八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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神気と力

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「大体、俺が忘れてた格好で来るなんて!」

「何で来たんだ?」

「巫女さん……」

ブフッと笑う迦具土のきゅうりを奪い、マヨネーズもひったくってかける。

キラキラとした視線を感じたが、謝るまで具もマヨネーズもやらない!

「祖母殿、源三郎、翔平が反抗期だぞ?いいのか?反抗期」

「違うわっ!」

「まぁ、私達も忘れてましたからねぇ、巫女さん姿。元気づけると言っても、今は何やらかのテスト前で気も立ってるのでお遊びも程々にされませんと」

「爺ちゃんも!重春が目のぱっちりした女の子好きなの知ってるだろ?大国さんの巫女姿なんてどストライクなんだから勘弁してよ……」

「俺は元々可愛いだろう?」

「年齢だけでいえば化石だろ?風化しててないだろ?元々無いだろー!」

そこまで言ったのに、ニヤニヤと笑う大国さん。

「翔平、スッキリしたか?」

「え?」

「あー、疲れた。祖母殿具をくれ具!マヨネーズも」

「お疲れ様でしたねぇ」とニコニコ顔の祖父母。

グルか?

グルだったのか!?

ポカンとしていると、「すまんな、俺も知ってた」と迦具土。

具を沢山乗せてもらい満足そうに食べている大国さん。

じーっと見ていると、「いや、だからだな……神気の事もあるし、受験のこともあるし、こう、気晴らしと思ってだな」

「そんな気晴らしいりませんから!」

「翔平、お前は昔から聞き分けもよく、なんでも真面目に取り組む。それはとてもいい事だ。だが、なんでも考えすぎてしまう所がある。
私たちに反抗もしたこともないし、代替わりの時もそうだ。自分の気持ちを押し殺す所がある。今回もいくつもストレスがあるだろうにお前は相談も何もしない……その事を話していたら、本音を出せるところがあればいいのだろうと大国様が悪役を買ってくださった」

「そーいうことだ。俺も思ってはいたが、お前の良いところでもあり悪いところでもある。俺が引き受けるのが良かったんだろーが、それじゃ今までと変わんねーなって思ってな」

「そーいうことだから許せ。祖母殿、ご飯はあるか?」

「梅しらすの振りかけがあるので、おにぎりにしましょうか」

「おお、おっきいのを三つ!」

いつもと変わらない態度の大国さんだが、神様にかなり酷いことを言ったような……

いや、でも……

巫女姿で出てこなくてもいいじゃないか!

うん、俺は悪くないぞ?

「大国さん、いいもの渡すんで、目瞑って貰えますか?」

「ご褒美か?」

とニコニコ笑顔で目を瞑っているので、コソッとハリセンを持ってきて、思いっきり振り上げて力の限り振り下ろす。


バッシーン


「いってぇ!」

頭を抱える大国さんに、「はぁ、スッキリした」と言って冷やし中華を食べる。

ちょっと延びちゃったじゃないか!

「今度から巫女さん禁止。女性姿も禁止ですから」

そう言って、祖父にも祖母にも変な計画を立てるな!と釘をさして、ご馳走様と食器をつけて部屋へと戻る。

大国さんやみんなが心配してくれるのはわかるが、
みんなが思っているよりも自由にしてきたつもりだし、最近はそれなりに楽しんでいる自分もいる。

それに、神気を入れた方がいいことももうわかっている。

大国さんや迦具土には見えてないようだが、鈴を持っていなくても、弓を作った時の薄緑の光が手に纏っているのが見えるんだから……
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