ぼっちな土魔道士の楽ちん国づくり〜僕を追放した同級生が不法入国してきて草〜

花野りら

文字の大きさ
上 下
13 / 16
第二章 楽ちん国づくり

3  なんということでしょう!

しおりを挟む

「うふふ、ちょっと本気だしちゃったな」

 と僕は言いながら、額から流れる汗を手でぬぐった。
 ででーん! と完成したのは、

『 土の家 キューブ 』

 である。外壁の色は白っぽい灰色。
 それは四角な家で、玄関や窓もすべて、四角で統一されてある。
 ノームとガルルは、目を丸くして、ぽかんと口を開けていた。
 まあ、驚くのも無理はない。
 僕の土魔法で、このキューブをつくったからな。にゃはは!

「ヒイロ氏、入ってもいい?」

 ガルルが言って、入っていく。

「いや、もう入ってんじゃん、ガルル」

 僕がツッコミを入れると、キューブのなかから、

「涼しいでやんすぅー」

 と聞こえてきた。
 そうだろう、そうだろう、家の壁は、珪藻土を多めに含んでおいた。
 通気性がよく、家のなかは、常に換気されてある。
 さて、僕も入ろう。

「ただいまー」

 もうマイホーム気取りか? とノームが言う。
 うるさい、と返しておいた。
 
「ガルル、床はどう?」
「ありよりのあり! ツルツルしてて気持ちいい」
「大理石を使った」
「よく見つけたでやんすね?」
「うん、山の土のなかに、よく含まれていた。土魔法フィールドワークで調査すれば簡単にわかるよ。どこにどんな土の成分があるのかってね」
「すごっ」
「もっと驚いたのはさ、地下深くを調査すると、ふつうに石炭があった」
「なにそれ? 食べれるん?」
「いや、食べられないけど、ぶっちゃけ異世界では見つけちゃいけない資源かなって思った」
「なんで?」
「え? だって科学的になっちゃうじゃん。魔法の世界なのに」
「なったら、まずいでやんすか?」
「いや、知らんけど、ガソリンとかあると異世界のパワーバランス崩れそうだから、見つけなかったことにしとくね」
「おけまる」

 一方、ノームは机の上に置いてあった皿に、目を奪われていた。
 皿には、ノームの好きな泥団子がのっている。

「ヒイロぉぉ、これ、食べていい?」
「いいよ」

 ノームは、椅子に座って、もぐもぐ食べはじめた。
 机も、椅子も、皿も、すべて石を加工してつくってある。
 これに関しては、土魔法──ストーンプレイ石であそぼを利用した。
 僕に触れた石は、まるで紙のように扱える。
 どんな硬い岩石でも微粒子レベルで、頭のなかで描いた形に生成できた。
 例えるなら、3Dプリンター。
 それは、僕に筋肉的な力があるわけではなく、すべて土魔法のおかげ。
 でもふたつ、困ったことがあった。

 ──ひとつ、魔力は、枯渇することだ。無限ではない。

『 魔力 0 』

 魔法が使えなくなって、ステータスオープンすると、よくこの画面を見て……萎える。
 こうなったら僕は、グランドツリー、通称グラツリの元へ走った。
 体力はあるので、走るのは速い。
 しかし、もっと速いのは、ガルルの背中に乗せてもらうことだ。
 秒で、グラツリに着く。

 ──ふたつ、土のなかに虫がいることだ。大量にいるとキモイ。

 土のなかから欲しい成分だけふるい落とすとき、虫がうようよいるときがある。
 その光景は、地獄絵図、ぐにゃぐにゃとミミズが踊り狂う。
 まあ、こんな感じで、僕の家は完成したのであった。

「なにこれ? 夢ふわ~」

 ふとガルルを見ると、ベッドに寝っ転がっていた。
 もちろん、これも僕がつくったものだ。
 大きな一枚岩の上に、ポヨヨンとした粘土を置いてマットレスにした。
 粘土といってもベタつかないように、ちゃんと加工してある。
 サラッとした材質の石を薄く、敷いてあるのだ。
 よって、触っても濡れることも、汚れることもなく、ふかふかベッドで寝れるってわけ。

「おやすみ……」

 ガルルは、すっと目を閉じた。

「おい! 寝るな!」

 僕は大きな声でツッコミを入れた。
 まだ太陽は、カンカンと照っている。寝るにはまだ早いだろう。
 
「ヒイロ、ここはなに?」
 
 ノームがのぞいている部屋は、窓つきの狭い空間。

「ああ、そこはお風呂だよ。川の水をひいたら、入ろうと思ってさ」
「お風呂ってなに?」
「うーん、裸になってお湯に浸かることだよ」

 エッチ、とノームに言われた。その目は、ジトっとしている。
 
「え、別に、ノームとお風呂に入ろうとは思ってないよ」
「そうなの~あたしはいいけどね~」

 子どもと入っても、何も思わないからいいけど……と僕はつぶやいた。

「なんか言った?」
「いや、なんでも……」
「ふぅん、ってか、ヒイロってお腹空かないの? あたしは泥団子食べてればいいけど」
「そうだな、そろそろ食料を確保しないと」

 ふと横を見ると、ガルルが僕の足にすり寄ってくる。

「何、ガルル?」
「ヒイロ氏、拙者、魚が食べたいでやんす」
「え? 魚?」 
「食べてみたいんすよぉ」

 わかった、と答えた僕は微笑んだ。
 
 ──ふっふっふ……魚は僕も大好物さ!

 不敵な笑みを浮かべる僕を見て、ノームが質問してくる。

「ねぇ、ヒイロ、どうやって魚を捕まえるの?」
「ああ、僕にアイデアがある」
「……何?」

 それはお楽しみ、と言った僕は、家から出ていくのであった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果

kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。 自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。 魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

薩摩武士が異世界をぶっ壊す。

wakaba1890
ファンタジー
時は、慶長3年(1598年)場所は現在の韓国・四川。 泗川新城に出で立つ島津軍5000人対し、朝鮮軍20万の軍勢が城に攻め込む中、圧倒的な劣勢のはずの城の方から早々に飛び出て来た、とある武士によって戦線は前へと斬り拓かれていた。 その武士の名は、東元 義隆。薩摩最強にして最恐最狂の武士。 その戦場にて、彼は死ぬ寸前の敵将の奇妙な術にかかり、目が覚めるとそこは四川でも、薩摩でもない異世界であった。 この物語は、人間、魔族、エルフ、獣人などの多様な民族に加え、多種多様な強力なモンスターが住まい争いが絶えず様々な勢力が対立するその世界を薩摩武士がぶっ壊す話。 BookWalkernにて第一巻(20話くらいまで)配信中。 https://bookwalker.jp/de280153f7-e944-4889-999d-2f71c3431c48/

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

チートを極めた空間魔術師 ~空間魔法でチートライフ~

てばくん
ファンタジー
ひょんなことから神様の部屋へと呼び出された新海 勇人(しんかい はやと)。 そこで空間魔法のロマンに惹かれて雑魚職の空間魔術師となる。 転生間際に盗んだ神の本と、神からの経験値チートで魔力オバケになる。 そんな冴えない主人公のお話。 -お気に入り登録、感想お願いします!!全てモチベーションになります-

処理中です...