目指すは正義のコントロール! 〜命がけで魔法犯罪を取り締まる中学生活、始まりました〜

神所いぶき

文字の大きさ
16 / 24
第2章 入学初日からハードすぎる!

15.穏やかなひととき

しおりを挟む
§

 二時間目の授業が終わる頃には正午を過ぎていた。小学生の時は四十五分ごとに授業が区切られていたけど、MCCアカデミーは九十分ごとに授業が区切られている。だから、一つの授業がめっちゃ長く感じるなあ。
「お疲れさんッ! 今日の授業は午前中だけだッ! 今から寮で歓迎会があるから向かうといいッ! 美味い食事も用意されているぞッ!」
 設置型魔法学の授業を終えてへとへとになった私たちが教室に戻ると、トガラム先生がそう言い放った。

 校舎の東側に、小さなホテルのような見た目の建物がある。それが寮だ。そして、これから私たちシルティアの四人が寝泊まりする場所になる。

 中に入ると、長い机と沢山の椅子が目に飛び込んできた。大きな窓からは日の光が差し込んでいて、明るくて広いホールだ。
「すごーい! 美味しそうな料理が沢山並んでる!」
 唐揚げに、ハンバーグに、エビフライに、お寿司に……。長い机の上には、とにかく沢山のごちそうが並んでいた。
「やあ。お疲れ。初めての授業は大変だったでしょ?」
 ホールの奥にはエプロン姿のレンさんが居て、私たちの姿を見るとそう声をかけてくれた。手には、フライドポテトが載ったお皿を持っている。
「もしかしてこの料理、レンどのが作ったのでござるか?」
「もちろん全部作ったよ! ……と、自慢したいところだけど、俺が作ったのはほんの一部だけだ。他は調理場のシェフが用意してくれたものだよ」
「一部だけでもすごいのです。チトセは、料理が得意ではないのでうらやましいのです……」
 入学試験で、チトセちゃんといっしょにカレーを作った時を思い出してしまった。あの時は質問攻めされて大変だったなあ。でも、楽しかった。
「得手不得手があるのは当たり前だから、落ち込まなくてもいいと思うよ。でも、最低限の料理は作れた方がいいかも。食料調達まで含むサバイバル的な『ミッション』が飛び込んでくることもあるし……」
 お皿を机に置きながら、レンさんがそう言った。
「ミッション、って何ですか?」
「ああ。丁度今から説明するところだった。はいこれ」
 レンさんは机の片隅にある、小さな物体を私たちに手渡してきた。これは、どう見ても小型のスマホだ。
「そのスマホは、MCCアカデミーの生徒に支給されるものだよ。生徒間同士で連絡を取り合ったりできるし、簡単な調べものもできたりする。あと、ちょっとした魔法図鑑なんかも閲覧できるね」
「ほう。便利なのです」
 魔法図鑑という言葉を聞いた瞬間、チトセちゃんの目が輝いた気がする。チトセちゃんは勉強が好きだから、きっと図鑑が大好きなんだろうなあ。
「あと、ミッションが発令されるとそのスマホに通知が来る。ミッションってのは、要は任務のこと。モンスターの討伐だったり、魔法を悪用する犯罪者の捕縛だったり、魔法に関する災害の被災者の救助に向かったり……。そんな感じのミッションを校長が発令することがあるんだよ」
「……正規のコントロールと同じ制度、でござる」
「そうだね。ウィガルくんの言う通り、これは正規のコントロールと同じ制度だ。上官が発令したミッションをこなすのが、コントロールの仕事だからね。学生だけど、もう俺たちはコントロールの一員。そう思って、気を引き締めて学んでいってね」
 ミッション、かあ。多分、厳しいものなんだろうなあ。でも、ワクワクする。レンさんの話を聞いた感じだと、誰かの役に立つものばかりだもん。正義の魔法使いになるために、きっちりこなしていこう!
「まあ、入学したばかりの君たちにすぐミッションが発令されることはないと思うけど……。でも、いつミッションが発令されてもいいように、常に準備は怠らないようにね」
「分かりました! 備えあればゆうれいなし、って言いますもんね!」
「備えあれば憂いなし、だぞ。幽霊なんているわけねえだろ」
「うっ……」
 カヤトくんに突っ込まれてしまった。一文字違いだし、ほぼ合っているようなものじゃん! ……合っているようなもの、だよね?
 と、とにかく、いつミッションが発令されてもいいように準備は怠らないようにしよう!
「ちなみに、俺以外の三年生と二年生は、ミッションが発令されていて学校を離れているよ。俺以外の先輩の姿が見えなくて、みんな不思議に思っていたんじゃないかい?」
「言われてみれば確かに!」
 私、まだレンさん以外の先輩の姿を見ていない! 確か、三年生が八人で二年生が四人だったはずだから……レンさん以外に十一人の先輩がいるわけかあ。
「実は俺もミッションの途中だったんだけど、一年生の君たちにあれこれ説明してほしいって校長から頼まれて一時的に学校に戻ってきている状態なんだ。だけどミッションを再開するために、夕方には学校を離れてフティアスのみんなと合流するよ」
「そうなんですね!」
「うん。だからしばらく二年生と三年生は不在になるから、留守はみんなに任せたよ」
「了解なのです」
「よし。それじゃ、長話はここで終了。みんな、お腹減ってるでしょ? ご飯にしよう」
「わーい!」
 レンさんに促され、私たちは席についた。そして、みんなで「いただきます」と言った後に食事を始めた。
「んっ! このハンバーグ、ジューシーでおいしー!」
「あっ。それ俺が作ったやつ」
「ウソおっ!? レンさん、料理上手!」
 噛めば噛むほど肉汁があふれ出て、うま味が口いっぱいに広がる! 高級なレストランで出されても違和感がないほど美味しい!
「ん。やっぱサーモンは美味いな」
 隣に座るカヤトくんは、お寿司ばかりを食べていた。
「カヤトくんはお寿司が好きなの?」
「まあな。施設だと、滅多に食えねえもんだったし」
 そうか。五年前に、レッドフェイスのせいでカヤトくんは家族を失った。それからはきっと、施設で育ったんだ。
 私はお父さんを失ったけど、お母さんが居たからお家で暮らすことができた。だけど、カヤトくんはそうじゃない。入学試験が始まったばかりの時、カヤトくんが一人で何でもしようとしていたのは、それも関係していたのかも。
「……辛気臭い顔すんな。同じ境遇のやつが沢山いて、施設暮らしもそう悪いもんじゃなかったぜ」
「ご、ごめん。私、考えていることが顔に出やすいね……」
「まったくだ。あれこれ考えずに、いつもみたいなマヌケ面で食いまくれ。その方がヒナらしい」
「マヌケ面!? ひっどーい!」
 心配して損した! カヤトくんなんて知らない!
 こうなったらやけ食いしてやる!
「ふふ。エビフライは正義なのです」
 チトセちゃんの方を見ると、エビフライをひたすら食べていた。どうやら、エビフライが好物みたい。
「んむ。味が染みていて最高でござる」
 ウィガルくんは、ぶり大根を美味しそうに食べている。こうして見ていると、みんなの好みが分かって面白いなあ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

