きっと彼女はこの星にいる

花野りら

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第三章 人類は忘却と虚構で成り立っていることを知る

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 夏は暑い。
 そんなこと、わかりきったことだ。一億年前に人類が誕生してからというもの、季節に関しては敏感に反応している。狩猟、農耕、建設などなど、人類があらゆる虚構を作り出すためには、太陽の動きは欠かせない智慧であり、神との交信手段でもあった。

 しかし、現代の俺たち人類、いや、地球に生息するすべての生物にとってなくてはならない太陽だが、最近は明らかに俺たちを殺しにかかっている。そんな気がするくらい、夏は暑くて溶けそうだ。
 そのような持論をあかねちゃんに話しかけていると、こう返してきた。

「和泉、貴様は温暖化を食い止める手段として、一番効果的なことは何か、知っているか?」
「一番? そうだな、やはり化石燃料を使用することが温暖化の原因だからな。よってエコロジーな再生エネルギーを使うようにシフトしていくことじゃないかな?」
「うむ、それもある。だが一番効果的なことはそれじゃない」
「なんだ」
「人類が地球から消えることだ」
「おい! 人類が滅亡したら意味ないだろっ」
「そうか? 別に地球にこだわる必要もないと思うが」
「発想がダイナミックすぎてついていけないんだが」
「きゃはは、それにしてもあちぃなぁ! 太陽のバカぁ!」
「ヤバイやつだ……あかねちゃんから離れよう」
「はぁ? 今日は私と探偵ごっこするんだろ? 離れんわっ」
「うっ」

 あかねちゃんは、暑い暑いと言いながら俺に寄り添って歩く。
 もうちょっと離れてほしいが、もういいや。職質されたら友達の妹だと言って乗り切ろう。
 
 そんな俺たちは一旦、事務所に戻っていた。
 というのも、蓮水はすみず小学校をネットで検索をかけてみたところ、車でないといけない距離だったのだ。よって、俺たちは車を取りいくついでに、事務所に立ち寄っていたわけだ。

 事務所に戻る道すがら、スマホを操作する。
 歩きスマホはダメだが、まぁ、大目に見てほしい。通行人の往来も少ない。あかねちゃんは顔を近づけてスマホを覗き込んでくる。そのときあかねちゃんの胸が俺の腕に当たっているではないか。だが、全然弾力性が乏しいから生理現象的には、ぴくりとも何の反応も示さなくてよかった。いや、いいのか?

 あかねちゃんに触れても特に気にしない。
 もう、あかねちゃんは俺に懐いているから、触っても警察に訴えることはしないだろうと踏んでいたからだ。

 なぜなら、あかねちゃんは男の子っぽくて俺と馬があう。
 話す言葉や考えかたなどが似ていたのだ。相手は美少女なだけに、こんなことってあるのかよ? 今更になって別の意味で興奮を覚える。もっと本音を言うと、年齢関係なく友達が出来たみたいで嬉しい。大人になってできた仲間ほど、かけがえのないものはない。
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