ピアニストの転生〜コンクールで優勝した美人女子大生はおじいちゃんの転生体でした〜

花野りら

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第3章 作曲編

1 ソフィアはセレブなお嬢様

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  その日は、毎日のように降り続いた雨がやみ、カリフォルニアの空は青々と広がりを見せていた。
  
  地中海性気候であるカリフォルニアは、一年を通じて温暖な気候だ。
  
  だが、冬は雨季にあたる。
  
  特に一月から二月にかけては、連日雨が振り続くことも多々あった。
  
  しかし、三月の下旬になってくると、春の陽気にささやかれてか、
  
「雨がやっとあがったなー」

  と、微笑むソフィアの可愛らしい姿があった。
  
  ソフィアは、プールのあるオープンテラスにいた。
  
  ほどよい直射日光を浴び、両手を広げながら伸びをしていた。
  
  それはまるで、従業員のホテルマンからいわせると、
  
「天使が舞い降りたようだ……」

  と、美しいソフィアに目が釘付けとなり、テーブルクロスを整える手を止めてしまうほどであった。
  
  ソフィアの格好は純白のレースワンピースを着ていた。
  
  細身の長い美脚が透けている。
  
  だが、肝心なところが透けないように中にペチコートを着ている。
  
  細ひもが肩にかけてあり、胸もとは大胆にも丸く膨らんだ谷間をみせている。
  
  大人っぽいペイズリーデザインのレースから美白色の肩や脇が丸見えだった。
  
  ソフィアは、テラスから出るとレストランへと入っていった。
  
  遅めの朝食ビュッフェを食べるつもりだ。
  
  彼女の座った席の対面には母親のテレサがいた。
  
  もうすでに深煎りカフェでお腹も心も満たそうとしていた。
  
  テレサは40代の女性で、ソフィアとは対照的にふくよかな体型だった。
  
  まさに、マダムといった熟女。
  
  格好はグレイのワンピースを着て、白のカーディガンを羽織っている。
  
  なんとも優雅なセレブ風景である。
  
  窓からのロケーションは、サンフランシスコ湾が久しぶりの晴天により青く輝く。
  
  遠方に赤きゴールデンブリッジ。
  
  湾の中には浮かぶ監獄島アルカトラズも望むことができた。
  
  そう、二人は、ソフィアがコンクールで優勝したお祝いに、高級ホテルへお泊まりに来ていたのだ。
  
  極上のスパやエステで骨のづいまで癒やされ、美味しい料理に舌鼓を打つためだ。
  
  さて、その経緯はこうだ。
  
  祖父のデヴィッドおじいちゃんが病没し、家族みな粛々と意気消沈していたなか、一番落ち込みの激しかったソフィアは、ピアノから離れ遊び呆けていた。
  
  しかし、突如として一念発起する。
  
  コンクールの本選出場を成し遂げたのだ。
  
  さらに見事に優勝してしまうものだから、
  
「このくらいの贅沢はしても良いよね」

  と、母親のテレサがソフィアを誘い、高級ホテルへと羽を伸ばしに来くることになったのだった。
  
  ソフィアは、母親の誘いをはじめは渋っていた。
  
  なぜなら、ミサオからデートに誘われたら必ずいくつもりで予定を開けて待っていたかったからだ。
  
  ミサオのことは、あのコンクールいらいメールのやりとりをしていた。
  
  メールきてるかな……。

  と、ソフィアはふいに夢心地になってしまう。
  
  そう、そうなのだ。
  
  どうしても、ふとした時に考えてしまう。
  
  ミサオの血管が浮き出る腕にお姫様抱っこされ、胸いっぱいに男の香りを吸い込んだ時の、あの女の疼きを……。
  
  ああ……。

  ソフィアはオムレツにナイフを入れたまま、にやにやと顔を緩ませる。
  
  ああ……。キス、よかったなあ……。

「ソフィア?」

  お姫様抱っこされちゃうなんて、たまんなかったなあ……。

「ソフィア!」

  んん?  
  
  ソフィアは母の声に我に返った。
  
「な、なに?  お母さん?」

「わたしエステ予約してあるから、もう部屋戻るわね」

「う、うん、わかった」

  薄ら笑いで取りつくろうソフィアは、母の後ろ姿が消えるのを確認すると、ポーチからスマートフォンを取り出した。
  
  が、すぐにため息をつく。
  
  どうやら、ミサオからのメールはないらしい。
  
  ソフィアはワッツアップの画面を見ながらため息をつく。
  
  自分からミサオに、
  
  ワッツアップ!  最近どう?

  と、メールを打ち込むが、すぐ消去してしまう。
  
  送信してしまえばいいものの、そこはソフィアも女である。
  
  男からのリードを待ってみるのも楽しみのひとつであろう。
  
  日本ではソーシャルメッセージアプリといえば、LINEが圧倒的なシェアを占めているが、国が変わればアプリも変わる。
  
  アメリカで圧倒的に使用されているメッセージアプリといえば、ワッツアップであった。
  
  アメリカでは業者が顧客に対する連絡を行うのに、メールや電話ではなくワッツアップを使うということもあり、全世界で10億人ユーザーを達成するなど、世界に向けて進出する勢いであった。
  
  現代ではメールといいながらも、簡単にいえばようは手紙である。
  
  昔は、遠くにいる人へ想いを届けるために手紙を書き、その手紙を運ぶ人がいるという、人力を必要としていたわけだが、現代ではもはや、人差し指ひとつで手紙が相手へ飛んでいくのだから不思議な世の中だ。
  
  だが、簡単に手紙が飛んでいくのなら、すぐ送ればいいとおもうが、そこは男の女の恋の駆け引きである。
  
  そう簡単にはいかない。
  
「はあ……。メールこないかな……」

  と、男からの手紙を待ち焦がれる女がここにいるわけだ。
  
  そして、その待ち焦がれるストレスの発散として、美味いものを食べてしまう女特有の方法がある。
  
「ええい、今は忘れて食べよう!」

  と、潔く心を切り替えるソフィアだった。
  
  もっとも、目の前にはふっくらと美味しそうなプレーンオムレツがあったからこそ男を忘れるのも簡単だった。
  
  ソフィアは丸い口を開けて頬張る。
  
  口の中で卵とバターが溶けあい、ちょうどよい塩加減が食欲をそそる。
  
  そこで、手を伸ばした先のバケットには、焼きたてまもないクロワッサンが盛ってあり、おもむろに口へ運ぶと、  

「カリカリ、もふもふだあ」
  
  ソフィアはクロワッサンを頬張りながら、満足そうな笑みを浮かべた。
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