あだ名が242個ある男(実はこれ実話なんですよ25)

tomoharu
児童書・童話
え?こんな話絶対ありえない!作り話でしょと思うような話からあるある話まで幅広い範囲で物語を考えました!ぜひ読んでみてください!数年後には大ヒット間違いなし!! 作品情報【伝説の物語(都道府県問題)】【伝説の話題(あだ名とコミュニケーションアプリ)】【マーライオン】【愛学両道】【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】【トモレオ突破椿】など ・【やりすぎヒーロー伝説&ドリームストーリー】とは、その話はさすがに言いすぎでしょと言われているほぼ実話ストーリーです。 小さい頃から今まで主人公である【紘】はどのような体験をしたのかがわかります。ぜひよんでくださいね! ・【トモレオ突破椿】は、公務員試験合格なおかつ様々な問題を解決させる話です。 頭の悪かった人でも公務員になれることを証明させる話でもあるので、ぜひ読んでみてください! 特別記念として実話を元に作った【呪われし◯◯シリーズ】も公開します! トランプ男と呼ばれている切札勝が、トランプゲームに例えて次々と問題を解決していく【トランプ男】シリーズも大人気! 人気者になるために、ウソばかりついて周りの人を誘導し、すべて自分のものにしようとするウソヒコをガチヒコが止める【嘘つきは、嘘治の始まり】というホラーサスペンスミステリー小説

鯨の国のヒーロ王子 ―海を救った49歳の物語―

谷川 雅
児童書・童話
かつて「鯨の国」は、海の恵みを余すことなく活かし、王国一の繁栄を誇っていた。 だが時代の流れとともに捕鯨は衰退し、国は衰え、人々は去り……。 49歳のヒーロ王子はただ一人、未来を守るために立ち上がる。 魚が消えた世界で、彼の声は世界を変え、やがて「海を救った英雄」と呼ばれることになる。 ――これは「正しいことを信じ抜けば、必ず報われる」ことを伝える、勇気と希望の物語。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

処理中です...