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祭り~最終話
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夕餉にとまだまだ残っているじゃがいもを使おうと、雪翔と栞に剥いてもらい、その間にご飯とお味噌汁を作る。
大根とワカメの赤だし。シンプルながらも大根にしみた味噌汁の味が好きなので、よく使う。
小松菜と揚げの煮浸しに、焼きそばを作り玉子でまいた焼きそばオムレツ。
剥いてもらったじゃがいもは茹で、半分は潰さず、潰したじゃがいもと混ぜ、ハムやキュウリなどでポテトサラダに。
残り半分を炒めておいたひき肉と混ぜコロッケに。
衣を付けて、多めの油であげ焼きにし、衣に色がついたら網の上に乗せ、油を切っておく。
「冬弥さん、サラダ出来たけど、上にポテトサラダ乗せるの?」
「お父さんでしょう?」
「いや、まだ……」
「今日から養父とは言え、もう父ですから!」
「はい……」
「ふふ。子供みたいですね?」
「そんなことは無いですよ?サラダはそこのツナ缶とカニカマをほぐして乗せてください」
「今日多くないですか?」
「記念日ですからねぇ」
レンコンとゴボウ、人参とこんにゃくで金平を作り、酒のあてにしようと小皿にも取り分けておく。
「冬弥様、お膳の支度はできましたけど」
「なら、みんな呼んできてください。部屋にいると思います……あ!海都も今日は面接だとかでいないって言ってたような……」
ボードを見ると帰宅時間がみんな夜の19:00と書いてあり、仕方が無いとラップをかけてみんなを待つことにし、先に金平で酒を飲むことにした。
「冬弥様、戻りました。これを父君から預かってまいりました」
「ご苦労様」
もらった書類に目を通すと、保証人欄に父の名が書かれている。
手紙を読むと『親にも相談せずに全く呆れる。保証人などの必要な手続きを忘れておっただろう?ちび共が泣きついてきたので書いておいた。役人である兄に感謝しろ。段取りを無視して手続きはすべて終わらせてくれたから、人間界の土産でも持って早く孫を見せに来い』
「なるほど……」
「お父様はなんと?」
「孫を見せに来いと書いてあります。ぶっきらぼうで、頭が固いのですが影でもよこして見てたんでしょうねぇ。怒らないと言うことは父もそうなると思っていたのかも知れません」
「あの、冬弥さんのお父さんて……」
「あ、言っていませんでしたね。父と母、兄と兄の奥さんがいまして、今で言う江戸時代のような町並みの屋敷に住んでます。父はもう引退しましたが、こちらで言う警察や役所にあたる仕事を兄がしてます。結構偉い人になっちゃったようでして、色々すっ飛ばして手続きしてくれたようで、今から正式に親子です。だから、ちゃんと言いたい事は言ってください」
「はい。宜しくお願いします」
「ならば、もう下宿でなくてもいいですねぇ」
「え?」
「食事はこちらでしますけど、私の子なら家で寝泊まりしないとおかしくないですか?」
「でも、みんながなんて言うか」
「それは大丈夫です。今の母屋から、離れを作るとやはり、ふた間が限度になりますねぇ。ちょっと待ってくださいねぇ」
昔ながらの黒電話から、棟梁に電話をかけ、増築したいと言い、大まかな間取りを言ってから見積もりと設計図をもって来て欲しいと言って電話を切る。
「あの!僕、ここでいいです。男ばかりのところにいるんだから、離れを作るなら栞さんを住ませてあげてください」
「私は平気ですよ?」
「だって、ここは男子寮みたいなものじゃないですか……危ないですよ」
「こう見えても、ちゃんと力はあるので平気です。誰か入ったらわかるようにいつもしてますし、雪翔君は冬弥様に甘えたらいいと思いますよ?」
「雪翔、明日家ができるわけでも無いので、また話し合いましょう」
みんなが帰ってきて夕食を囲み、終盤に聞いてほしいことがあると声を掛ける。
「何?結婚式の日でも決まったの?」
「違います。今日何ですけどねぇ、正式に雪翔が私の養子。つまり、私の息子になったので報告をと思いまして」
は?と箸を落とすもの、ポカーンと口を開くもの、想像できる反応ばかりでそれがまた面白い。
「冬弥さん、まだ若かったですよね?30くらいじゃなかったですか?なのに、15の子を結婚もしてないのに養子に出来るんですか?」と最もな意見を言う堀内に、隆弘は「年収とかじゃなかったっけ?」と曖昧なことを言う。
「まぁ、あちらの御両親からこちらにという形でしたので。これからは息子になるのでよろしくお願いしますね」と適当にごまかす。
「いいなぁ。保護者会とかかっこいい父ちゃんが来るってことじゃん」と海都が言うと雪翔は下を向いてしまった。
「よし、祝だな!飲むかー!」とビールを取りに賢司が土間へと行くと、俺はお代わりと海都が味噌汁とご飯をよそい、各々好きな酒と残りのジュースで乾杯する。
「そう言えば、雪翔って炭酸飲まないよな?」
「え?たまに飲みますよ?堀内さんも炭酸あまり飲んでないですし」
「僕は苦手なんだよ。ビールは別だけど。それでも焼酎のが好きかな」
「海都が炭酸飲みすぎなんだよ。だからそう見えるんじゃないか?」賢司が海都は面接の時にも出されたコーラを飲んでいたと聞き、今度は栞に怒られる。
「ちゃんと歯磨きしないと虫歯になりますよ?いつも早いんですよ!もっとよく磨かないと今日はもう仕舞いますからね?」
