八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
91 / 103
神気と力

.

しおりを挟む
「俺、今日はもう寝るわ。明日図書館に朝から行ってくるから」

「俺は大国様のところに行ってくる」

おやすみと言って部屋に戻り、気休めにと本を読む。

いつの間にか寝ていたようで、朝ごはんを食べたあとに、「図書館行ってくる」と祖父母に言うと、お昼は?と聞かれたので、近くのハンバーガー屋さんにでも行くからと言って荷物を持って自転車で図書館まで行く。

「あれ?重春?お前塾は?」

「おお、なんか久しぶり。今日塾休みなんだよ」

「あいつは?」

「和敏はこの休みの間にっておばさんの実家に行ってる」

「お盆じゃないのに珍しいな」

「具合が良くないらしい。ま、こればっかりは俺達にはなんとも言ってやれないしなぁ」

少し話した後に、塾の参考書を見せてもらい、自分の問題集を解きながら、時折答え合わせをする。

お昼は二人でハンバーガーを食べて、また図書館に戻り、帰りに借りていこうと思っていた本を探して席に戻ると、「お前余裕だな」と言われる。

「これ爺ちゃんのだよ」と誤魔化したが、神話や神様の事の書いてある本なので疑われはしないだろう。

「そう言えばさ、あの神社に居た巫女さん。全然見れないんだよなぁ。バイトなのかな?」

お前達、まだ探してたのか!?

「あー、あの巫女さんな……」

そういうしか出来ないじゃないか!


「あの後俺たち何回か行ったけど会えなくてさー。女運ないのかなー?って思ってたわけ」

「ん?思ってたって会ったのか?」

「いや、あの子そうじゃね?」

重春が指さした方を見ると、確かによく似た……よく似たぁ?と二度見すると、こちらを見てニッコリと笑って小さく手を振ってくる。

何しに来たんだ大国さん!

「お前知り合いだったのか?」

「いや、知り合いっていうか、爺ちゃんと神社に行った時に何度かあっただけ」

俺の誤魔化しはこれ以上効かないぞ?

「こんにちは」

話しかけるなー!

「こんにちは、良かったら座って」

重春ー!

図書館なので、小声で話してはいるが、とっても今叫びたい俺!

「神社でお会いしましたよね?」

「最近バイトしてないの?」

「はい。忙しい時だけ手伝う感じで」

「そうなんだ、高校生?」

「はい。一年生です」

どんな設定してくれてるんだよ!

重春を見ると、少し頬を赤らめながらも一生懸命話しているのが不憫になってきた。

一通り重春が満足したのがわかったのか、「じゃあ、私はこれで」と席を離れる大国さん。

気が気でなかった……

夕方まで重春と勉強したあと一緒に帰り、家に着くと玄関には小さな靴。

手を洗い、うがいをしてから、「大国さん!」と部屋に入る。

「おお、遅かったな。今日は冷やし中華だぞ?」

「婆ちゃん、大国さんの麺だけでいいから!」

「しょぉへぇー!」

「何しに来たんですか?重春が恋したらどうするんですか?って多分してると思いますけどっ」

「お、俺はお前を元気づけようと思ってだなー」

「余計に悩み事が増えるからやめてください」

言い合ってると、具なしの麺だけ冷やし中華が大国さんの目の前に置かれ、迦具土と俺の麺の上には多分大国さんのに乗るはずだったであろう具がいっぱい乗っている。

「祖母殿ー、具を具を!」

「ほほほ、神様とて可愛い孫の邪魔をしたらおかずは無しですよ」

「そ、祖母殿!」

よく言った婆ちゃん!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~

ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。 「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。 世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった! 次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で 幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──! 「この世に、幽霊事件なんてありえません」 幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元魔法少女の後日談は珈琲が飲めるようになってから。

キリ
キャラ文芸
雨谷しぐれが魔法少女の頃はどんなところにでも手が届いた。手の届く範囲内にだけは手を差し伸べたがるしぐれにとって魔法少女は居心地の良いものだった。しかし永遠に魔法が使えなくなる総魔力切れを起こしてしまい、魔法少女を引退する。いきなり手の届く範囲が激減し自分の力のなさを痛感する。 そんなしぐれは同級生の伏名みとまに染髪に連れ出したり、少しずつ普通の生活に慣れようとする。そんな時に一人の怪しげなドレスの女に出会い…… 魔法少女を引退してもなお大きくなる正義感にしぐれは振り回されてばかり……。そんな自分にしぐれは納得出来なかった。だから、魔法少女を引退した彼女が選んだのは魔女になることだった。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...