43 / 115
第一章 異世界の村 毒の森 盗まれた三億の金貨
41 作戦会議はハンバーガーを食べながら
しおりを挟む
「じゃあ、私は異世界炒飯をつくればいいんだな? もぐもぐ」
「ああ、そいつに睡眠薬を混入させる……ガブリ、もぐもぐ」
「睡眠薬? 昨日採取していたレレリーのことか? 貴様、もしかして? んぐんぐ」
「内緒だぞ……俺は極悪非道の盗賊になりきるからな……ぱく、もぐもぐ」
「なるほど、そういう作戦か……あむ、もぐもぐ」
「ああ、うめぇ……もぐもぐ」
俺、あかねちゃん、リンちゃんの三人は、テーブルの椅子に座って作戦会議を開いていた。もちろん昼食を摂りながらだ。
昼食はあかねちゃん特製の異世界ハンバーガーだ。そいつを片手にもぐもぐと話し合っている光景は、ファーストフード店にいるような雰囲気だった。ポテトとコーラも注文したくなってくるが、ここは異世界だ。我慢しよう。
「御主人様ぁ、あたしは何をしたら? ぁむ、もぐもぐ」
そう尋ねるリンちゃんは、大きな口を開けてハンバーガーを頬張った。もぐもぐと咀嚼しながら、俺のほうに身を寄せて猫耳を傾けてくる。か、かわいい……。
俺はペロリとハンバーガーを腹に収めると口を開いた。
「いや、今のところ特に何もすることはない」
「えぇ! あたしも緊縛してみたいんですが……縄を使って……」
「じゃあ、手伝ってくれ」
「ありがとうございます」
リンちゃんはにっこり笑うと、またハンバーガーを頬張った。
あかねちゃんは、口の中のものをすべて飲み込んでから言った。
「おい、ジャマールを緊縛するならさ。ファイヤーボールを喰らわしてやりたいんだがいいか? 婚約破棄した恨みを晴らしたい」
「それは許可できない。あかねちゃんはずっと隠れていろ」
「えっ? なんで?」
「あかねちゃん、いやスカーレットがこの村にいたらジャマールが警戒するのは明白だ。そして金貨が盗まれてないか心配になって、すぐにでも倉庫に行くことが推測される。だが、それは避けたいんだ。騒がれたら眠らせることがまず不可能になるからな。今回の作戦で一番重要なことは、村に到着したジャマールたちに食事してもらうこと……その一点につきる」
「なるほど……金貨の有無を確認させる前に眠らせて緊縛する、そういうことか?」
「ああ、そうしたら盗賊になりきった俺が登場し、緊縛したジャマールを森に放流する。それまであかねちゃんは自分の家に隠れていろ」
「わかった」
会議が終わった俺たちは、それぞれ思い思いに過ごした。
鍋を振って異世界炒飯をつくるあかねちゃんは、額に汗を流し。
猫に『トランスフォーム』したリンちゃんは、焚き火の近くに敷いてあるラグの上で丸くなって寝ている。
俺は工房に立ち寄ってサルートさんから縄をもらいに来ていた。
そのついでに棚の引き戸にしまっておいたプレーンシューズとブーツを履き替えようと思ったが、やめておいた。スーツが戻ってきてからでいいかと考え直したからだ。
すると工房にいた村長のゴローさんが、陽気な声で俺に話かけてきた。酒が入ってないのにこのテンション、なかなか好感が持てる。
「よっ! 探偵さん! 村人の服とブーツが似合ってるなっ」
「ほんとか?」
「ああ、もういっそこのままここの村の住人になれよ」
「……それもいいかもな」
「だろ? がはは」
笑い合う俺とゴローさんはいつしか友情のようなものが芽生えていた。
失った貴族の金貨の後始末をどうするつもりだったかしらないが、とりあえず俺はゴローさんにとっては命の恩人に近いものがあるかもしれないな。
それでも俺はこの村に、ずっといるわけにはいかない。この村で、のほほんスローライフできたら楽しそうだが、俺は……王都ネイザーランドに向かわなければならないんだ。またいつか村に遊びに来るから許せ。
「ゴローさん……ちょっといいか?」
「なんだ?」
「夕方ごろにジャマールが来るから歓迎してやって欲しい。きっとお腹を空かせているだろうから食事を進めてくれないか?」
「おお、わかった!」
「頼む」
