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第1章 入学試験は命がけ!?
5.弱点と耐性
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「はぁ、はぁ……、言っただろ。オレ一人で、どんな敵も倒せるって……」
肩で息をしながら、カヤトくんはそう言った。とても苦しそう。
「ふむ。確かに、カヤトさんのウォプロドはすごかったのです。けど、短時間で魔法を続けて使い過ぎなのですよ。あまり無理をすると、ロストになるのです」
チトセちゃんはとても冷静な声で、カヤトくんにそう言い放った。
ロスト。それはさっき、レンさんと話した時に出てきた言葉だ。
短時間で魔法を使いすぎると吐き気やめまいが生じたり、最悪、一時的に意識を失う……。それをロストって言うんだよね。
「そ、それに、ケガをしているでござる。オイラが回復魔法をかけるでござるよ」
カヤトくんの服の一部が破れていて、あらわになった右腕から血が流れている。ストラビの攻撃を完全によけることはできなかったみたい。
「触るな!」
ウィガルくんは傷をいやす回復魔法をかけようとしたみたいで、カヤトくんに手を伸ばした。だけど、カヤトくんはその手を払いのけた! ウィガルくんは一瞬だけぽかんとした表情を浮かべた後、涙目になる。
「ちょっと! いい加減にしなよカヤトくん! 何で何もかも一人でやろうとするの! みんなで協力すればもっと楽に……」
「うるせえ! なれ合いがしたいならお前らだけでやってろ! オレは一人で試験を受ける!」
そう言い残し、カヤトくんはまた私たちを置いて一人で森の奥に走っていった! ふらついているくせに、足が速い!? 何なのあいつ!
「あ、あいつやっぱり悪だ! 悪の魔法使いだよ!! ウィガルくん、手は大丈夫!?」
「お、オイラは大丈夫でござる……」
そうは言うけど、ウィガルくんは体をぷるぷるとふるわせて涙をこらえていた。
そりゃそうだよね。親切で回復しようとした相手に、手をはたき落されるなんてショックを受けて当然だよ。
「はあ。仕方ないのです。こうなったらもう自己責任なのですよ」
「自己責任?」
「はいなのです。カヤトさんがどうしても一人で試験を受けたいというのなら、チトセたちにはもう止められないのですよ。その結果、彼がモンスターにやられたとしても自己責任なのです」
カヤトくんがモンスターにやられたとしても自己責任、か。
確かに、協力するのをイヤがって一人で行動するあいつが悪い。それは間違いない。チトセちゃんの言葉は間違っていないよ。
「……ねえ、チトセちゃん。カヤトくんは、無事に一人で試験をクリアできると思う?」
「はっきり言いますが、無理だと思うのです。私たちが倒さなければならない『ディアラグス』というモンスターは、さっきのストラビと比べ物にならないほど強いはずなので。それに、彼とディアラグスは相性が悪すぎるのですよ」
「相性が悪い? どういうことなの?」
「……弱点と耐性、でござるな」
ウィガルくんが、涙声でそう呟いた。弱点と耐性って、何だろう。
「魔法に属性があるように、モンスターにも属性があるのですよ。さっきのストラビは、火属性のモンスターなのです。つまり、水属性の魔法が弱点で、風属性の魔法はあまり効かない――耐性があるということになるのですよ」
「ああ。だからさっきのモンスターにカヤトくんの水属性の魔法がよく効いていたってこと?」
「その通りなのです。だけど、ディアラグスは地と風の属性をあわせ持つのですよ」
「えっ!? 属性が二つあるなんてそんなの卑怯じゃない!? えっと、火は風に強くて水は火に強い。風は地に強くて地は水に強いわけだから……」
ダメだ! 頭の中がごちゃごちゃしてきた! つまり、どういうこと!?
