天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

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氷の地

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結月が作った壁の向こうからは、前に見た蜘蛛の大軍が出てきた。
見るだけでも嫌いな俺はつい後ずさりしてしまうが、片手を前に出し何をしたのか分からないうちに、ドンと音がして目の前はバラバラになった蜘蛛が散らばっていた。

「今何したの?」

「あれはお前と同じような盾だ。中からは通すが外からは入っても来れない。もちろんこちらの攻撃は通る。そこに衝撃波を向こう側に食らわせただけだ」

「ただ手を出してるようにしか見えなかったけど……」

「もう少し慣れれば何をしたかくらいはわかるようになる」

「さて、ルーカス兵を貸してくれ。材料を取る。奏太も来い」

「見るのも嫌なんだけど」

「滅多に入らない材料だから文句を言うな。それにこれを片付けないと、奥の池にまでたどり着けん」

「池?」

「今はこいつらの臭いが充満してるが、集中すれば分かるようになる。これだけの兵が居るんだから、樽の水も満タンにしないといけないしな……」

「ノア、奏太と水を汲んでこい。兵はそのへんのを適当に連れていけばいいだろう」

「はい」そう言ってから兵に声をかけて、10人程で樽を小さい荷馬車に乗せて汲みに行く。

「ノアあのさ、俺もそのうち出来るようになるのかな?」

「出来ます。姫様と同じ血だとみんな言うでしょうが、攻撃からして全然違います。匂いや音に敏感になっていますから、集中すれば造作もないことだと思います。それにしても、また攻撃や防御の幅が広がりましたね」

「そうかも。中にルーカスさんや結月さん乗ってるからとにかく守らないとと思って。ノアもニコルさんと息ピッタリだね」

先の戦闘で、背中合わせに戦っている姿はとても格好よく、2人が剣舞でもしているかの様だったことを告げると、そんなに褒めないでくださいとノアが顔を真赤にして照れている。

「もうすぐ池だと思うのですが、蜘蛛の巣が凄いのでここで待っていてください。排除してきます」

兵がそう言って奥に向かい、暫くして数名の悲鳴が聞こえてきたので走って向かう。

「どうしたの?」と、近くにいる兵に聞くと「蜘蛛の巣と思っていたのですが……」と後ずさりしている。

悲鳴を聞きつけてきたのかニコルさんも横に並ぶ。

「ニコルさん!あれ何?」

「あれは、孵化したばかりの蜘蛛ではありませんね……」

「大人の蜘蛛?」

「普通雌は牡を食べてしまうのは人間界と同じなのですが、孵化したばかりであればもっと人くらいの大きさまで小さいはず。これはどちらかは分からないですが、先程のよりもかなり大きいので……」

「え?倒せないの?」

「私とニコルさんでは使える魔法も限られています。なので近距離になるのですが、この大きさだと無駄に兵が傷ついてしまうので……」

「分かった!隊長さんいる?」

「ここに!」

「みんなを後ろに下がらせてもらえますか?」

「ですが……」

「いいから。この言い方だと、ノアとニコルさんで倒せるみたいだから、巻き込みたくないんだよ。早く下がって。俺が出来るのはみんなを盾で守ることくらいだから」

「すぐに下がらせます」

その後は素早く隊列を成しみんなが後ろに並んで見守る。
その中に入りたかったが、ニコルの言い方が気になったので二人の間へと入る。
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