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第一章 異世界の村 毒の森 盗まれた三億の金貨
8 村長からの依頼
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村人たちは、うまそうな食材を持ってきた。
串刺しにされた焼き魚、こんがりと焼けたとうもろし、焼き鳥、たこ焼き、皿に盛られた焼きそばもあった。焦げたソースの香りが、腹を空かせた俺の食欲をそそる。
「はぁ!? お祭りかよっ!」
びっくりした俺に向かって村長であろう若者が話しかけてきた。
「ささ、どうぞどうぞ!」
そう促された場所には、大きな木製のテーブルと椅子が並んでいた。
「ずいぶんとこの異世界の村は、日本の文化が浸透しているな」
よだれが垂れてきた。
焚き火の近くでは鍋の中でたゆたうスープを、お玉ですくって皿に盛る村の女性がいた。
そのスープのとろっとしたコク、艶めいた色、ゴロゴロとした野菜や肉の形を見てびっくりした。
「あ……あれはまさかみんなが大好きなやつか? よし……サーチしてみよう」
キュイン! と四角をつくった指先からウィンドウが放たれる。
『 カレー(中辛) 』
「やっぱりカレーかよ! しかも中辛」
た、たまらん……異世界に来てカレーが食べれるなんて……最高かよ!
しかしどこを見まわしてもライスがないみたいだな。
ええい、そんなの関係ない。カレーは飲み物だって、誰かが言っていたような気もするし問題ない。
ああ、はやく食べたい。いや、飲みたい。
ふと、リンちゃんは何を食べているのか見ると、ペロペロと勢いよく白い液体を舐めていた。
念のため『サーチ』してみると『 牛乳 』と表示された。
よかった。栄養を摂取して元気を取り戻したようだ。
リンちゃんはペロリと皿を平らげると、チラッと俺のほうを見つめて「ニャン」と鳴いた。美味しいと言っているみたいだ。
さてと、俺も手を合わせていただくとしよう。
「いただきます」
ガツガツ、もぐもぐと食らいつく俺の姿は、客観的に見たら血に飢えたケモノみたいだろうな。またはフードファイターか。
村の若い女たちが、そんな俺を見て、ひそひそと手で口を隠しながら何か言ってやがる。女どもにどう思われようと、別にかまわない。言わせておけばいい。
「うめぇ……」
俺は歓喜の声を漏らしてしまった。だってカレーだぞ。美味いに決まってる。さらにテーブルの上には、じゃんじゃんとB級グルメが配膳されていく。まったくもって、ここは飲み屋かよってくらいの雰囲気になっていた。
気がつくと、リーダーの若者が隣に座ってきた。右手には黄金の液体の入ったジョッキを持っている。口もとには泡のひげまでついていた。完全にビールだろそれ?
「いやぁ、あんたニャンガミ様の使者だったとはなぁ、失礼しましたー」
「あ、ども……もぐもぐ」
「それにしても、あんたどっからきた?」
「え……まあ、ネイザーランドの西のほうからです……もぐもぐ」
「ほう、この地方のことをネイザーと呼ぶところをみると、あんた冒険者だな」
ああん、もう面倒だな……こっちは食事中なのに……。
とりあえず口の中のものを、ごっくんと飲み込んだ俺は若者に質問した。
「は? 冒険者? なにそれ?」
「んあ? 冒険者といったらこの世界を旅して魔獣やらを倒してレベルをあげたり宝をゲットしたりして生計をたてるやつらのことだ。あんた違うのか?」
「ああ……違う……俺は探偵だ」
「たんてい? 初耳だな。どんな職業だ?」
「探偵とは事件が起きたらそれを解決するために調査するという仕事だ。浮気調査やら身辺調査といった地味なものが多いが、俺が特に依頼を受けるのは、行方不明事件だ。行方不明者が死亡しないために、警察よりも迅速に調査して犯人を捕獲する」
「なんか知らんがカッコいいなそれ! がはは」
リーダーの若者は陽気に笑うと、大きな身体を揺らしながら立ち上がった。
「そうだ! あんたその探偵ってやつなら、ちょいと解決してもらいたい事件があるんだが頼んでもいいか?」
「ああ、御馳走になったお礼だ。いいぞ」
「それはありがたい。じゃあ、ついてきてくれ」
「わかった」
こころよく了承した俺は、跳ねるように立ち上がった。
ふと、リンちゃんを見やると、テーブルの上で魚をくわえて、バキバキと骨ごと噛み砕いている。けっこうワイルドなんだね……これなら一人、いや一匹にしても大丈夫だろう。
「リンちゃん、ちょっと行ってくるからここで待っててね」
顔をあげたリンちゃんは「ニャン」とだけ鳴くと、今度は串のついた焼き鳥にかぶりついていた。これでビールも飲んでいたら、居酒屋で飲んでいるおじさんと変わらない食べっぷりだ。リンちゃんの元気が出て、本当によかった。
串刺しにされた焼き魚、こんがりと焼けたとうもろし、焼き鳥、たこ焼き、皿に盛られた焼きそばもあった。焦げたソースの香りが、腹を空かせた俺の食欲をそそる。
「はぁ!? お祭りかよっ!」
びっくりした俺に向かって村長であろう若者が話しかけてきた。
「ささ、どうぞどうぞ!」
そう促された場所には、大きな木製のテーブルと椅子が並んでいた。
「ずいぶんとこの異世界の村は、日本の文化が浸透しているな」
よだれが垂れてきた。
焚き火の近くでは鍋の中でたゆたうスープを、お玉ですくって皿に盛る村の女性がいた。
そのスープのとろっとしたコク、艶めいた色、ゴロゴロとした野菜や肉の形を見てびっくりした。
「あ……あれはまさかみんなが大好きなやつか? よし……サーチしてみよう」
キュイン! と四角をつくった指先からウィンドウが放たれる。
『 カレー(中辛) 』
「やっぱりカレーかよ! しかも中辛」
た、たまらん……異世界に来てカレーが食べれるなんて……最高かよ!
しかしどこを見まわしてもライスがないみたいだな。
ええい、そんなの関係ない。カレーは飲み物だって、誰かが言っていたような気もするし問題ない。
ああ、はやく食べたい。いや、飲みたい。
ふと、リンちゃんは何を食べているのか見ると、ペロペロと勢いよく白い液体を舐めていた。
念のため『サーチ』してみると『 牛乳 』と表示された。
よかった。栄養を摂取して元気を取り戻したようだ。
リンちゃんはペロリと皿を平らげると、チラッと俺のほうを見つめて「ニャン」と鳴いた。美味しいと言っているみたいだ。
さてと、俺も手を合わせていただくとしよう。
「いただきます」
ガツガツ、もぐもぐと食らいつく俺の姿は、客観的に見たら血に飢えたケモノみたいだろうな。またはフードファイターか。
村の若い女たちが、そんな俺を見て、ひそひそと手で口を隠しながら何か言ってやがる。女どもにどう思われようと、別にかまわない。言わせておけばいい。
「うめぇ……」
俺は歓喜の声を漏らしてしまった。だってカレーだぞ。美味いに決まってる。さらにテーブルの上には、じゃんじゃんとB級グルメが配膳されていく。まったくもって、ここは飲み屋かよってくらいの雰囲気になっていた。
気がつくと、リーダーの若者が隣に座ってきた。右手には黄金の液体の入ったジョッキを持っている。口もとには泡のひげまでついていた。完全にビールだろそれ?
「いやぁ、あんたニャンガミ様の使者だったとはなぁ、失礼しましたー」
「あ、ども……もぐもぐ」
「それにしても、あんたどっからきた?」
「え……まあ、ネイザーランドの西のほうからです……もぐもぐ」
「ほう、この地方のことをネイザーと呼ぶところをみると、あんた冒険者だな」
ああん、もう面倒だな……こっちは食事中なのに……。
とりあえず口の中のものを、ごっくんと飲み込んだ俺は若者に質問した。
「は? 冒険者? なにそれ?」
「んあ? 冒険者といったらこの世界を旅して魔獣やらを倒してレベルをあげたり宝をゲットしたりして生計をたてるやつらのことだ。あんた違うのか?」
「ああ……違う……俺は探偵だ」
「たんてい? 初耳だな。どんな職業だ?」
「探偵とは事件が起きたらそれを解決するために調査するという仕事だ。浮気調査やら身辺調査といった地味なものが多いが、俺が特に依頼を受けるのは、行方不明事件だ。行方不明者が死亡しないために、警察よりも迅速に調査して犯人を捕獲する」
「なんか知らんがカッコいいなそれ! がはは」
リーダーの若者は陽気に笑うと、大きな身体を揺らしながら立ち上がった。
「そうだ! あんたその探偵ってやつなら、ちょいと解決してもらいたい事件があるんだが頼んでもいいか?」
「ああ、御馳走になったお礼だ。いいぞ」
「それはありがたい。じゃあ、ついてきてくれ」
「わかった」
こころよく了承した俺は、跳ねるように立ち上がった。
ふと、リンちゃんを見やると、テーブルの上で魚をくわえて、バキバキと骨ごと噛み砕いている。けっこうワイルドなんだね……これなら一人、いや一匹にしても大丈夫だろう。
「リンちゃん、ちょっと行ってくるからここで待っててね」
顔をあげたリンちゃんは「ニャン」とだけ鳴くと、今度は串のついた焼き鳥にかぶりついていた。これでビールも飲んでいたら、居酒屋で飲んでいるおじさんと変わらない食べっぷりだ。リンちゃんの元気が出て、本当によかった。
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