八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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神気と力

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ベッドにゴロンとなりながら、自分の手を見るとやはり何かが手だけではなく身体も膜を張ってるというか、そんな感じで包まれているのはわかる。

なのに、大国さんや迦具土が気づかないのは神気とは違うからなのだろう。

鞄から、図書館で借りてきた本を開き、目次を見て読むが、大体が剣で戦ったとか、土地が生まれたとかそんなことしか書いてない。

不思議なのは神様が土地になるってことだが、そこは突っ込んでも仕方ないだろう。

これは誰に聞けばいいのだろう?と、祖父から貰った先祖の日記を読むことにし、一番最初の書付けを見るが、漢字だらけで読めない!

読めそうなのを手に取り一つずつ見ていくと、十五代目ではなく、七代目。

自分より十代前の人の記述に少し似たのがあったが、いつの時代の人だよ!!!

最低でも三・四百年は前の人だろう。

年表と照らし合わせると室町時代か安土桃山時代っぽいが、この家はそんなに長く続いてるのか!?

もしかして武士の子孫だったりしてなどと変なことを考えてしまう。

「まさかだよなー」

その時代のことを授業で習った気はするが、今やっている数学と英語で頭がパンパンで思い出せない。
と言うより、思い出したら単語を忘れてしまう気がしてならない。

「翔平」

「何?」

「明日神社だろ?行けるか?」

「行きたくないけど行くしかないだろ?それに、次の神様のことなんにも聞いてないし。迦具土は聞いてる?」

「教えてくれねーんだよ。さっきまで聞きまくったから、ポロッと言うと思ったのに」

「言われないってことは、またお使い的なものなのかな?それだと楽だからいいんだけど」

「反対に言われないから俺は怖いけどな……」

「明日になれば分かるし。それよりさ、これ見てよ。日記とか遡って見てたらすげーの。俺の十代前って室町とかその辺の時代だよ?一代目って神様の時代かなーとか思うと、家って凄い昔から続いてんのな」

日記を見て、一番最初の頃のはないなと迦具土が言いながら、古いものを箱に戻していく。

「ま、この土地自体がかなり古いから、お前の家系はずっとここに住んでたんだろうな」

「そんなの分かるの?」

「一応俺も神なんだけど」

「そうでした!風呂は?」

「あ、それ言いに来たんだった」

着替えを持って下に行こうとしたら、「頭洗う洗剤が少ないから入れておいてくれ」と言われ、「シャンプーだ!」といいつつ、なんで洗剤になるのかが分からない。

いつになったら覚えるんだろう?

翌日の夜、少し早かったが約束通りに茅葺き屋根の家に行くと、中からは八意さんと誰かの笑い声が聞こえる。

祖母が何か聞かされていたのか、行く時に持って行って欲しいと重箱と水筒を渡されたので持っては来たが、来てる人へのおつまみ?

まさか、酒盛りに付き合えと言われたら、それは無理だぞ?

「こんばんは」

声をかけてから襖を開けると、いつもの如く文机を机代わりにしてお酒を飲んでいる。

「おお、早かったの」

「あの、婆ちゃんからこれ預かってきたんですけど」

「すまんのぅ、酒だけ持ってきて摘みがなくての、祖母殿に連絡して作ってもらったんじゃ」

うちの婆ちゃん、家政婦じゃあないぞ?

迦具土を見ると、何度かソワソワとしているので、先に中に入り、お箸と取り皿を渡して、重箱を開ける。

「これはまた美味そうな!坊主の祖母殿が作ってくれたのは好物ばかりじゃ」

「えーと……」

「あ、まだ紹介しておらんだの。こやつは天狗じゃ」

「天狗って……本物?」

「まぁ、天狗と言ってもいろんな言われ方をしておるようじゃが、こやつは鳥天狗、鴉天狗 からすてんぐとも言われておる。えーと、ほれ、あれじゃ、民族信仰の神じゃよ。座敷わらしとか河童とかみたいなものじゃ」
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