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第二章 ローマ旅行で賢者に覚醒ですわ!
6 エピソード・アヤ
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「エッコミ~」
陽気なアヤの声が住宅地に響く。
イタリア語でただいまという意味ですわ、とハルカが説明する。
理音は辺りを見渡しながら、
「ここがアヤの家?」
といって首を傾ける。
すると家の中から、プレーゴ、という女性の声が響いた。
二人はアヤの後についていく。
「おじゃまします」と理音がいった。
すると横からハルカが、ペルメッソ……だよ、といった。
二人はもう一度声を合わせた。
「「ペルメッソ~」」
アヤの家は天井の高い建物で品の良いアパートメントだった。
出迎えてくれたのは、アヤの祖父母だった。
理音とハルカはアヤの祖父母とハグを交わした。
「アッコーモダーテヴィ」
ゆっくりしていってね、といってますわ、とハルカが通訳する。
祖父母は和かに笑っていた。
今日はここに泊まってもよいということらしい。優しそうな温和な祖父母だった。
早速、二人はアヤの部屋で荷物を解く。
「「ふぅ~」」
歩き疲れていた理音とハルカは、ほっと足を伸ばしてソファに沈んだ。
すると、アヤが紅茶を持ってきた。
聞きたいことが山ほどあった三人は、体を寄せ合って女子トークを始めた。
「まずはリオンがなぜ無職になっているかアヤ様に説明いたしますわ」
とハルカは今まで経緯を話し始めた。
アヤは、店長いきなりラブホなんて積極的! うわぁ、嫌な客……副店長ざまぁ、きゃははっ!
なんていって、喜怒哀楽を弾けさせながらハルカの話を聞いてくれた。
理音は恥ずかしそうに下を向くことしかできなかった。
「じゃあ、次はあたしの番ね」
とアヤは髪をかき上げて語り始めた。
アヤは服飾デザイナーの仕事をしていた。
生まれは日本だが、どうやらハーフらしい。
父親がイタリア人で母親が日本人という美形夫婦の間に生まれた子どもというわけだ。
両親の馴れ初めは、画家をしている父の絵画展に行った母を見た父は一瞬で一目惚れしたらしい。
父は母を猛烈にアプローチした。まぁ、簡単にいうとナンパだ。
だが、母は旅行者だ。日本に帰らなくてはならない。
とりあえず連絡先としてメアドを交換した。父は必死になって日本語の勉強を始めた。
母からいわせると拙い日本語が可愛かったらしい。メール最後の文面には、
『だいすき、あいしてる』
という文字があった。いつもそうだった。雨の日も風の日も。
そんなストレートな愛の言葉をくれる日本の男はいない。
そんなやりとりが半年ほど続いたある日、父は日本にやってきた。
母に会いたいという理由の他に、日本語を勉強するうちにだんだん日本の文化が好きになってきたのだ。
特に父が興味を持ったのは歌舞伎だった。
顔に奇抜な墨を塗り、着物と称される民族衣装に身を包み込む歌舞伎は、父にとってはアフリカの狩猟民族を初めて見た衝撃とよく似ていたそうだ。そうすると、画家である父の絵画に影響が顕著に現れ始めた。父の現代アートの絵画の中に和風テイストが混じりあって、なんとも言えない色彩感が溢れ出したのだ。展覧会の評価もうなぎ上りで高まった。それもこれも、全て母のおかげだと父は思っていた。
そして拙い日本語で父は母にプロポーズした。
その結果は……。
「私たちが生まれたってわけよ」
私たち? と疑問に思った理音がアヤの顔を覗いた。
語り終わったはずのアヤだったが、表情の裏には躊躇いがあった。
すると、ハルカが言葉を付け加えた。
「アヤ様にはお兄様もいらっしゃるのよね?」
アヤは頷くと、そうそう、バカなお兄ちゃんがね……と呟いた。
陽気なアヤの声が住宅地に響く。
イタリア語でただいまという意味ですわ、とハルカが説明する。
理音は辺りを見渡しながら、
「ここがアヤの家?」
といって首を傾ける。
すると家の中から、プレーゴ、という女性の声が響いた。
二人はアヤの後についていく。
「おじゃまします」と理音がいった。
すると横からハルカが、ペルメッソ……だよ、といった。
二人はもう一度声を合わせた。
「「ペルメッソ~」」
アヤの家は天井の高い建物で品の良いアパートメントだった。
出迎えてくれたのは、アヤの祖父母だった。
理音とハルカはアヤの祖父母とハグを交わした。
「アッコーモダーテヴィ」
ゆっくりしていってね、といってますわ、とハルカが通訳する。
祖父母は和かに笑っていた。
今日はここに泊まってもよいということらしい。優しそうな温和な祖父母だった。
早速、二人はアヤの部屋で荷物を解く。
「「ふぅ~」」
歩き疲れていた理音とハルカは、ほっと足を伸ばしてソファに沈んだ。
すると、アヤが紅茶を持ってきた。
聞きたいことが山ほどあった三人は、体を寄せ合って女子トークを始めた。
「まずはリオンがなぜ無職になっているかアヤ様に説明いたしますわ」
とハルカは今まで経緯を話し始めた。
アヤは、店長いきなりラブホなんて積極的! うわぁ、嫌な客……副店長ざまぁ、きゃははっ!
なんていって、喜怒哀楽を弾けさせながらハルカの話を聞いてくれた。
理音は恥ずかしそうに下を向くことしかできなかった。
「じゃあ、次はあたしの番ね」
とアヤは髪をかき上げて語り始めた。
アヤは服飾デザイナーの仕事をしていた。
生まれは日本だが、どうやらハーフらしい。
父親がイタリア人で母親が日本人という美形夫婦の間に生まれた子どもというわけだ。
両親の馴れ初めは、画家をしている父の絵画展に行った母を見た父は一瞬で一目惚れしたらしい。
父は母を猛烈にアプローチした。まぁ、簡単にいうとナンパだ。
だが、母は旅行者だ。日本に帰らなくてはならない。
とりあえず連絡先としてメアドを交換した。父は必死になって日本語の勉強を始めた。
母からいわせると拙い日本語が可愛かったらしい。メール最後の文面には、
『だいすき、あいしてる』
という文字があった。いつもそうだった。雨の日も風の日も。
そんなストレートな愛の言葉をくれる日本の男はいない。
そんなやりとりが半年ほど続いたある日、父は日本にやってきた。
母に会いたいという理由の他に、日本語を勉強するうちにだんだん日本の文化が好きになってきたのだ。
特に父が興味を持ったのは歌舞伎だった。
顔に奇抜な墨を塗り、着物と称される民族衣装に身を包み込む歌舞伎は、父にとってはアフリカの狩猟民族を初めて見た衝撃とよく似ていたそうだ。そうすると、画家である父の絵画に影響が顕著に現れ始めた。父の現代アートの絵画の中に和風テイストが混じりあって、なんとも言えない色彩感が溢れ出したのだ。展覧会の評価もうなぎ上りで高まった。それもこれも、全て母のおかげだと父は思っていた。
そして拙い日本語で父は母にプロポーズした。
その結果は……。
「私たちが生まれたってわけよ」
私たち? と疑問に思った理音がアヤの顔を覗いた。
語り終わったはずのアヤだったが、表情の裏には躊躇いがあった。
すると、ハルカが言葉を付け加えた。
「アヤ様にはお兄様もいらっしゃるのよね?」
アヤは頷くと、そうそう、バカなお兄ちゃんがね……と呟いた。
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