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第一部 春

1 イケメン最高ぉぉぉ!

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 わたしは日本の女子高生、高嶺真理絵、一六歳だった。
 どうやってこの乙女ゲームに入ったのかわからない。でも、わたしは高嶺真理絵のときにパル学の公式ファンブックを読破していたので、大団円のハッピーエンドがあることを知っている。
  
 正確に言うと、イケメン攻略対象者の誰とも結ばれないノーマルEDエンディング。わたしはまだ恋をしたことがないので、まずはイケメンたちにチヤホヤされて、逆ハーレムの状態を味わってから、わ~いって感じでノーマルEDを迎えようと思っていた。だって、恋って非論理的な行動が多いから大変そうなんだもん。

 そんなわたしは、中学、高校と男子から告白されたこともあった。でも、まともに話したこともないのに付き合ってくださいなんて告白されても、まったく道筋が立っていないから、もちろんお断り。友達に相談したら、付き合ってから好きになればいいなんて意味不明なことを言うけど、わたしにはそんな不条理な辻褄なんて合わせることができない。
 
 不器用なのかな、わたし?
 
 つまり、高嶺真理絵だったころのわたしは、論理的思考を好むタイプだった。男子からは、高嶺の花だと言われていたけれど、いい意味とは思っていない。わたしは普通に男子と話したりデートしたりしたいだけ。それなのに、男子たちはいきなり告白してくる。まったく、非論理的なんだから嫌になっちゃう。
 
 そしてわたしは、まずは乙女ゲームで恋のシュミレーションをすればいいのだという結論にいたった。

 敵を知り己を知れば百戦あやうからず。

 まずは公式ファンブックを読破した。
 シナリオはもちろんのこと、攻略対象者の嗜好から好感度アップする最善のセリフ選択チャート、さらには分岐ルートまでの情報などを熟知した。そのうえでパル学をプレイしようと考えていて、コンプリートする気まんまん。乙女ゲーの世界にどっぷりと沼のようにハマるつもりだった。
 
 パル学はとても人気のあるゲームだった。
 キャラデザインも最高。
 声優もみんなイケボで文句なし。
 うふふ、ゲームするまえからニヤニヤが止まらなかったのを思い出す……じゅるり、いやん、ヨダレが……というか、マジでそれくらい攻略対象者のイケメンたちがたまんない。メインはこの三人だった。

 優しいキラキラ王子。

 ソレイユ・フルール。

 爽やかでイケメンで謙虚なの、もうたまんない……ずっと見つめていられる。
 
 強くてかっこいい俺様騎士。

 ロック・コンステラ。

 あの鍛えられたボディがすごい、わたしを守って……っていうかお姫様抱っこしてほしい。
 
 かわいい弟みたいな男子。

 シエル・デトワール。

 男なのにかわいいなんてズルい……んもう、わたしに甘えていいよ。
 
 ひゅう! イケメン最高ぉぉぉ!
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