場所さ」
俺は頭をかくと、一呼吸おいてから話かけた。
「……連続殺人事件が発生しているようだな」
「ああ、いま王都は大混乱さ、王様は犯人の逃走経路を塞ぐとか言ってゲートで検問したり、漁港の水門を閉じたりと悪政をしやがる。まったく、王様の頭の中はレベル50で止まってるんだよ。おぬしみたいな、常識を覆す飛んでもないやつがいるってことを知らないんだからな」
「……なんか、色々ストレス溜まってるな」
「ああ、すまない、いきなり愚痴ってしまって……とにかくわしは普段、騎士として働いてるから、裏騎士家業のことは他言無用で頼む」
「秘密ってことか……なんで裏騎士をしてるか教えてくれたら黙っておいてやる」
犬男は肩をすくめると、後頭部をかいた。そして照れ臭そうに言った。
「バイクだ……」
「え? バイク?」
「裏騎士の仕事をするならバイクを使わせてもらえるんだよ」
「はぁ? バイクは犬飼のじゃないのか?」
「ああ、セガール殿のものだ。いや、正確にいうと、セガール殿が錬金術師の姉ちゃんに製作させたバイクと言ったほうがいいな」
「……じゃあ、犬飼はそのバイクに乗るためにスカーレットを誘拐したっていうのか?」
「ああ、簡単に言うとそうだな。あのときは誘拐しようとは思ってなかった。セガールの奴隷なんて名誉なことだからな。だが抵抗したんでつい緊縛してしまった。こっちも仕事だからな……セガール殿からの依頼をしくじるわけにもいかんし……あのときはすまなかった」
犬男は深々と頭を下げた。本当に悪いと思っているのだろうか。
俺は拳を作ってその中に『ライトボール』を初期発動するところまで持っていき、さらにパワーもマックスまで溜めた。
「おい、許されるわけないだろう! 奴隷なんて酷い目にあっているんだろうがっ!」
バキバキに火花が舞い散る俺の拳を見た犬飼は、なんとも言えない恐怖に怯え、震えるような言葉を吐いた。
「いやや、おぬしは勘違いしとる。あの少女は嫌がっておったが、ベルセリウス殿の奴隷はVIP待遇なのだぞ、一般的には羨ましいことなのだが……」
「なんだそれは? 信じられん」
「まだ会いに行ってないのか?」
「ああ」
「だったらすぐに会いにいけ……な、だからその手を光らせるのはやめよう、な」
「……わかった」
俺の拳から光りの輝きが、じわじわと消えていった。
それを見た犬飼は、ホッと胸をなで下ろすと、また頭を下げた。
「昨日の敵は今日の友、わしはもう何の依頼もセガール殿から受けておらんので安心せい」
「やれやれ……人の心や運命なんてあやふやなものだな」
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