16 / 16
第二章 楽ちん国づくり
6 見てもいいのかな……
しおりを挟む白いベッドのうえで寝そべるアイリちゃん。
すやすやと目を閉じる顔は、まるで眠り姫のようだ。
綺麗な黒髪、雪のような白い肌、その長いまつ毛が、ピクピクと動いているのだが……。
──まったく起きる気配がないな。
しかし、黒い影が、ゆっくりと近づいていた。
ミツルだ。
彼は、ニヤッと笑うと、その手をアイリちゃんに伸ばしていく。
制服のスカートからのぞく、白い太ももに触れ、ゆっくりとなぞる。
その滑らかな動きは、どこで覚えたのだろう。
いやらしい手つきは、女の身体を知っているようだ。
まるで、蛇が獲物に狙いをつけたように、ゆっくりと動く。
ミツルは、さらにニヤッと笑うと、スカートをめくった。
アイリちゃんのスカートのなかの、白い下着が、チラッと見える。
そのときだった。
「なにやってるの? ミツル?」
アイリちゃんが目を覚まし、そう聞いた。
ミツルの手が止まったが、スカートの裾はつまんだまま、
「あ……いい? アイリ?」
と、逆に質問する。
「やめて……」
「なんだよ、いいじゃねえか、俺のことが好きなんだろ?」
「はあ?」
「好きなんだろ? だったらやらせろよ」
「ちょちょ、待って、ミツル……」
「またねぇよ……」
「ちょっ、んっ」
ミツルの手が伸びて、アイリちゃんの胸に触れる。
するとアイリちゃんは、シクシク、泣き出してしまった。
これには、流石にミツルも躊躇して、手が止まった。
「おいおい、なんで泣くんだよ、アイリ」
「ううっ、ミツルのことは好きだけど、友達としてだよ? ううう……」
「はあ? おいおい、俺たちは公認のカップルじゃないか?」
「……違うよ、みんなが言ってるだけで、私は他に好きな人がいるから……」
「誰だ?」
「……」
「誰なんだ? アイリ、答えろ!」
「……やだ」
ヒイロだな、とミツルは、重い声で聞いた。
──え? そんなバカな!?
僕は目を疑った。
見ていた動画が、とんでもない内容なこともあるが……。
──アイリちゃんが僕のことが好き?
僕は、もう一度、動画をじっくりと見つめた。
アイリちゃんは、否定も肯定もしないで、ただ、
「やだ、やだ、ミツルには言わない……」
と言うだけだった。
これには、女神も大笑い。
「おーほほほほ! これはいい! イケメンが振られるのって気持ちいわね」
「……女神、性格悪いっすね」
「あれ? ヒイロ、そんなこと言って、ちょっと嬉しそうじゃない?」
「そ、そんなことありません。それに、アイリちゃんの好きな人が僕って決まったわけじゃないですから……」
ふぅん、と女神は鼻を鳴らす。
腕を組んで、胸を寄せ、また話し始めた。
「でも、あの勇者くん、あきらめてないようね」
「え?」
「あらあら、無理矢理、女の子を……」
「わぁぁぁ!」
ミツルが、なんとアイリちゃんに抱きついているではないか!
僕は、宙に浮かぶ枠を手で触れて、消そうとした。
だが、そんなことしても無駄だ。そんなことは分かっている、分かっているけど、やっぱり見たくない!
「女神ぃ! もういい、消して、これ消して!」
「……あら、あの女の子、なかなか賢いわね」
「え?」
画面が急に光って、眩しくなった。
──光魔法 フラッシュライト
「目がぁぁぁ! 目がぁぁぁ!」
床で倒れるミツルが、そう叫んでいる。
どうやら、アイリちゃんが魔法を使って、ミツルをやっつけたらしい。
──ざまぁみろ、ミツル。
「な、なんなのよぉ……」
アイリちゃんは、すぐにベッドから飛び起きた。
倒れているミツルを、軽蔑した目で見ている。
すると、ドアが開き、一人の大きな男が入ってきた。
「あ、オオタくん!」
「どうしたの? アイリちゃん」
「ミツルが私を襲ってきたの……」
「? でも倒れているのはミツルだけど?」
「あ、これは私が撃退したの」
「そっか、まあ、わいが守ってやるから安心せい、アイリ」
「ありがとう、オオタくん、でも来るのが遅いよぉ、ばか」
「ごめん、飯食ってて」
「めし? ここはどこ?」
「ここは街だよ。森から見えていた塔、あれは展望台だった」
「へー、そうだったんだ……ってかお金は?」
「ああ、道具屋で、倒したゴブリンのツノを売った」
「オオタくんすごーい!」
わい、すごい! と言うオオタは、ダブルバイセップスをした。
そのポーズがおかしかったのか、アイリちゃんは、クスクスと笑う。
──あれ? アイリちゃんの好きな人って、オオタ?
女神は、僕の心が読めるのだろうか?
「わかんないわよぉ、女は演技が上手いから」
と、僕の顔色をうかがうように見つめてくる。
まあ、なんにしても、オオタがいるからアイリちゃんは大丈夫そうだ。
僕は、ホッと肩の力が抜けた。
でもなんでこんなに安心しているのか、自分でもわからない。
「ヒイロって、アイリちゃんのことが好きなのね~」
と女神がからかう。
僕は、ブンブンと首を振って否定した。
「違いますよぉ、僕なんかが好きになったら、アイリちゃんに迷惑です」
「……すっごいネガティブだね、逆に清々しいわ」
はい、と僕は答え、もう一度、画面を見つめた。
「ほら、いくわよ! ミツル」
「起きろー」
アイリちゃんとオオタに言われたミツルは、フラフラになりながらも立ち上がった。
「アイリ、その魔法はズルイぞ」
「はあ? 女の子を襲うバカに言われたくありませーん」
アイリちゃんに嫌われたのに、ミツルの顔はなぜか赤くなっている。
こいつ、どMか?
するとアイリちゃんは、ミツルに向かって、ベーと舌を出した。
──やっぱり、かわいい……。
と、僕は改めて思った。
0
お気に入りに追加
30
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(6件)
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
池作りとか、土から鉄を取り出して〜と男子の夢を凝縮しとる!!
こういう秘密基地造りみたいなの、嫌いな男子いないでしょ!?
でしょでしょ! ぼくのなつやすみ、みたいですわ笑
ラインから来ました(^^)これから読ませてもらいますね♪♪
尚このコメントは削除して構わないです(^^)/
ありがとうございます。
暇のときにでも、読んでくださいませ。
投票したよ〜
ミツルみたいな奴、意外と現実世界にいて草
……草生えない(-_-;)
𝕋𝕙𝕒𝕟𝕜 𝕪𝕠𝕦 ❤︎"
言葉の暴力は、許せません!
殴られるより、心が痛い( •̥ ˍ •̥ )
ミツルは、とうぶん牢屋で反省してもらいます<(`・ω・´)ゝビシッ!