「つまり、ディアラグスは地属性と水属性の魔法に耐性があるのです。そして、弱点は火属性……つまり、ダメージを与えやすいのはヒナコさんの魔法だけということになるのですよ」
「えぇー!? 水属性の魔法が効きづらいなら、カヤトくんやばいじゃん!」
「はい。やばいのです。もしディアラグスに一人で戦いを挑んでしまったら、間違いなくやられてしまうかと」
あわわわわ! 思っていた以上にやばい状況だった!
「でも、チトセたちが三人で戦えば勝ち目はあるのです。チトセが防御に専念して、ウィガルさんが回復、そしてヒナコさんが攻撃に集中すれば倒せる可能性はあるかと」
「……それだ! カヤトくんより先に私たちがディアラグスを見つけて、倒せばいいんだよ! そうすればカヤトくんはディアラグスにやられないし、試験もクリアできる!」
本当はカヤトくんにも協力してもらいたいけど、あの様子じゃ無理そうだ。なら、私たちが協力して先に倒すしかない!
「で、でも、オイラたち三人で本当に倒せるでござるか……?」
「やるしかないよ! あいつはやなやつだけど、それでも死なせたくない! ひどいことをしたし、ウィガルくんはあいつを助けるのはイヤかもしれないけど……」
「イヤではないでござるよ! ……オイラも、助けられる命は助けたい。どんな相手であっても、そう思うでござる」
目元にたまった涙をぬぐいながら、ウィガルくんはそう言った。
「チトセも反対する理由はないのですよ。試験に合格するために、ディアラグスと戦うのは避けられないこと。カヤトさんより先に見つけ出し、倒すという条件がついただけなのです」
そう言った後、チトセちゃんが少しほほえむ。
……ずっと真顔だったチトセちゃんが笑うと、破壊力がすごいなあ! かわいい! ……なんて、考えてる場合じゃないか。
「二人ともありがとう! 私たちでディアラグスを倒して、一緒にMCCアカデミーに入学しようね!」
私がそう叫ぶと、二人はこくりとうなずいた。
さあ、行動開始だ! みんなで生き残って、試験をクリアするんだ! 絶対に!
肩で息をしながら、カヤトくんはそう言った。とても苦しそう。
「ふむ。確かに、カヤトさんのウォプロドはすごかったのです。けど、短時間で魔法を続けて使い過ぎなのですよ。あまり無理をすると、ロストになるのです」
チトセちゃんはとても冷静な声で、カヤトくんにそう言い放った。
ロスト。それはさっき、レンさんと話した時に出てきた言葉だ。
短時間で魔法を使いすぎると吐き気やめまいが生じたり、最悪、一時的に意識を失う……。それをロストって言うんだよね。
「そ、それに、ケガをしているでござる。オイラが回復魔法をかけるでござるよ」
カヤトくんの服の一部が破れていて、あらわになった右腕から血が流れている。ストラビの攻撃を完全によけることはできなかったみたい。
「触るな!」
ウィガルくんは傷をいやす回復魔法をかけようとしたみたいで、カヤトくんに手を伸ばした。だけど、カヤトくんはその手を払いのけた! ウィガルくんは一瞬だけぽかんとした表情を浮かべた後、涙目になる。
「ちょっと! いい加減にしなよカヤトくん! 何で何もかも一人でやろうとするの! みんなで協力すればもっと楽に……」
「うるせえ! なれ合いがしたいならお前らだけでやってろ! オレは一人で試験を受ける!」
そう言い残し、カヤトくんはまた私たちを置いて一人で森の奥に走っていった! ふらついているくせに、足が速い!? 何なのあいつ!