ゴローさんの肩をポンっと叩いた俺は、工房を後にした。
「ああ、そいつに睡眠薬を混入させる……ガブリ、もぐもぐ」
「睡眠薬? 昨日採取していたレレリーのことか? 貴様、もしかして? んぐんぐ」
「内緒だぞ……俺は極悪非道の盗賊になりきるからな……ぱく、もぐもぐ」
「なるほど、そういう作戦か……あむ、もぐもぐ」
「ああ、うめぇ……もぐもぐ」
俺、あかねちゃん、リンちゃんの三人は、テーブルの椅子に座って作戦会議を開いていた。もちろん昼食を摂りながらだ。
昼食はあかねちゃん特製の異世界ハンバーガーだ。そいつを片手にもぐもぐと話し合っている光景は、ファーストフード店にいるような雰囲気だった。ポテトとコーラも注文したくなってくるが、ここは異世界だ。我慢しよう。
「御主人様ぁ、あたしは何をしたら? ぁむ、もぐもぐ」
そう尋ねるリンちゃんは、大きな口を開けてハンバーガーを頬張った。もぐもぐと咀嚼しながら、俺のほうに身を寄せて猫耳を傾けてくる。か、かわいい……。
俺はペロリとハンバーガーを腹に収めると口を開いた。
「いや、今のところ特に何もすることはない」
「えぇ! あたしも緊縛してみたいんですが……縄を使って……」
「じゃあ、手伝ってくれ」
「ありがとうございます」
リンちゃんはにっこり笑うと、またハンバーガーを頬張った。
あかねちゃんは、口の中のものをすべて飲み込んでから言った。
「おい、ジャマールを緊縛するならさ。ファイヤーボールを喰らわしてやりたいんだがいいか? 婚約破棄した恨みを晴らしたい」
「それは許可できない。あかねちゃんはずっと隠れていろ」
「えっ? なんで?」
「あかねちゃん、いやスカーレットがこの村にいたらジャマールが警戒するのは明白だ。そして金貨が盗まれてないか心配になって、すぐにでも倉庫に行くことが推測される。だが、それは避けたいんだ。騒がれたら眠らせることがまず不可能になるからな。今回の作戦で一番重要なことは、村に到着したジャマールたちに食事してもらうこと……その一点につきる」
「なるほど……金貨の有無を確認させる前に眠らせて緊縛する、そういうことか?」
「ああ、そうしたら盗賊になりきった俺が登場し、緊縛したジャマールを森に放流する。それまであかねちゃんは自分の家に隠れていろ」
「わかった」
会議が終わった俺たちは、それぞれ思い思いに過ごした。
鍋を振って異世界炒飯をつくるあかねちゃんは、額に汗を流し。
猫に『トランスフォーム』したリンちゃんは、焚き火の近くに敷いてあるラグの上で丸くなって寝ている。
俺は工房に立ち寄ってサルートさんから縄をもらいに来ていた。
そのついでに棚の引き戸にしまっておいたプレーンシューズとブーツを履き替えようと思ったが、やめておいた。スーツが戻ってきてからでいいかと考え直したからだ。
すると工房にいた村長のゴローさんが、陽気な声で俺に話かけてきた。酒が入ってないのにこのテンション、なかなか好感が持てる。
「よっ! 探偵さん! 村人の服とブーツが似合ってるなっ」
「ほんとか?」
「ああ、もういっそこのままここの村の住人になれよ」
「……それもいいかもな」
「だろ? がはは」
笑い合う俺とゴローさんはいつしか友情のようなものが芽生えていた。
失った貴族の金貨の後始末をどうするつもりだったかしらないが、とりあえず俺はゴローさんにとっては命の恩人に近いものがあるかもしれないな。
それでも俺はこの村に、ずっといるわけにはいかない。この村で、のほほんスローライフできたら楽しそうだが、俺は……王都ネイザーランドに向かわなければならないんだ。またいつか村に遊びに来るから許せ。
「ゴローさん……ちょっといいか?」
「なんだ?」
「夕方ごろにジャマールが来るから歓迎してやって欲しい。きっとお腹を空かせているだろうから食事を進めてくれないか?」
「おお、わかった!」
「頼む」
ゴローさんの肩をポンっと叩いた俺は、工房を後にした。
0
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる