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第一章 異世界の村 毒の森 盗まれた三億の金貨
7 猫のリンちゃんは神様
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村人たちはあっという間に逃げていった。
しかし建物の影や木々に身を隠しつつ、顔だけ出してこちらの様子をジッと窺っている。
なんで村人たちは俺を怖がっているのだろうか? 猫を抱いているからか? 黒いスーツを着ているからか? それとも俺がゆるふわっとパーマをかけた髪型をしているからか? こんなにも人から拒絶されると、心にショックをうけた。俺は立ち直れるだろうか。この村でやっていけるのだろうか。不安になる。
「あんた何者だ!」
突然、一人の若者が大きな声を上げた。
おそらくこの村のリーダー的な存在なのだろう。空腹だった俺は、すぐに大きな声が出せなかった。
それでもがんばって声を絞り出そうとしたとき、胃液というゲロが出そうになったがなんとか堪えた。
「驚かせてすまない。何か食べ物をわけてくれないか? 俺は怪しい者ではない」
自分で言っておいてなんだが、その信ぴょう性はまったくもって疑わしいものだった。
なぜなら今の俺の姿と言ったら、猫ちゃんを抱いたスーツの男、年齢は二十六歳のアラサーで、頭には葉っぱや木々の枝をくっつけて、安っぽい笑みを浮かべているのだから、どこからどう見ても怪しさ満点だろう。
冷静に考えてみると、俺を怖がるのも当然かもしれない。
村人たちからは、口々に疑惑の声が飛び交っている。
「怪しいやつは、自分のことを怪しくないって言うよな?」
「うむうむ、武器や防具を装備していないし、あり得ないことだ」
「森は魔獣もでるしな。たった一人で旅をするなんて無理ゲーだ」
どうしよう? 困った。村人ABCたちになんて説明したらいいかわからない。
力をなくした俺は、ぐでっと肩をすくめた。すると一人の少女が俺のほうに指差して声を上げた。
「ねぇ、あれってニャンガミ様じゃない?」
その言葉に反応した村人たちは、いっせいにジッと俺のほうを見つめた。いや、正確には俺なんか眼中になくて、猫のリンちゃんに首ったけだった。
なんだかやきもちを焼きたくなった俺は、改めてリンちゃんを抱きかかえなおした。ふわりとした体重はとても軽くて、見るからに体力を消耗しているようだった。
すると、わっと村人たちが近寄ってきた。そして勢いよく首を垂らしたかと思うと、地面に膝をついた。
「うお! なんだこいつら?」
村人たちはみんな土下座していた。俺とリンちゃんはまるで水戸黄門モード。
「ははー! ニャンガミ様が降臨なさった!」
村のリーダー的な若者が、そう言って拝んだ。
そしてペコペコと頭を下げてはおでこを地面に擦りつけている。いったい何をしているのだろうか? ニャンガミ様ってもしかしてリンちゃんのことなのだろうか? 俺はただ立ち尽くして呆然とその光景を見つめていると、一人の少女がすくっと立ち上がって、俺のほうに近づいてきた。面と向かうと尖らせていた口を開いた。
「ねぇ、抱かせてよ」
「え? ああ、猫ちゃんか……いいけどお腹が空いてて弱ってるんだ……」
「はぁ? 何やってんのよおじさん! 猫ちゃんが可哀想ではないかっ」
「お、おじさん……!?」
かしなさいと言わんばかりの顔を見せた少女は、サッと俺からリンちゃんを奪ったかと思うと、スリスリとリンちゃんの毛の流れにそって自分のほっぺたをこすりつけた。
「ちょっ、何すんだこの少女は?」
可愛いくせに強引だな。それにしても、やっぱりこの少女からしたら俺はおじさんなのか……とほほ、お兄さんって呼ばれるかと思っていたのに……ショックだ。
「ふぁわわわ、もふもふ♡」
少女はそう言って満面の笑みを浮かべた。
ツンデレかよこの少女は、か、可愛いじゃねぇか……。
リンちゃんはされるがままになでられつづけた。なんだかちょっと嫌そうな顔をしている。もっと優しくなでて欲しいみたいだ。わかるよその気持ち。
すると村人たちがぞくぞくと集まってきた。リーダーの若者が声を張り上げる。
「さぁ、村の者たちよ! ニャンガミ様とその使者に貢ぎ物を捧げよう」
「ほいさ! ほいさ!」
しかし建物の影や木々に身を隠しつつ、顔だけ出してこちらの様子をジッと窺っている。
なんで村人たちは俺を怖がっているのだろうか? 猫を抱いているからか? 黒いスーツを着ているからか? それとも俺がゆるふわっとパーマをかけた髪型をしているからか? こんなにも人から拒絶されると、心にショックをうけた。俺は立ち直れるだろうか。この村でやっていけるのだろうか。不安になる。
「あんた何者だ!」
突然、一人の若者が大きな声を上げた。
おそらくこの村のリーダー的な存在なのだろう。空腹だった俺は、すぐに大きな声が出せなかった。
それでもがんばって声を絞り出そうとしたとき、胃液というゲロが出そうになったがなんとか堪えた。
「驚かせてすまない。何か食べ物をわけてくれないか? 俺は怪しい者ではない」
自分で言っておいてなんだが、その信ぴょう性はまったくもって疑わしいものだった。
なぜなら今の俺の姿と言ったら、猫ちゃんを抱いたスーツの男、年齢は二十六歳のアラサーで、頭には葉っぱや木々の枝をくっつけて、安っぽい笑みを浮かべているのだから、どこからどう見ても怪しさ満点だろう。
冷静に考えてみると、俺を怖がるのも当然かもしれない。
村人たちからは、口々に疑惑の声が飛び交っている。
「怪しいやつは、自分のことを怪しくないって言うよな?」
「うむうむ、武器や防具を装備していないし、あり得ないことだ」
「森は魔獣もでるしな。たった一人で旅をするなんて無理ゲーだ」
どうしよう? 困った。村人ABCたちになんて説明したらいいかわからない。
力をなくした俺は、ぐでっと肩をすくめた。すると一人の少女が俺のほうに指差して声を上げた。
「ねぇ、あれってニャンガミ様じゃない?」
その言葉に反応した村人たちは、いっせいにジッと俺のほうを見つめた。いや、正確には俺なんか眼中になくて、猫のリンちゃんに首ったけだった。
なんだかやきもちを焼きたくなった俺は、改めてリンちゃんを抱きかかえなおした。ふわりとした体重はとても軽くて、見るからに体力を消耗しているようだった。
すると、わっと村人たちが近寄ってきた。そして勢いよく首を垂らしたかと思うと、地面に膝をついた。
「うお! なんだこいつら?」
村人たちはみんな土下座していた。俺とリンちゃんはまるで水戸黄門モード。
「ははー! ニャンガミ様が降臨なさった!」
村のリーダー的な若者が、そう言って拝んだ。
そしてペコペコと頭を下げてはおでこを地面に擦りつけている。いったい何をしているのだろうか? ニャンガミ様ってもしかしてリンちゃんのことなのだろうか? 俺はただ立ち尽くして呆然とその光景を見つめていると、一人の少女がすくっと立ち上がって、俺のほうに近づいてきた。面と向かうと尖らせていた口を開いた。
「ねぇ、抱かせてよ」
「え? ああ、猫ちゃんか……いいけどお腹が空いてて弱ってるんだ……」
「はぁ? 何やってんのよおじさん! 猫ちゃんが可哀想ではないかっ」
「お、おじさん……!?」
かしなさいと言わんばかりの顔を見せた少女は、サッと俺からリンちゃんを奪ったかと思うと、スリスリとリンちゃんの毛の流れにそって自分のほっぺたをこすりつけた。
「ちょっ、何すんだこの少女は?」
可愛いくせに強引だな。それにしても、やっぱりこの少女からしたら俺はおじさんなのか……とほほ、お兄さんって呼ばれるかと思っていたのに……ショックだ。
「ふぁわわわ、もふもふ♡」
少女はそう言って満面の笑みを浮かべた。
ツンデレかよこの少女は、か、可愛いじゃねぇか……。
リンちゃんはされるがままになでられつづけた。なんだかちょっと嫌そうな顔をしている。もっと優しくなでて欲しいみたいだ。わかるよその気持ち。
すると村人たちがぞくぞくと集まってきた。リーダーの若者が声を張り上げる。
「さぁ、村の者たちよ! ニャンガミ様とその使者に貢ぎ物を捧げよう」
「ほいさ! ほいさ!」
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