「あ、あいつやっぱり悪だ! 悪の魔法使いだよ!! ウィガルくん、手は大丈夫!?」
「お、オイラは大丈夫でござる……」
そうは言うけど、ウィガルくんは体をぷるぷるとふるわせて涙をこらえていた。
そりゃそうだよね。親切で回復しようとした相手に、手をはたき落されるなんてショックを受けて当然だよ。
「はあ。仕方ないのです。こうなったらもう自己責任なのですよ」
「自己責任?」
「はいなのです。カヤトさんがどうしても一人で試験を受けたいというのなら、チトセたちにはもう止められないのですよ。その結果、彼がモンスターにやられたとしても自己責任なのです」
カヤトくんがモンスターにやられたとしても自己責任、か。
確かに、協力するのをイヤがって一人で行動するあいつが悪い。それは間違いない。チトセちゃんの言葉は間違っていないよ。
「……ねえ、チトセちゃん。カヤトくんは、無事に一人で試験をクリアできると思う?」
「はっきり言いますが、無理だと思うのです。私たちが倒さなければならない『ディアラグス』というモンスターは、さっきのストラビと比べ物にならないほど強いはずなので。それに、彼とディアラグスは相性が悪すぎるのですよ」
「相性が悪い? どういうことなの?」
「……弱点と耐性、でござるな」
ウィガルくんが、涙声でそう呟いた。弱点と耐性って、何だろう。
「魔法に属性があるように、モンスターにも属性があるのですよ。さっきのストラビは、火属性のモンスターなのです。つまり、水属性の魔法が弱点で、風属性の魔法はあまり効かない――耐性があるということになるのですよ」
「ああ。だからさっきのモンスターにカヤトくんの水属性の魔法がよく効いていたってこと?」
「その通りなのです。だけど、ディアラグスは地と風の属性をあわせ持つのですよ」
「えっ!? 属性が二つあるなんてそんなの卑怯じゃない!? えっと、火は風に強くて水は火に強い。風は地に強くて地は水に強いわけだから……」
ダメだ! 頭の中がごちゃごちゃしてきた! つまり、どういうこと!?
「つまり、ディアラグスは地属性と水属性の魔法に耐性があるのです。そして、弱点は火属性……つまり、ダメージを与えやすいのはヒナコさんの魔法だけということになるのですよ」
「えぇー!? 水属性の魔法が効きづらいなら、カヤトくんやばいじゃん!」
「はい。やばいのです。もしディアラグスに一人で戦いを挑んでしまったら、間違いなくやられてしまうかと」
あわわわわ! 思っていた以上にやばい状況だった!
「でも、チトセたちが三人で戦えば勝ち目はあるのです。チトセが防御に専念して、ウィガルさんが回復、そしてヒナコさんが攻撃に集中すれば倒せる可能性はあるかと」
「……それだ! カヤトくんより先に私たちがディアラグスを見つけて、倒せばいいんだよ! そうすればカヤトくんはディアラグスにやられないし、試験もクリアできる!」
本当はカヤトくんにも協力してもらいたいけど、あの様子じゃ無理そうだ。なら、私たちが協力して先に倒すしかない!
「で、でも、オイラたち三人で本当に倒せるでござるか……?」
「やるしかないよ! あいつはやなやつだけど、それでも死なせたくない! ひどいことをしたし、ウィガルくんはあいつを助けるのはイヤかもしれないけど……」
「イヤではないでござるよ! ……オイラも、助けられる命は助けたい。どんな相手であっても、そう思うでござる」
目元にたまった涙をぬぐいながら、ウィガルくんはそう言った。
「チトセも反対する理由はないのですよ。試験に合格するために、ディアラグスと戦うのは避けられないこと。カヤトさんより先に見つけ出し、倒すという条件がついただけなのです」
そう言った後、チトセちゃんが少しほほえむ。
……ずっと真顔だったチトセちゃんが笑うと、破壊力がすごいなあ! かわいい! ……なんて、考えてる場合じゃないか。
「二人ともありがとう! 私たちでディアラグスを倒して、一緒にMCCアカデミーに入学しようね!」
私がそう叫ぶと、二人はこくりとうなずいた。
さあ、行動開始だ! みんなで生き残って、試験をクリアするんだ! 絶対に!
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