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第一章 異世界転移

6  土魔法で火を消そう!

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「さて、やるか……」

 まあ、ミツルたちは強いから、自分たちでなんとかするだろう。
 僕は土魔道士、自然を愛する異世界転移者さ!
 ゆえに自然破壊は、ほっとけない。
 とりあえず燃えている木々を、土魔法を使って地面に穴を開け、ガツガツ埋めていく。
 だが、僕の魔力は、まだまだ未熟なのだろう。
 燃え上がる木に、かなり近づかないと、地面に大きな穴を開けられない。
 ゴブリンを倒した落とし穴より、さらに深くないと、大きな木は埋まらないのだが……。

「あっちぃぃ! うわぁぁ!」

 炎が右手に襲いかかり、黒焦げになってしまった。
 痛い! この火傷は救急車を呼ぶレベル。
 しかし、燃え盛る炎は容赦なく、森を飲み込んでいく。
 
「くそー!」
 
 なんで僕がこんな目に?
 
 ──ミツルが追放したせいだ。あいつめ!
 
 そう怒ってみたが、燃える森は僕をあざ笑うかのように、轟々と揺れている。
 
「くそー! こうなったら一か八かだ!」
 
 土魔法──グランドシェイク
 
 僕は、激痛に耐えながら、両手を振った。
 小さな地震を作り出し、広範囲を更地にしていく。
 
「おおおおお! 人間ブルドーザーだな、これは!」

 燃えていた森が、面白いように綺麗になっていた。
 美しい木々は消えてしまったが、丸焼けになるよりはいいだろう。
 気づけば僕は、森のなかに前方後円墳のような地形をつくっていた。
 
「にゃはは! これしか思いつかなかったわ……」

 だが、夢中で魔法を使っているうちに……。

「あれ? 地震が起きない……」

 ピコンと音が鳴って、ステータスが浮きあがる。
 どうやら、魔力が『 0 』になったようだ。
 
「あちゃあ……」

 でもまあ、火は完全に消えたのでよかった。 

 ──ん?

 ドサッと地面に倒れた僕。
 どうやら火傷したことで、体力が削られていたのだろう。

『 体力 5……4……3.…… 』
 
「ぎゃあああ! 減ってる、減ってる……ああ、0になったら死ぬのかな……もっと、生きていたかったよ……くそ、くそぉぉぉ!」

 目から涙があふれ、グッと目を閉じる。
 その瞬間、ふとアイリちゃんの笑顔が頭に浮かんできた。

「アイリちゃんがいたら、回復してくれるだろうなぁ……」

 でも、もう後の祭り。
 ミツルのように燃える森を放置して、逃げていればよかったかも。
 
「だけど……森を救えるのは、土魔道士の僕にしかできないだろう」

 ──ん?

 ふと視線を感じ、倒れたまま、首だけ動かした。
 それすらも一苦労だ。右手の火傷に激痛が走る。

「痛い……痛いよぉ……」

 こちらを見ていたのは、森に住んでいた小動物、それに魔獣たち。
 ありがとう、と感謝しているのだろうか。
 その円な瞳で、僕のことを、じっと見つめている。
 
 ──皮肉なことだ。
 
 人から感謝されたことがない僕が、獣から感謝されるなんてな。
 言葉を話せない彼らに、僕は手を振っておく。
 
「ごめんね……燃やしちゃって……」

 獣たちは、ただじっとこちらを見続けていた。
 だが、一匹だけ僕のほうに近づいてくる獣がいる。
 とても大きな犬の魔獣だった。とっさに腕輪に触れた。

 ──ガルル 犬型魔獣 獰猛な性格 肉食
 
「ぼ、僕、食べられて死ぬのかよ……」

 やばい! と思い、立ちあがろうとするが、力が入らない。
 
「うぐぐぐっ! 犬に食べられるのだけは勘弁……うわぁぁぁ!」

 叫んだが、ガルルは逃げなかった。
 それどころか、僕の身体ごと咥えるではないか!

「無理無理無理! 食べないで! 僕は美味しくないからぁぁ!」

 泣きまくっている僕。
 だが、ガルルに咥えられているのに、痛みは感じない。 
 
「ん? 甘噛み?」

 すると、ひょいっとガルルは首を振って、僕を背中に乗せた。
 毛並みが柔らかくて、ぽむんと僕は寝そべる。 

「なにこれ!? 夢ふわぁぁ~」

 ガルルは、名前の通り、

「ガルル……」

 とうなると、歩き出していく。
 僕はどこに運ばれていくのだろう。
 もしかして、巣に持ち帰って……ぎゃぁ!
 子どもたちに、僕を食べさせるのかもしれない?
 
「ひぇぇぇぇ! 降ろせぇぇ!」

 僕の悲鳴が、青い空に向かって響いていた。
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