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第一章 異世界の村 毒の森 盗まれた三億の金貨
25 異世界だって洗濯したい
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「ふぅ~いい湯だった~」
首にタオルを巻いたあかねちゃんが、なんともリラックスした表情でつぶやいている。
風呂場に着くと、ちょうどあかねちゃんが湯船から上がり、休憩室の鏡の前で身支度を整えていたのだ。
あかねちゃんは、ふわっとタオルを頭にかけると、手でわしゃわしゃとやって髪を乾かす、その仕草は一緒に生活してないと見れないようもので、鏡の前に映った俺とあかねちゃんを見ていると、なんだか同棲しているような錯覚を抱いた。いかん、いかん、変な妄想をしては。
するとあかねちゃんは「そろそろ髪切ろっかな」とつぶやいた。
艶のある黒髪は長くて、とてもじゃないがタオルドライでは時間がかかりそうだった。
「ドライヤーとかあるといいな」
「おい、和泉ぃ……異世界には電気がないんだから『リフリジュレーター』で移送させても意味ないだろ。いい加減にしろよ……」
「すまんすまん、でも電気のかわりが魔法なんだろ?」
「ああ」
「じゃあ、例えば、あかねちゃんの火魔法と誰かの風魔法を合体させれば温風が作りだせるのではないか?」
「和泉ぃ……貴様ぁ……」
「なんだ?」
「天才かよっ!」
「えっ? あはは……ただの思いつきだ」
「私はあまり冒険に出てなかったが、魔法を合体させるやつらは見たことないな」
あかねちゃんは毛先を、ぽんぽんと優しく包み込んでタオルドライしている。
美しい髪というものは、念入りなヘアケアが必要なのだろう。
俺は思い出したように、手を叩いて言った。
「というのもな……リンちゃんの『まほう』のところに『風』とあったんだ」
「ほう……それは素晴らしいな。風魔法は王都ネイザーランドでは王族の証だぞ」
「そうなのか……ちなにみ俺は無属性だったんだが何か知ってるか?」
「むぞくせい? 知らない魔法だな。王都のギルドに登録している冒険者のトレカを閲覧していても、無属性なんて魔法は見たことがない」
「そうか……」
異世界の先輩であるあかねちゃんなら何か知っているかと思ったが、まだまだ異世界の謎は深まるばかりだ。
そんなことを思いながら俺が腕を組んでいると、イザベルさんが女性脱衣所から出てきた。
フェーブがかったブロンドヘアがしっとりと濡れていた。湯上り美人とはまさにこのことを言うのだろう。
「あら、探偵さんも今からお風呂ぉ?」
「は、はい……」
「大丈夫よ……そんなにおびえないで……もう触らないから」
「す、すいません」
すると男性脱衣所からゴローの顔が出てきた。
「おいっイザベルぅ~風呂からあがったらビールが飲みたいから出しといてくれ~」
「は~い」
イザベルさんは元気よく返事をすると「それじゃあね」と言って湯煙を連れながら外に出ていった。
はぁ……俺はなんで人妻に緊張しなきゃならないんだよ、まったく……。
困ったなぁ、と思っていると、俺の肩を叩きながらあかねちゃんがつぶやいた。
「なぁ、和泉ぃ……なんでのぞきに来なかったんだ? 待ってたんだぞぉ」
「……ば……バカなことを言うな」
「何を焦っている? これを見ろ」
「えっ?」
あかねちゃんの手もとにはスクール水着を持っていた。
「はぁ? おいおい、スク水なんて『リフリジュレーター』を使ってこっちに移送したのかよ」
「まぁな……だって若返ったんだぞ! これくらいしてもいいじゃないか」
「……妹ちゃんがスク水を冷蔵庫に入れるシーンを想像すると胸が痛いよ」
「それを言うなぁ、和泉ぃ」
俺の背中をポコスカと殴るあかねちゃんの力はたったの『3』しかない。痛くも痒くもなんともなかった。
だが俺の着ているスーツの匂いが臭いらしく、田中さんは顔をしかめた。
「くっさぁい……ほれ、服を脱げ! 洗っといてやる」
「えっ……あ……じゃあ、俺は風呂からあがったら何を着ればいい?」
「これを着とけ」
あかねちゃんに渡されたのは、村人たちが着ている服だった。
「どうしたんだこれ?」
「ゴローさんから借りた。下着とタオルもここに置いとくぞ」
「えっ、いいのか?」
「ああ、大丈夫だ。ビールを欲するという彼の弱みを握っているからな。ビールをやらないと言えば犯罪以外ならなんでもしてくれそうだ。いや、犯罪すらするかもしれない……」
「まったく……あかねちゃんはわけがわからんな」
「ほらぁ、早く脱げっ」
なんだこいつは? ええい……かまうものか!
