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第一章 異世界の村 毒の森 盗まれた三億の金貨
41 作戦会議はハンバーガーを食べながら
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「じゃあ、私は異世界炒飯をつくればいいんだな? もぐもぐ」
「ああ、そいつに睡眠薬を混入させる……ガブリ、もぐもぐ」
「睡眠薬? 昨日採取していたレレリーのことか? 貴様、もしかして? んぐんぐ」
「内緒だぞ……俺は極悪非道の盗賊になりきるからな……ぱく、もぐもぐ」
「なるほど、そういう作戦か……あむ、もぐもぐ」
「ああ、うめぇ……もぐもぐ」
俺、あかねちゃん、リンちゃんの三人は、テーブルの椅子に座って作戦会議を開いていた。もちろん昼食を摂りながらだ。
昼食はあかねちゃん特製の異世界ハンバーガーだ。そいつを片手にもぐもぐと話し合っている光景は、ファーストフード店にいるような雰囲気だった。ポテトとコーラも注文したくなってくるが、ここは異世界だ。我慢しよう。
「御主人様ぁ、あたしは何をしたら? ぁむ、もぐもぐ」
そう尋ねるリンちゃんは、大きな口を開けてハンバーガーを頬張った。もぐもぐと咀嚼しながら、俺のほうに身を寄せて猫耳を傾けてくる。か、かわいい……。
俺はペロリとハンバーガーを腹に収めると口を開いた。
「いや、今のところ特に何もすることはない」
「えぇ! あたしも緊縛してみたいんですが……縄を使って……」
「じゃあ、手伝ってくれ」
「ありがとうございます」
リンちゃんはにっこり笑うと、またハンバーガーを頬張った。
あかねちゃんは、口の中のものをすべて飲み込んでから言った。
「おい、ジャマールを緊縛するならさ。ファイヤーボールを喰らわしてやりたいんだがいいか? 婚約破棄した恨みを晴らしたい」
「それは許可できない。あかねちゃんはずっと隠れていろ」
「えっ? なんで?」
「あかねちゃん、いやスカーレットがこの村にいたらジャマールが警戒するのは明白だ。そして金貨が盗まれてないか心配になって、すぐにでも倉庫に行くことが推測される。だが、それは避けたいんだ。騒がれたら眠らせることがまず不可能になるからな。今回の作戦で一番重要なことは、村に到着したジャマールたちに食事してもらうこと……その一点につきる」
「なるほど……金貨の有無を確認させる前に眠らせて緊縛する、そういうことか?」
「ああ、そうしたら盗賊になりきった俺が登場し、緊縛したジャマールを森に放流する。それまであかねちゃんは自分の家に隠れていろ」
「わかった」
会議が終わった俺たちは、それぞれ思い思いに過ごした。
鍋を振って異世界炒飯をつくるあかねちゃんは、額に汗を流し。
猫に『トランスフォーム』したリンちゃんは、焚き火の近くに敷いてあるラグの上で丸くなって寝ている。
俺は工房に立ち寄ってサルートさんから縄をもらいに来ていた。
そのついでに棚の引き戸にしまっておいたプレーンシューズとブーツを履き替えようと思ったが、やめておいた。スーツが戻ってきてからでいいかと考え直したからだ。
すると工房にいた村長のゴローさんが、陽気な声で俺に話かけてきた。酒が入ってないのにこのテンション、なかなか好感が持てる。
「よっ! 探偵さん! 村人の服とブーツが似合ってるなっ」
「ほんとか?」
「ああ、もういっそこのままここの村の住人になれよ」
「……それもいいかもな」
「だろ? がはは」
笑い合う俺とゴローさんはいつしか友情のようなものが芽生えていた。
失った貴族の金貨の後始末をどうするつもりだったかしらないが、とりあえず俺はゴローさんにとっては命の恩人に近いものがあるかもしれないな。
それでも俺はこの村に、ずっといるわけにはいかない。この村で、のほほんスローライフできたら楽しそうだが、俺は……王都ネイザーランドに向かわなければならないんだ。またいつか村に遊びに来るから許せ。
「ゴローさん……ちょっといいか?」
「なんだ?」
「夕方ごろにジャマールが来るから歓迎してやって欲しい。きっとお腹を空かせているだろうから食事を進めてくれないか?」
「おお、わかった!」
「頼む」
ゴローさんの肩をポンっと叩いた俺は、工房を後にした。
「ああ、そいつに睡眠薬を混入させる……ガブリ、もぐもぐ」
「睡眠薬? 昨日採取していたレレリーのことか? 貴様、もしかして? んぐんぐ」
「内緒だぞ……俺は極悪非道の盗賊になりきるからな……ぱく、もぐもぐ」
「なるほど、そういう作戦か……あむ、もぐもぐ」
「ああ、うめぇ……もぐもぐ」
俺、あかねちゃん、リンちゃんの三人は、テーブルの椅子に座って作戦会議を開いていた。もちろん昼食を摂りながらだ。
昼食はあかねちゃん特製の異世界ハンバーガーだ。そいつを片手にもぐもぐと話し合っている光景は、ファーストフード店にいるような雰囲気だった。ポテトとコーラも注文したくなってくるが、ここは異世界だ。我慢しよう。
「御主人様ぁ、あたしは何をしたら? ぁむ、もぐもぐ」
そう尋ねるリンちゃんは、大きな口を開けてハンバーガーを頬張った。もぐもぐと咀嚼しながら、俺のほうに身を寄せて猫耳を傾けてくる。か、かわいい……。
俺はペロリとハンバーガーを腹に収めると口を開いた。
「いや、今のところ特に何もすることはない」
「えぇ! あたしも緊縛してみたいんですが……縄を使って……」
「じゃあ、手伝ってくれ」
「ありがとうございます」
リンちゃんはにっこり笑うと、またハンバーガーを頬張った。
あかねちゃんは、口の中のものをすべて飲み込んでから言った。
「おい、ジャマールを緊縛するならさ。ファイヤーボールを喰らわしてやりたいんだがいいか? 婚約破棄した恨みを晴らしたい」
「それは許可できない。あかねちゃんはずっと隠れていろ」
「えっ? なんで?」
「あかねちゃん、いやスカーレットがこの村にいたらジャマールが警戒するのは明白だ。そして金貨が盗まれてないか心配になって、すぐにでも倉庫に行くことが推測される。だが、それは避けたいんだ。騒がれたら眠らせることがまず不可能になるからな。今回の作戦で一番重要なことは、村に到着したジャマールたちに食事してもらうこと……その一点につきる」
「なるほど……金貨の有無を確認させる前に眠らせて緊縛する、そういうことか?」
「ああ、そうしたら盗賊になりきった俺が登場し、緊縛したジャマールを森に放流する。それまであかねちゃんは自分の家に隠れていろ」
「わかった」
会議が終わった俺たちは、それぞれ思い思いに過ごした。
鍋を振って異世界炒飯をつくるあかねちゃんは、額に汗を流し。
猫に『トランスフォーム』したリンちゃんは、焚き火の近くに敷いてあるラグの上で丸くなって寝ている。
俺は工房に立ち寄ってサルートさんから縄をもらいに来ていた。
そのついでに棚の引き戸にしまっておいたプレーンシューズとブーツを履き替えようと思ったが、やめておいた。スーツが戻ってきてからでいいかと考え直したからだ。
すると工房にいた村長のゴローさんが、陽気な声で俺に話かけてきた。酒が入ってないのにこのテンション、なかなか好感が持てる。
「よっ! 探偵さん! 村人の服とブーツが似合ってるなっ」
「ほんとか?」
「ああ、もういっそこのままここの村の住人になれよ」
「……それもいいかもな」
「だろ? がはは」
笑い合う俺とゴローさんはいつしか友情のようなものが芽生えていた。
失った貴族の金貨の後始末をどうするつもりだったかしらないが、とりあえず俺はゴローさんにとっては命の恩人に近いものがあるかもしれないな。
それでも俺はこの村に、ずっといるわけにはいかない。この村で、のほほんスローライフできたら楽しそうだが、俺は……王都ネイザーランドに向かわなければならないんだ。またいつか村に遊びに来るから許せ。
「ゴローさん……ちょっといいか?」
「なんだ?」
「夕方ごろにジャマールが来るから歓迎してやって欲しい。きっとお腹を空かせているだろうから食事を進めてくれないか?」
「おお、わかった!」
「頼む」
ゴローさんの肩をポンっと叩いた俺は、工房を後にした。
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