下宿屋 東風荘 8

浅井 ことは

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南の島のおじいちゃん

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すぐに祖父たちも見に来て、多分自分でわかっていたのだろうと、ありがたく受け取ることにしようという事になって、ジイジが聞きに行ってくれた。


「その、赤い紐は冬弥のなんじゃが……雪翔よ。最後まであと少し。それはお主に任せる」

「僕!?」

「もう忘れたのか?」

「お、覚えてます!」


そう言って機織り機で髪紐を作っていく。

出来上がりを見せると満足そうに頷いて、「みんなよく聞いてくれ。儂はもう長くはない。島に居させてもらえて幸せじゃった。東の……そなたらの反物と、冬弥、京弥の赤子の反物。冬弥は直ぐに髪紐をなくすから今できたものも持っていくといい。

南の……この機織り機ではお前達の洋服とヤラはできんかった。『れえす』という見本に合わせて髪紐を作っておいた。奥方にじゃ」

「俺たちのは?」

「夏樹、南の当主よ。そなたらには……ない!と言いたいが、奥に今まで集めた各地の文献がある。それを大事にしてほしい。

那智、お前にはこの島そのものを。
息子と守ってくれんか?」

「爺様……」

「お主に爺様と言われる日が来るとはの。那智よ、お前はもう少し……いや、十分に優しくなったの。子供達を守るのじゃよ?自身の子も、本家の子もみーんなじゃ。よいの?」

「分かった。今夜は俺たちいとこが腕を振るう。爺様見ててくれ」

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