ジャケットを脱いでシャツのボタンを外し、前を肌けさせた。
別に女に裸を見られたって、俺は男だから平気だしなんとも思わない。
しかしあかねちゃんのほうは俺の裸に興味津々のようで、なんとも惚けた声を漏らした。
「ほう……やっぱりなかなか良い筋肉をしているなぁ……ジュルリ……」
「俺は体を鍛えているんだ。探偵をしていると犯人を捕獲することもあるからな。浮気調査をする場合など、喧嘩を仲裁することだって日常茶飯事だ。包丁を持ち出してくる悪漢もいるくらいだぞ」
「なるほど……前世で修羅場を経験していたから、レベル95で転移したのかもしれないな。う~ん、うらやま死刑だ」
「ふっ……じゃあ、俺はフロリダする」
鼻で笑った俺は、スラックスも脱ぐとスーツ、一式をあかねちゃんに渡した。
あかねちゃんは目を逸らすことなく、値踏みするように堂々と俺の身体を惜しげもなく眺めている。
男の半裸を見ても、まったく恥ずかしい素振りを見せないあかねちゃんは、男性経験が豊富なのだろう。もちろん前世で、の話だが。そしてその瞳に宿る審美眼は、俺の身体……いや、語弊があるな、俺の身体に隠された潜在能力に興味があるように見える。
「下着もいいぞ……洗っとこうか?」
「けっこうだ。自分でやる」
「……」
下着姿になった俺は踵を返し、男性脱衣所に入っていく。
あかねちゃんの視線が俺の背中に突き刺さっているのは言うまでもない。
まったく……見た目は美少女のくせに頭脳はおばさん、いや、お姉さんなんだから困る。
首にタオルを巻いたあかねちゃんが、なんともリラックスした表情でつぶやいている。
風呂場に着くと、ちょうどあかねちゃんが湯船から上がり、休憩室の鏡の前で身支度を整えていたのだ。
あかねちゃんは、ふわっとタオルを頭にかけると、手でわしゃわしゃとやって髪を乾かす、その仕草は一緒に生活してないと見れないようもので、鏡の前に映った俺とあかねちゃんを見ていると、なんだか同棲しているような錯覚を抱いた。いかん、いかん、変な妄想をしては。
するとあかねちゃんは「そろそろ髪切ろっかな」とつぶやいた。
艶のある黒髪は長くて、とてもじゃないがタオルドライでは時間がかかりそうだった。
「ドライヤーとかあるといいな」
「おい、和泉ぃ……異世界には電気がないんだから『リフリジュレーター』で移送させても意味ないだろ。いい加減にしろよ……」
「すまんすまん、でも電気のかわりが魔法なんだろ?」
「ああ」
「じゃあ、例えば、あかねちゃんの火魔法と誰かの風魔法を合体させれば温風が作りだせるのではないか?」
「和泉ぃ……貴様ぁ……」
「なんだ?」
「天才かよっ!」
「えっ? あはは……ただの思いつきだ」
「私はあまり冒険に出てなかったが、魔法を合体させるやつらは見たことないな」
あかねちゃんは毛先を、ぽんぽんと優しく包み込んでタオルドライしている。
美しい髪というものは、念入りなヘアケアが必要なのだろう。
俺は思い出したように、手を叩いて言った。
「というのもな……リンちゃんの『まほう』のところに『風』とあったんだ」
「ほう……それは素晴らしいな。風魔法は王都ネイザーランドでは王族の証だぞ」
「そうなのか……ちなにみ俺は無属性だったんだが何か知ってるか?」
「むぞくせい? 知らない魔法だな。王都のギルドに登録している冒険者のトレカを閲覧していても、無属性なんて魔法は見たことがない」
「そうか……」
異世界の先輩であるあかねちゃんなら何か知っているかと思ったが、まだまだ異世界の謎は深まるばかりだ。
そんなことを思いながら俺が腕を組んでいると、イザベルさんが女性脱衣所から出てきた。
フェーブがかったブロンドヘアがしっとりと濡れていた。湯上り美人とはまさにこのことを言うのだろう。
