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第二章 楽ちん国づくり
3 なんということでしょう!
しおりを挟む「うふふ、ちょっと本気だしちゃったな」
と僕は言いながら、額から流れる汗を手でぬぐった。
ででーん! と完成したのは、
『 土の家 キューブ 』
である。外壁の色は白っぽい灰色。
それは四角な家で、玄関や窓もすべて、四角で統一されてある。
ノームとガルルは、目を丸くして、ぽかんと口を開けていた。
まあ、驚くのも無理はない。
僕の土魔法で、このキューブをつくったからな。にゃはは!
「ヒイロ氏、入ってもいい?」
ガルルが言って、入っていく。
「いや、もう入ってんじゃん、ガルル」
僕がツッコミを入れると、キューブのなかから、
「涼しいでやんすぅー」
と聞こえてきた。
そうだろう、そうだろう、家の壁は、珪藻土を多めに含んでおいた。
通気性がよく、家のなかは、常に換気されてある。
さて、僕も入ろう。
「ただいまー」
もうマイホーム気取りか? とノームが言う。
うるさい、と返しておいた。
「ガルル、床はどう?」
「ありよりのあり! ツルツルしてて気持ちいい」
「大理石を使った」
「よく見つけたでやんすね?」
「うん、山の土のなかに、よく含まれていた。土魔法フィールドワークで調査すれば簡単にわかるよ。どこにどんな土の成分があるのかってね」
「すごっ」
「もっと驚いたのはさ、地下深くを調査すると、ふつうに石炭があった」
「なにそれ? 食べれるん?」
「いや、食べられないけど、ぶっちゃけ異世界では見つけちゃいけない資源かなって思った」
「なんで?」
「え? だって科学的になっちゃうじゃん。魔法の世界なのに」
「なったら、まずいでやんすか?」
「いや、知らんけど、ガソリンとかあると異世界のパワーバランス崩れそうだから、見つけなかったことにしとくね」
「おけまる」
一方、ノームは机の上に置いてあった皿に、目を奪われていた。
皿には、ノームの好きな泥団子がのっている。
「ヒイロぉぉ、これ、食べていい?」
「いいよ」
ノームは、椅子に座って、もぐもぐ食べはじめた。
机も、椅子も、皿も、すべて石を加工してつくってある。
これに関しては、土魔法──ストーンプレイを利用した。
僕に触れた石は、まるで紙のように扱える。
どんな硬い岩石でも微粒子レベルで、頭のなかで描いた形に生成できた。
例えるなら、3Dプリンター。
それは、僕に筋肉的な力があるわけではなく、すべて土魔法のおかげ。
でもふたつ、困ったことがあった。
──ひとつ、魔力は、枯渇することだ。無限ではない。
『 魔力 0 』
魔法が使えなくなって、ステータスオープンすると、よくこの画面を見て……萎える。
こうなったら僕は、グランドツリー、通称グラツリの元へ走った。
体力はあるので、走るのは速い。
しかし、もっと速いのは、ガルルの背中に乗せてもらうことだ。
秒で、グラツリに着く。
──ふたつ、土のなかに虫がいることだ。大量にいるとキモイ。
土のなかから欲しい成分だけふるい落とすとき、虫がうようよいるときがある。
その光景は、地獄絵図、ぐにゃぐにゃとミミズが踊り狂う。
まあ、こんな感じで、僕の家は完成したのであった。
「なにこれ? 夢ふわ~」
ふとガルルを見ると、ベッドに寝っ転がっていた。
もちろん、これも僕がつくったものだ。
大きな一枚岩の上に、ポヨヨンとした粘土を置いてマットレスにした。
粘土といってもベタつかないように、ちゃんと加工してある。
サラッとした材質の石を薄く、敷いてあるのだ。
よって、触っても濡れることも、汚れることもなく、ふかふかベッドで寝れるってわけ。
「おやすみ……」
ガルルは、すっと目を閉じた。
「おい! 寝るな!」
僕は大きな声でツッコミを入れた。
まだ太陽は、カンカンと照っている。寝るにはまだ早いだろう。
「ヒイロ、ここはなに?」
ノームがのぞいている部屋は、窓つきの狭い空間。
「ああ、そこはお風呂だよ。川の水をひいたら、入ろうと思ってさ」
「お風呂ってなに?」
「うーん、裸になってお湯に浸かることだよ」
エッチ、とノームに言われた。その目は、ジトっとしている。
「え、別に、ノームとお風呂に入ろうとは思ってないよ」
「そうなの~あたしはいいけどね~」
子どもと入っても、何も思わないからいいけど……と僕はつぶやいた。
「なんか言った?」
「いや、なんでも……」
「ふぅん、ってか、ヒイロってお腹空かないの? あたしは泥団子食べてればいいけど」
「そうだな、そろそろ食料を確保しないと」
ふと横を見ると、ガルルが僕の足にすり寄ってくる。
「何、ガルル?」
「ヒイロ氏、拙者、魚が食べたいでやんす」
「え? 魚?」
「食べてみたいんすよぉ」
わかった、と答えた僕は微笑んだ。
──ふっふっふ……魚は僕も大好物さ!
不敵な笑みを浮かべる僕を見て、ノームが質問してくる。
「ねぇ、ヒイロ、どうやって魚を捕まえるの?」
「ああ、僕にアイデアがある」
「……何?」
それはお楽しみ、と言った僕は、家から出ていくのであった。
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