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居候
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皿に盛り付けて今日は土間で食べる。
「本当は手順を踏みたいんですけど、お昼ですし。社の方はどうでしたか?」
「あ、今日は庭の掃き掃除が終わっていたので、社務所でお守りとかの袋詰めを手伝いました。お祭りで結構売れると評判のお守りだとかで」
「多少は私も術を掛けてますからねぇ」
「お仕事するんだ……」
「しますよ?神社がなくなったら、下宿がなくなるじゃないですか。それは困るので」
「はぁ……」
「所で、二匹の狐に会いましたか?」
「いえ。どこにいるのかも分からなくて。ほかの狐さんはわかるんですけど」
「見えますか?」
「しーちゃんと、橙孤さんはいつも。他はたまに……」
「来てすぐ見えるとは上等ですよ」
今日出ていった子は途中から入った子なので、畳をあげる必要は無いだろうが、窓を全部開けてから確認のために全てあげる。
「僕の部屋もこんなふうに掃除をしてくれたんですか?」
「ええ」
床板なども悪くなっていないので、畳を戻して掃き掃除をしてから雪翔に畳を拭いてもらう。
その間にトイレとミニキッチンの掃除、押し入れの中の拭き掃除をして1日乾かしておけばいいだろうと、雪翔が終わるのを待って御苦労様と部屋に戻す。
「次は夕餉ですねぇ。そろそろ配達時間ですが遅いですねぇ」
キキキッとブレーキの音がし、「冬弥さんいるかい?」と玄関口が騒がしい。
「どうしました?」
扉を開け、日用品店の店主に聞く。
「ここに入ろうとしたら、いきなり飛び出してきてさぁ。轢いちゃいねーんだが倒れちまった」
来てくれと言われてついていく。
「おい、あんた大丈夫かい?」
「ああ、動かさない方が……」
「警察か病院か……病院だよなぁ」とオロオロとする店主をよそに見ると、少し怪我はしているが大したことは無いらしい。
「うっ……」
「おお、どっか痛いところはないかい?」
「?」
「名前、わかります?」
フルフルと頭を振った時に少し血が出ていることに気づく。
「とにかくうちに運びましょう。連れてきてもらえます?」
「分かった」
中に入り雪翔を呼ぶ。
「どうかしたんですか?」
「説明は後で。一人保護します。客間の押し入れに布団が入っていますので敷いてください」
「は、はい」
「店主こちらです」
布団に寝かせ、目に見える傷の手当をする。
「大丈夫そうですね。車も中に……」
店主が荷物を下ろしている間に、濡らしたタオルを額に乗せて雪翔に聞く。
「どう見ます?」
「本当は手順を踏みたいんですけど、お昼ですし。社の方はどうでしたか?」
「あ、今日は庭の掃き掃除が終わっていたので、社務所でお守りとかの袋詰めを手伝いました。お祭りで結構売れると評判のお守りだとかで」
「多少は私も術を掛けてますからねぇ」
「お仕事するんだ……」
「しますよ?神社がなくなったら、下宿がなくなるじゃないですか。それは困るので」
「はぁ……」
「所で、二匹の狐に会いましたか?」
「いえ。どこにいるのかも分からなくて。ほかの狐さんはわかるんですけど」
「見えますか?」
「しーちゃんと、橙孤さんはいつも。他はたまに……」
「来てすぐ見えるとは上等ですよ」
今日出ていった子は途中から入った子なので、畳をあげる必要は無いだろうが、窓を全部開けてから確認のために全てあげる。
「僕の部屋もこんなふうに掃除をしてくれたんですか?」
「ええ」
床板なども悪くなっていないので、畳を戻して掃き掃除をしてから雪翔に畳を拭いてもらう。
その間にトイレとミニキッチンの掃除、押し入れの中の拭き掃除をして1日乾かしておけばいいだろうと、雪翔が終わるのを待って御苦労様と部屋に戻す。
「次は夕餉ですねぇ。そろそろ配達時間ですが遅いですねぇ」
キキキッとブレーキの音がし、「冬弥さんいるかい?」と玄関口が騒がしい。
「どうしました?」
扉を開け、日用品店の店主に聞く。
「ここに入ろうとしたら、いきなり飛び出してきてさぁ。轢いちゃいねーんだが倒れちまった」
来てくれと言われてついていく。
「おい、あんた大丈夫かい?」
「ああ、動かさない方が……」
「警察か病院か……病院だよなぁ」とオロオロとする店主をよそに見ると、少し怪我はしているが大したことは無いらしい。
「うっ……」
「おお、どっか痛いところはないかい?」
「?」
「名前、わかります?」
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「とにかくうちに運びましょう。連れてきてもらえます?」
「分かった」
中に入り雪翔を呼ぶ。
「どうかしたんですか?」
「説明は後で。一人保護します。客間の押し入れに布団が入っていますので敷いてください」
「は、はい」
「店主こちらです」
布団に寝かせ、目に見える傷の手当をする。
「大丈夫そうですね。車も中に……」
店主が荷物を下ろしている間に、濡らしたタオルを額に乗せて雪翔に聞く。
「どう見ます?」
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