下宿屋 東風荘 8

浅井 ことは

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南での三日間

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「なんで嫌なの?あ、好きな人がいるとか?」

「居ないいない。俺、文官だろ?もう仕事がとにかく回ってくるんだけど……父上がサボるから。で、やっぱり若いからって色んなところにも行かされるから、今結婚しても家に居ない方が多いんだよ。嫁さんになった人可哀想だろ?」

「そういう事なんだね」

「おいおい、まるで私が仕事してないみたいじゃないか」

「雑なんだって」

「あのさ、ジイジの仕事って何?東のお爺ちゃんは京弥さんの前に、警察の署長さんだったんだよね?」

「そうそう。反対に同じお役所仕事でも、私は人間の世界で言うところの、えーと、市長さん?みたいな人。で、私が判を押したものを城の文官が整理して、上にあげるんだ。それが夏樹の仕事」

「うわぁ、夏樹さん凄いね!」

「それを言うなら私だろう?」

「ジージも凄いけど、バアバは?」

「私もね、たまに手伝うのよ?細かい計算ごとは全部私に押し付けてくるんだから、給金が欲しいくらい」

「出ないの?」

「あー、それは……」

「父上がやってることになってるもんな?」

「え、それ酷いよ。バアバが手伝わなかったらもっと大変になるんでしょ?」

「ちゃんと月の小遣いは渡しておるぞ?困らん程度に。それでよく街まで買い物に行ってるんだから……チャラと言うやつだ」

「それでいいの?」

「いいのよ。私も学校では成績よかったのよ?結婚する前は、銀行?でいいのかしら。狐の国にもそういった機関があって、そこで働いてたから。それに、楽しいのよ?」
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