天満堂へようこそ 4

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
9 / 71
魔界

.

しおりを挟む
「ちょっと待ってください。地図ではまだ氷の地は二つ隣のはずでは?」

「そうです。ですがここの位置は既に境目。風や雪がちらつくことはありますが、時期的に早いのです。姫様であれば何かわかると思うのですが……」

「でも、降ってないんでしょ?」

「いえ、あの女性の話だと降っていることを考えた方がいいかもしれません。氷の地の境目までは凍結はしないでしょうが、念の為明日買い物に行きましょう」

「大きな街でなくてもいいの?」

「この町は次の土地へ行くために必要なものは揃っていますし、いい犬もいますから」

「ソリも買う?」

「買います。まだ付けないので、荷馬車は犬に引かせますが」

「犬と言っても大きさは……」

「専用の犬なので馬ほどの大きさはありますし、寒さに強く体力もあるので魔界では馬の代わりに引かせるのが一般的です」

「へぇ。見たいな……」

「明日にしましょう。もうそろそろ夕食だと思うので」

宿に戻り食事にする。

メニューは幻界と変わらず、パン・スープ・サラダにメイン。
メインの魚がどんな魚なのかはわからないが、白身魚には変わりないので迷わず口に入れる。

「美味っ!」

「でしょう?この魚はよく食べられる魚で、ソテーして食べるのが一般的です。スープの肉には魔鳥が使われています。サラダのブロッコリーに似たものは少し苦いのですが、茹でてあるので大丈夫だと……」

「スープの野菜も違和感がないですね」

「ええ、ブランは食べれないものはありますか?」

「お魚は骨が嫌い……」

「小さいならほぐした身だから食ってみろよ。美味いから」

雛になっていたので、手でつまみ口に入れる。

クキョッ?
「もっともっと」

「気に入ったんだ。いつもお前一口で食べるからダメなんだよ。ほら、これ食えよ」

「自分で食べれるよ」

そう言うので小さなお皿に乗せる。

嘴で上手くつつき食べながら時折クキョッと言いながら食べている。
前にいたニコルからもスープのジャガイモを貰ってたべ、おはぎのような体型から真ん丸の団子のような体型になってしまった。

「食いすぎだろ?」

「もう食べられないよ……」

「もっとゆっくり食べろよ。そしたらこんな団子みたいにならないからさ……ニコルさんもあげすぎだって」

「よく食べるのでつい。明日から気をつけます。ここの宿は飲み物を持って部屋に行けるのですが、何か持っていきます?」

「コーヒーみたいなのあったから、浴場で待ってる間に飲んだんだけど、それあるかな?」

「あれは味は少し違いますが、人間界のコーヒーと変わりません。豆も売っていますので明日買っておきましょうか。ポットでもらってきます」

先に部屋に帰り、ベッドに寝転がる。
ブランはまだお腹ががパンパンだったので、少しだけ大きくなっていいよと言うと、雀ほどの大きさになる。

「器用だな」

「奏太くんの所こんな鳥いる?」

「いるよ。色々なのが……丁度ブランの大きさなら雀だな」

「すずめ?」

「そう。チュンチュンてなくんだ」

クキョックキョッ!

「なんか違うけど、ブランはその泣き方が可愛いから良いんじゃない?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君に★首ったけ!

鯨井イルカ
キャラ文芸
冷蔵庫を開けると現れる「彼女」と、会社員である主人公ハヤカワのほのぼの日常怪奇コメディ 2018.7.6完結いたしました。 お忙しい中、拙作におつき合いいただき、誠にありがとうございました。 2018.10.16ジャンルをキャラ文芸に変更しました

あやかし学園

盛平
キャラ文芸
十三歳になった亜子は親元を離れ、学園に通う事になった。その学園はあやかしと人間の子供が通うあやかし学園だった。亜子は天狗の父親と人間の母親との間に生まれた半妖だ。亜子の通うあやかし学園は、亜子と同じ半妖の子供たちがいた。猫またの半妖の美少女に人魚の半妖の美少女、狼になる獣人と、個性的なクラスメートばかり。学園に襲い来る陰陽師と戦ったりと、毎日忙しい。亜子は無事学園生活を送る事ができるだろうか。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

あやかし花屋の花売り少女

あーもんど
キャラ文芸
町外れの寂れた商店街にはある一つの妖しい花屋がある。 客は何故か皆異形の姿をし、変な言葉遣いをする者が多い。 そんな花屋の女店主である少女は今日もまたあやかしに花を売る。 ※一話1000~2000字程度 ※本当はもっとたくさん話を書く筈だったのですが、アイディアが尽きたため一旦完結扱いとさせて頂きます。

つくもむすめは公務員-法律違反は見逃して♡-

halsan
キャラ文芸
超限界集落の村役場に一人務める木野虚(キノコ)玄墨(ゲンボク)は、ある夏の日に、宇宙から飛来した地球外生命体を股間に受けてしまった。 その結果、彼は地球外生命体が惑星を支配するための「胞子力エネルギー」を三つ目の「きんたま」として宿してしまう。 その能力は「無から有」 最初に現れたのは、ゲンボク愛用のお人形さんから生まれた「アリス」 さあ限界集落から発信だ!

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

処理中です...