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第一部 春
14 クローバーの栞
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「なあ、シエルのやつパルテールに入学したんだな」
隣にいたロックがわたしに話かけてくる。
まだいたの? 暇人なのかしら。
「そうね、まったく何を考えているのかしら……フーマ教皇の困った顔が目に浮かぶわ」
「だな……でも、シエルの気持ち、なんとなくわかるぜ」
「宗教より普通科にしたかったんでしょ?」
「違うぜ、自分のおっぱいに手をあてて考えろ、マリ」
「え?」
素直にわたしはロックに言われたとおり、両手を胸に当てた。でも、特に思い当たることはなにもない。ただ、なんとなく、むにゅっと胸の発育を実感したくらいだ。っていうか、ロック。なにエロいことさせてるの、わたしにっ!
「ちょっとぉ……ロックのバカっ」
「わはは」
安っぽい笑みを浮かべるロックのお腹を殴るけど、鍛えられた腹筋によって全然ダメージを与えられない。逆に弾き返されてしまう。ううう、自分の攻撃力の低さに絶望しちゃう。
というか……わたしはシエルがなぜパルテール学園に入学したのか知っている。それは宗教学校に入学すれば、自分がフーマ教皇の息子だということがバレると当然のように目立つ。孤独を好む猫みたいな性格のシエルにとって、人から常に監視されているなんて耐えられない。だったら、全然宗教とは関係ない普通の学校でのんびり過ごしたいというのが理由だった。でもフーマ教皇は許すわけもなく、まったく情けない、と言ってシエルを卑下する。まあ、簡単に言ってしまえば親子喧嘩ね。そんな、シエルとフーマ教皇とのあいだには、その他にも闇を抱えているけど、いまは割愛して、物語をすすめよう。
おや? 天然ゆるふわ女子のルナのおかげで、シエルは前向きになれたみたい。二人はがんばって草をむしって、いない。ん? 何かを探しているように見える。
「あ! あったよ、四つ葉のクローバー」
「えっ? すごい……」
やったね、なんて喜ぶルナはクローバを手に持って陽気に飛び跳ねた。それを見つめるシエルは悔しそうに地面を殴っている。どっちが先に四つ葉のクローバーを発見できるか勝負していた。そんなシナリオだった。高校生にもなって子どものような遊びをする二人のことを、わたしとロックは微笑みながら眺めていた。
二人は仲良くなったみたい。お互いの自己紹介をはじめた。
「あなた名前は?」
「シエル……シエル・デトワール」
「シエルくん。あたしは高等部三年のルナ・リュミエール。ルナでいいよ」
「……ルナ」
「じゃあ、シエルくんと会った記念にこのクローバーをあげるよ」
「え?」
ルナはにっこり笑うと、指先でつまんでいた四つ葉をシエルのまえに差しだした。
「ありがとう」
照れるシエルは頬を赤く染めると、四つ葉を受けとった。ジャケットの内側から本を取りだす。頁をペラペラと開くと、あ、この頁だとばかりに四つ葉を挟んで本を閉じた。栞にするのだろう。
二人のあいだにロマンチックな甘酸っぱい雰囲気がただよう。咲きほこる花壇の花々は風に揺れ、なおいっそう色彩を鮮やかにさせていた。
隣にいたロックがわたしに話かけてくる。
まだいたの? 暇人なのかしら。
「そうね、まったく何を考えているのかしら……フーマ教皇の困った顔が目に浮かぶわ」
「だな……でも、シエルの気持ち、なんとなくわかるぜ」
「宗教より普通科にしたかったんでしょ?」
「違うぜ、自分のおっぱいに手をあてて考えろ、マリ」
「え?」
素直にわたしはロックに言われたとおり、両手を胸に当てた。でも、特に思い当たることはなにもない。ただ、なんとなく、むにゅっと胸の発育を実感したくらいだ。っていうか、ロック。なにエロいことさせてるの、わたしにっ!
「ちょっとぉ……ロックのバカっ」
「わはは」
安っぽい笑みを浮かべるロックのお腹を殴るけど、鍛えられた腹筋によって全然ダメージを与えられない。逆に弾き返されてしまう。ううう、自分の攻撃力の低さに絶望しちゃう。
というか……わたしはシエルがなぜパルテール学園に入学したのか知っている。それは宗教学校に入学すれば、自分がフーマ教皇の息子だということがバレると当然のように目立つ。孤独を好む猫みたいな性格のシエルにとって、人から常に監視されているなんて耐えられない。だったら、全然宗教とは関係ない普通の学校でのんびり過ごしたいというのが理由だった。でもフーマ教皇は許すわけもなく、まったく情けない、と言ってシエルを卑下する。まあ、簡単に言ってしまえば親子喧嘩ね。そんな、シエルとフーマ教皇とのあいだには、その他にも闇を抱えているけど、いまは割愛して、物語をすすめよう。
おや? 天然ゆるふわ女子のルナのおかげで、シエルは前向きになれたみたい。二人はがんばって草をむしって、いない。ん? 何かを探しているように見える。
「あ! あったよ、四つ葉のクローバー」
「えっ? すごい……」
やったね、なんて喜ぶルナはクローバを手に持って陽気に飛び跳ねた。それを見つめるシエルは悔しそうに地面を殴っている。どっちが先に四つ葉のクローバーを発見できるか勝負していた。そんなシナリオだった。高校生にもなって子どものような遊びをする二人のことを、わたしとロックは微笑みながら眺めていた。
二人は仲良くなったみたい。お互いの自己紹介をはじめた。
「あなた名前は?」
「シエル……シエル・デトワール」
「シエルくん。あたしは高等部三年のルナ・リュミエール。ルナでいいよ」
「……ルナ」
「じゃあ、シエルくんと会った記念にこのクローバーをあげるよ」
「え?」
ルナはにっこり笑うと、指先でつまんでいた四つ葉をシエルのまえに差しだした。
「ありがとう」
照れるシエルは頬を赤く染めると、四つ葉を受けとった。ジャケットの内側から本を取りだす。頁をペラペラと開くと、あ、この頁だとばかりに四つ葉を挟んで本を閉じた。栞にするのだろう。
二人のあいだにロマンチックな甘酸っぱい雰囲気がただよう。咲きほこる花壇の花々は風に揺れ、なおいっそう色彩を鮮やかにさせていた。
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