ブレイブ&マジック 〜中学生勇者ともふもふ獅子魔王の騒動記〜

神所いぶき

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第1章

8.爆発させたい気分の時に

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「そういえば、お前から貰ったこれを休み時間に眺めてたんだけど、中からこんな物が出てきたぞ」
 昼間、魔王からもらった金メダル――というより、丸めた金色の折り紙に紐が付いた物をポケットから取り出す。そして、ゆっくりと折り紙を開き、中に入っていたものを取り出した。
「これ、魔素結晶だよな?」
 丸めた折り紙の中に入っていたのは、とても小さな魔素結晶だった。赤く光っていて、綺麗だ。
「気が付いたか。そうだ、それも褒美の内だ。おいなり代わりに持ち歩くがいい」
「おいなり? ひょっとして、お守りって言いたいのか?」
「うむ。それだ」
 金メダルという名の丸めた折り紙はともかく、中に入っていたこの魔素結晶は気に入った。魔王が言うように、お守りとして持ち歩こう。
「ありがとう。大事にするよ」
「うむ。そうだ。折角だから魔素結晶の扱い方も教えておこう。だがその前に、落ち着ける場所に行くぞ」
 そう言って、魔王は道の先にある公園を指さした。
 あの公園の名前は久栄第一公園。この久栄市で最も大きな公園だ。確かに、あそこなら落ち着いて話ができそうだ。
「分かった。行こう」  
 オレと魔王は、公園に向かって歩いた。
 公園に入ると、どこからか甘い匂いが漂ってきた。公園の駐車場に、石焼きいもを販売する車が止まっている。匂いの出どころはそこだったようだ。
「勇者よ。あれは何だ」
「石焼きいもを売ってる車だよ」
「石焼きいも? 何だそれは」
「知らないのか? 甘くて、美味しい食べ物だよ」
 どうやら、魔王は石焼きいもに興味を持ったようだ。財布を取り出し、車に近づいていく。
「ちょっと待った! ひょっとして、食べる気か?」
「うむ。ともに貪ろうぞ!」
「おいおい。夕ご飯が食べられなくなって、ゼーゲンさんに怒られるぞ」
「むう。それは嫌だな。だが、食べてみたい……」
 魔王は、どうしても石焼きいもを食べたいようだ。
 確かに、この甘い匂いを嗅ぐと食べたくなる。最近少し寒くなってきたから、温かい石焼きいもが余計に恋しい。
「そうだ。一つだけ買って、オレと半分こにするのはどうだ? それなら、夕ご飯もしっかり食べられるはず」
「名案だ! 流石は勇者だ!」
 そう言って、魔王は小走りで石焼きいもを販売する車に向かった。石焼きいもを売るおじさんは、魔王の姿を見て少し驚いた様子だったが、特に何も言わずに石焼きいもを魔王に売った。
 そういえば、魔王と暮らすのが当たり前になったからすっかり忘れていたけど、大半の人は魔族の姿を見ると驚くんだよな。魔族がこの世界に来てからまだ半年。数もそんなに多くは無いため、魔族を見慣れない人も多い。
「買ってきたぞ! さあ、半分こだ!」
「ありがとう」
 オレはお礼を言ってから、綺麗に半分に分けられたいもを受け取った。そして、魔王と並んで公園のベンチに座り、石焼きいもをかじった。
「むおっ、熱い! だが、美味である!」
「寒い時期に食べると余計に美味しく感じるんだよなあ。石焼きいもって」
 ほくほくで、甘い。つい頬が緩んでしまう美味しさだ。あっという間に平らげてしまった。確かな満足感がある。同時に、間食してしまったことにちょっと罪悪感もある。
 ごめん、ゼーゲンさん。寄り道した挙句に石焼きいもを食べてしまった。でも、半分だけだから許してくれ。
「ふう。ごちそう様である。……はて、何故我は公園に来たのであったか?」
「こら、忘れるな! 魔素結晶の使い方を教えてくれるんだろ!」
「おお。そうだった。ついうっかり」
 うっかりじゃない。まったくもう。楽しみにしてたんだぞこっちは。
「それでは、まず正しい魔素結晶の使い方を教えよう。魔素結晶とは、基本的に魔法の力を増大するための媒体として使うのだ」
「ばいたい?」
「簡単に言うと、一時的に魔法をパワーアップさせたい時に必要な道具ということだ」
「なるほど。ゲームでもよくあるな。パワーアップアイテムってやつ」
「我はげえむとやらはよく知らぬのだが、恐らくその考え方で間違いないだろう」
 昔は、よくオレもゲームをしてたんだけど最近はしてないなあ。
 アクションゲームやロールプレイングゲームでは、一時的に攻撃力が上がるパワーアップアイテムがあったりする。恐らく、魔素結晶はそれと同じようなものなのだろう。
「使い方は簡単だ。魔法は、空気中に漂う魔素を集めるイメージをして使うものだ。基本はそれと同じである。空気中に漂う魔素を集め、魔素結晶の中にゆっくりと流しこむイメージをする。その後に、魔法を発動させればいいのだ」
 集めた魔素を、ゆっくりと流し込むイメージか。分かるような、分からないような。
「重要なのが、ゆっくりと流し込むということだ。もし、魔素を一気に流しこむイメージをすると大変なことになる」
「どうなるんだ?」
「派手に大爆発する」
 なるほど。それは大変だ。
 そういえば、ナハトも言っていたっけ。間違った使い方をすれば爆発するって。それは本当だったんだ。
「だがまあ、爆発させるのも悪くないぞ。魔素結晶が爆発した時に生じる輝きは綺麗である。もし爆発させたい気分の時は、魔素結晶に一気に魔素を流し込むイメージをするがいい」
「なんだよ爆発させたい気分の時って……」
「勇者は若い。若者は、時に弾けたくなる時が来るものだぞ?」 
 そんな物騒すぎる気分になる時が来てたまるか!
「そうだ。もう一つ、注意してほしいことがある。正しい使い方をするにしても、間違った使い方をするにしても、使用した後に魔素結晶は消滅する。それだけは覚えておくのだ」
「えっ。じゃあ使ったらお守りが消えちゃうじゃん」
「うむ。そういうことだ。故に、使用するか否かは勇者の判断に任せるぞ」
「分かった。取っておきたいから、多分使わないと思うな。よっぽどのことがないと」
「そうか。勇者がそう思うのなら、それでよい」
 魔素結晶は、とても便利な道具だけど一回使ったら消えちゃう消耗品か。
 今、オレが手にしているこの小さな赤い魔素結晶は、大事にとっておきたいな。折角、魔王がプレゼントしてくれたものだし。どうしても使わないといけない時なんて、きっと来ないだろう。
「……すっかり遅くなってしまったな。そろそろ帰るとしよう」
「そうだな。早く帰らないとゼーゲンさんに怒られる」
 明日は、ナハトとヴォルフと一緒に文化祭で使う物品の買い出しをすると約束していた。今日は、夕ご飯を食べたら早めにお風呂に入って、寝よう。早起きは苦手だけど、早寝すればきっと大丈夫だ。
「ゼーゲンは怒らせると怖いからな。怒らせないように気をつけるのだぞ、勇者よ」
「分かった。気を付ける」

 怒らせないように気をつけろ。そう言った当の本人が、帰宅すると同時に公園で焼きいもを食べたことをゼーゲンさんに話してしまったため、オレたちはしこたま怒られることになった。
 ちくしょう。恨むぞ、魔王……。
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