賢者の加護を受けた娘とコスプレお嬢様の恋と友情の物語

花野りら

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第一章 悪徳モンスターはざまぁしますわ!

8 ざまぁしますわ  (シリアス)

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 季節は巡り、桜の蕾が芽出る卒園式。
 ハルカは卒園生の代表として答辞を任されていた。
 簡単にいうと、ありがとうのスピーチをみんなの前で話さなければならない。
 司会進行役である副園長のバリトンボイスが響く。
 
「答辞、梅村春香さん」
「はい」
 
 ハルカは高らかに返事をすると、颯爽と歩いて壇上に上がった。
 マイクの前に立ってお辞儀をする。
 ゆっくりと顔を上げてから……。
 
 キリッ!
 
 全園生たちを見下ろす。
 その中にいる、悪口をいっていたちびっ子モンスターたちを睨む。

 さぁ、ざまぁしますわ!

 ハルカはまるで歌を唄うように答辞を述べた。
 

 本日はわたくしたちのために
 
 卒園式を開いていただき ありがとうございます

 来賓のみなさま 保護者のみなさま
 
 ご参列いただき ありがとうございます
 
 みなさまからの温かいお言葉 
 
 卒園生一同 胸にしみる思いです
 
 省みると 入園の当初は
 
 保護者の方と手を繋ぎ まだよちよち歩きだったわたくしたち
 
 しかし今ではしっかりと 自分の足で歩くことができます
 
 幼稚園で育んだ思い出 一つ一つがかけがえのない宝です
 
 特にわたくしの宝は 学習発表会です
 
 浦島太郎を演劇しました

 わたくしごとではございますが
 
 当日わたくしの両親はいませんでした

 代わりに祖父母が来てくれました
 
 そのことを指摘してくれる友達がいました
 
 わたくしは悲しくなって 胸が張り裂けそうになりました
 
 ですが両親がいないことは事実ですから 受け入れるしかありません
 
 強い心を持たないといけない そんなふうに友達から教えられました
 
 さて浦島太郎の劇中では 太郎は玉手箱を開けてしまい老人になって幕を閉じます
 
 しかしながら 御伽噺には続きがあります
 
 太郎は老人になったのち 鶴になって空高く飛び立ちます
 
 そして亀となった乙姫様と再会し 永遠に結ばれるのです
 
 決して開けてはいけない玉手箱には
 
 大切な人に会いたいが この世では会えない

 あの世でないと……。
 
 そういった思いが 込められていたのですね

 以上を持ちまして 卒園生を代表して 
 
 心からの感謝を申し上げ 答辞とさせていただきます

 本当にありがとうございました

 ハルカは深々とお辞儀をし、ゆっくりと顔を上げた。
 
 パチ、パチ、パチ……。

 雨のような拍手が響いた。
 だがじわじわと雨音が激しくなり、嵐のような拍手喝采が巻き起こった。
 遠くの壁際には祖父母の姿があった。泣きながら拍手をしている。
 と同時に全園児たちに目線が、ちびっ子モンスターたちを睨みつけていた。
 ちびっ子モンスターたちの体は、ガクブルに震え出した。
 ハルカにもちゃんと味方はいたのだ。
 彼らは味方だが、ハルカを助けると、

 今度は自分がいじめの標的にされてしまうのではないか?

 という疑惑が邪魔をして、ハルカを助けることができなかったのだ。

 時に集団心理は残酷になる。

 それからというもの。
 ちびっ子モンスターたちは、保護者や先生たちに目をつけられた。
 これからの行動を徹底的にマークされたのだ。
 やつらの小学校生活は、生きた心地がしないだろう。

 ざまぁですわ……。

 案の定、ちびっ子モンスターたちは、ずっとみんなから白い目で見られた。
 やつらはエスカレーター式で私立小学校へ入学する。
 あだ名がついていた。

『いじめっこ』と。
 
 卒園したハルカの入学先は地元の公立小学校にしていた。
 エスカレーター式の私立学校にグッパイしたのだ。
 やつらとは、二度と会うこともないだろう。
 そしてハルカはピカピカの一年生になった。
 
 桜咲く入学式。
 小学校で理音と再会を果たすハルカ。
 二人は抱きあって喜びを分かちあうのだった。
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