「あら、探偵さんも今からお風呂ぉ?」
「は、はい……」
「大丈夫よ……そんなにおびえないで……もう触らないから」
「す、すいません」
すると男性脱衣所からゴローの顔が出てきた。
「おいっイザベルぅ~風呂からあがったらビールが飲みたいから出しといてくれ~」
「は~い」
イザベルさんは元気よく返事をすると「それじゃあね」と言って湯煙を連れながら外に出ていった。
はぁ……俺はなんで人妻に緊張しなきゃならないんだよ、まったく……。
困ったなぁ、と思っていると、俺の肩を叩きながらあかねちゃんがつぶやいた。
「なぁ、和泉ぃ……なんでのぞきに来なかったんだ? 待ってたんだぞぉ」
「……ば……バカなことを言うな」
「何を焦っている? これを見ろ」
「えっ?」
あかねちゃんの手もとにはスクール水着を持っていた。
「はぁ? おいおい、スク水なんて『リフリジュレーター』を使ってこっちに移送したのかよ」
「まぁな……だって若返ったんだぞ! これくらいしてもいいじゃないか」
「……妹ちゃんがスク水を冷蔵庫に入れるシーンを想像すると胸が痛いよ」
「それを言うなぁ、和泉ぃ」
俺の背中をポコスカと殴るあかねちゃんの力はたったの『3』しかない。痛くも痒くもなんともなかった。
だが俺の着ているスーツの匂いが臭いらしく、田中さんは顔をしかめた。
「くっさぁい……ほれ、服を脱げ! 洗っといてやる」
「えっ……あ……じゃあ、俺は風呂からあがったら何を着ればいい?」
「これを着とけ」
あかねちゃんに渡されたのは、村人たちが着ている服だった。
「どうしたんだこれ?」
「ゴローさんから借りた。下着とタオルもここに置いとくぞ」
「えっ、いいのか?」
「ああ、大丈夫だ。ビールを欲するという彼の弱みを握っているからな。ビールをやらないと言えば犯罪以外ならなんでもしてくれそうだ。いや、犯罪すらするかもしれない……」
「まったく……あかねちゃんはわけがわからんな」
「ほらぁ、早く脱げっ」
なんだこいつは? ええい……かまうものか!
ジャケットを脱いでシャツのボタンを外し、前を肌けさせた。
別に女に裸を見られたって、俺は男だから平気だしなんとも思わない。
しかしあかねちゃんのほうは俺の裸に興味津々のようで、なんとも惚けた声を漏らした。
「ほう……やっぱりなかなか良い筋肉をしているなぁ……ジュルリ……」
「俺は体を鍛えているんだ。探偵をしていると犯人を捕獲することもあるからな。浮気調査をする場合など、喧嘩を仲裁することだって日常茶飯事だ。包丁を持ち出してくる悪漢もいるくらいだぞ」
「なるほど……前世で修羅場を経験していたから、レベル95で転移したのかもしれないな。う~ん、うらやま死刑だ」
「ふっ……じゃあ、俺はフロリダする」
鼻で笑った俺は、スラックスも脱ぐとスーツ、一式をあかねちゃんに渡した。
あかねちゃんは目を逸らすことなく、値踏みするように堂々と俺の身体を惜しげもなく眺めている。
男の半裸を見ても、まったく恥ずかしい素振りを見せないあかねちゃんは、男性経験が豊富なのだろう。もちろん前世で、の話だが。そしてその瞳に宿る審美眼は、俺の身体……いや、語弊があるな、俺の身体に隠された潜在能力に興味があるように見える。
「下着もいいぞ……洗っとこうか?」
「けっこうだ。自分でやる」
「……」
下着姿になった俺は踵を返し、男性脱衣所に入っていく。
あかねちゃんの視線が俺の背中に突き刺さっているのは言うまでもない。
まったく……見た目は美少女のくせに頭脳はおばさん、いや、お姉さんなんだから困る。
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