「え?磨くからちょうだい!」
「ご飯食べてからにしてください!炭酸に味噌汁って……味が変になりません?」
「うぅ……」
それもそうだとみんなから言われ、ご飯を掻き込むかのように食べたあとジュースと言うので、みんなが子供だと笑っているのを見ていたが、雪翔も見ているだけであまり興味がなさそうだった。
大根とワカメの赤だし。シンプルながらも大根にしみた味噌汁の味が好きなので、よく使う。
小松菜と揚げの煮浸しに、焼きそばを作り玉子でまいた焼きそばオムレツ。
剥いてもらったじゃがいもは茹で、半分は潰さず、潰したじゃがいもと混ぜ、ハムやキュウリなどでポテトサラダに。
残り半分を炒めておいたひき肉と混ぜコロッケに。
衣を付けて、多めの油であげ焼きにし、衣に色がついたら網の上に乗せ、油を切っておく。
「冬弥さん、サラダ出来たけど、上にポテトサラダ乗せるの?」
「お父さんでしょう?」
「いや、まだ……」
「今日から養父とは言え、もう父ですから!」
「はい……」
「ふふ。子供みたいですね?」
「そんなことは無いですよ?サラダはそこのツナ缶とカニカマをほぐして乗せてください」
「今日多くないですか?」
「記念日ですからねぇ」
レンコンとゴボウ、人参とこんにゃくで金平を作り、酒のあてにしようと小皿にも取り分けておく。
「冬弥様、お膳の支度はできましたけど」
「なら、みんな呼んできてください。部屋にいると思います……あ!海都も今日は面接だとかでいないって言ってたような……」
ボードを見ると帰宅時間がみんな夜の19:00と書いてあり、仕方が無いとラップをかけてみんなを待つことにし、先に金平で酒を飲むことにした。
「冬弥様、戻りました。これを父君から預かってまいりました」
「ご苦労様」
もらった書類に目を通すと、保証人欄に父の名が書かれている。
手紙を読むと『親にも相談せずに全く呆れる。保証人などの必要な手続きを忘れておっただろう?ちび共が泣きついてきたので書いておいた。役人である兄に感謝しろ。段取りを無視して手続きはすべて終わらせてくれたから、人間界の土産でも持って早く孫を見せに来い』
「なるほど……」
「お父様はなんと?」
「孫を見せに来いと書いてあります。ぶっきらぼうで、頭が固いのですが影でもよこして見てたんでしょうねぇ。怒らないと言うことは父もそうなると思っていたのかも知れません」
「あの、冬弥さんのお父さんて……」
「あ、言っていませんでしたね。父と母、兄と兄の奥さんがいまして、今で言う江戸時代のような町並みの屋敷に住んでます。父はもう引退しましたが、こちらで言う警察や役所にあたる仕事を兄がしてます。結構偉い人になっちゃったようでして、色々すっ飛ばして手続きしてくれたようで、今から正式に親子です。だから、ちゃんと言いたい事は言ってください」
「はい。宜しくお願いします」
「ならば、もう下宿でなくてもいいですねぇ」
「え?」
「食事はこちらでしますけど、私の子なら家で寝泊まりしないとおかしくないですか?」
「でも、みんながなんて言うか」
「それは大丈夫です。今の母屋から、離れを作るとやはり、ふた間が限度になりますねぇ。ちょっと待ってくださいねぇ」
昔ながらの黒電話から、棟梁に電話をかけ、増築したいと言い、大まかな間取りを言ってから見積もりと設計図をもって来て欲しいと言って電話を切る。
「あの!僕、ここでいいです。男ばかりのところにいるんだから、離れを作るなら栞さんを住ませてあげてください」
「私は平気ですよ?」
「だって、ここは男子寮みたいなものじゃないですか……危ないですよ」
「こう見えても、ちゃんと力はあるので平気です。誰か入ったらわかるようにいつもしてますし、雪翔君は冬弥様に甘えたらいいと思いますよ?」
「雪翔、明日家ができるわけでも無いので、また話し合いましょう」
みんなが帰ってきて夕食を囲み、終盤に聞いてほしいことがあると声を掛ける。
「何?結婚式の日でも決まったの?」
「違います。今日何ですけどねぇ、正式に雪翔が私の養子。つまり、私の息子になったので報告をと思いまして」
は?と箸を落とすもの、ポカーンと口を開くもの、想像できる反応ばかりでそれがまた面白い。
「冬弥さん、まだ若かったですよね?30くらいじゃなかったですか?なのに、15の子を結婚もしてないのに養子に出来るんですか?」と最もな意見を言う堀内に、隆弘は「年収とかじゃなかったっけ?」と曖昧なことを言う。
「まぁ、あちらの御両親からこちらにという形でしたので。これからは息子になるのでよろしくお願いしますね」と適当にごまかす。
「いいなぁ。保護者会とかかっこいい父ちゃんが来るってことじゃん」と海都が言うと雪翔は下を向いてしまった。
「よし、祝だな!飲むかー!」とビールを取りに賢司が土間へと行くと、俺はお代わりと海都が味噌汁とご飯をよそい、各々好きな酒と残りのジュースで乾杯する。
「そう言えば、雪翔って炭酸飲まないよな?」
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「うぅ……」
それもそうだとみんなから言われ、ご飯を掻き込むかのように食べたあとジュースと言うので、みんなが子供だと笑っているのを見ていたが、雪翔も見ているだけであまり興味がなさそうだった。
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