賢者の加護を受けた娘とコスプレお嬢様の恋と友情の物語

花野りら

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第二章 ローマ旅行で賢者に覚醒ですわ!

1 スカイハイ (歌詞つき)

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「いってきま~す!」
「それでは、ごきげんよう」

 空港のロビー。
 キャリーケースを転がす理音とハルカ。
 手を振る立花家の両親に向かって、二人は別れの挨拶をしていた。
 ハルカの荷物は意外と少ない。キャリーケースとポーチがあるのみだった。
 話を聞けば、ハルカはもう何度も色々な国を一人で旅行しているらしい。
 慣れたもので、韓国や台湾などのアジア圏なら、手ぶらで行くこともあるそうだ。
 必要な物は現地で調達したりレンタルする。
 そうやって体力を使わずに楽しく旅行するのが、ハルカ流のスタイルだった。
 もっとも、先立つお金がなきゃできない芸当だ。
 だが、ハルカはそんなにお金はかからないと断言した。
 なぜならハルカはグローバルに活躍するコスプレイヤー。
 海外にはそういうことを無料で用意してくれる仲間がいるとのこと。
 堅物そうなお嬢様キャラのハルカだが、実は社交的で面倒見が良く人当たりも良い。
 ハルカが主催となってオフ会を仕切ることもあるらしい。

 そんな仲間の輪に私が入れるのだろうか?
 
 人見知りの理音には、先が思いやられそうだった。
 二人は空港の長い通路を歩き、搭乗ゲートに向かう。
 その途中で手荷物検査を受ける。
 理音は、不安そうな顔をしながら列に並び、順番を待つ。
 やがて、検査官のおじさんに必要以上のボディチェックを余儀なくされた。
 
 うげぇ……。
 
 理音は口パクで、キモい、と表現した。
 そんな苦行が終わると、ハルカは理音の手を繋いだ。
 
「リオン! さぁ、旅へ出発よ! 二人なら?」

 そうハルカから尋ねられた理音の顔は、パッと花が咲いたように明るくなった。
 顔を見合わせた理音とハルカは、笑顔で声を張り上げる。
 
「「二人ならきっと上手くいく!」」

 すると、二人は歌を唄いながら搭乗ゲートを潜る。
 軽快なアップテンポの歌だった。
 
『スカイハイ リオン&ハルカ』

 ~♪
 
 スカイハイ それは空の旅
 
 スカイハイ それは流れる雲のように
 
 まだ見たこともない世界へ
 
 わたしたちを乗せた飛行機は離陸する
 
 大空を舞って
 
 でもフライトはちょっとドキドキしちゃう
 
 いまわたしはどこを飛んでるの?
 
 お食事は?
 
 肉か魚か チキンかビーフか 和食か洋食か
 
 どうしよう?
 
 ああん 困っちゃうなぁ
 
 人生は選択の連続よ
 
 さぁ 異世界を旅をして大人になりましょう
 
 そして素敵な女性になるのです
 
 運命の人にだって
 
 出会えるかもしれないわ!

 ええ!? 困っちゃうなぁ
 
 スカイハイ それは空の旅
 
 スカイハイ それは流れる雲のように
 
 ~♪

 二人を乗せた飛行機は、悠々たる大空の旅に出発した。
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