八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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お盆祭り

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祖父も料理が結構上手だ。

祖母には適わないが、男性……特に昔の日本男児と考えると、かなりのレパートリーがある。

冷蔵庫から鮭フレークを取り出した時点で、ほうれん草と鮭の卵焼きだと分かる。

それか、チャーハンなのだが、卵焼き器を出しているのでチャーハンではないだろう。

「婆さんの分も作っておくか。翔平、お前焼くか?」

「無理無理!前もしたけど、結構ぐちゃぐちゃだったし、具が入ってたら余計に巻ける気がしない」

「簡単なのに……だったら漬物切っておいてくれ。味噌汁はあるし、海苔もあるし。魚は諦めろ」

「うん」

ぬか床からきゅうりを出して洗ってから切り、ついでにと白菜の浅漬けも出す。

朝はご飯と味噌汁に漬物でもう満足なのだが、うちは必ず卵料理が一品つく。

「あ、爺ちゃんはんぺん焼いて」

「それは揚げてあるだろう?」

「フライパンで炙った方が美味しいんだもん」

揚げた玉ねぎが練りこんであるはんぺんの袋を持ち、卵を焼いた後でいいからとお願いして、そういえば大国さんも朝ごはん食べていくかな?と二枚入りの揚げはんぺんをもうひと袋出す。

さりげなくソースではなく醤油で食べるのが美味い。

祖父に変わってもらってから少し焦げ目がつくまで炙り、お皿に乗せて四人分用意する。

「あ、飯作ったのか」

「おかえり」

「大国様の気がするから絶対食べてくと思うぞ?」

「あ、そっか……じゃあ、もうひとつ焼かないと」

準備をしようと立ち上がって直ぐに、「飯はいい」と珍しい言葉が聞こえ、つい『え?』と言った顔をして振り向いてしまう。

「俺はもう食った。石長は直ぐに熱は引くだろう。三日過ぎて引かなければ、俺の屋敷に連れていくが、疲れただけだろうし。ってことで俺は帰る」

「ぇぇえええ!」

「何を驚くことがある?」

「だって大国さんがご飯断るなんて大雨でも降るんじゃないかなって思って」

「アホか!神社での朝の務めの時に俺がいない訳には行かないんだ。何かあったら連絡してくれ」

それだけ言って姿が消えたので、とりあえず朝ごはんを食べてしまおうとみんなで食卓につき、洗い物を終えた後に祖母がお粥を作って石長さんのところに持っていき、自分はとにかくノルマをこなすと部屋に行って参考書を開く。

でも、やはり気になって仕方がない。

兄貴に連絡した方がいいのだろうか?

ガチャッと扉の開く音がし、「ノックしてっていつも言ってるじゃん」と迦具土に文句を言うと、「忘れてた」といつもの様に言われ、祖父が呼んでるから降りてこいと言う事だったが、階段の下から呼べば聞こえるといつも言っているのに、律儀に部屋まで伝言を言いに来る。

特に大きな音で音楽を聴くこともないし、たまにイヤフォンをつけて聞く時も長い時間聞いている事もなく、呼ばれる声くらいは聞こえるようにしている。

神様って、意外と律儀。

「爺ちゃん何?」

「あぁ、婆さんの代わりに買い物に行こうと思ってな。そしたらたくさんメモしてくるんで、自転車を引いてもらおうと思って」

「いいよ。すぐ行く?」

「午前中にすましてしまおうか。悪いな、勉強してるのに」

「平気。それに気になって手がつかなかったから」

「あ、婆さんが言ってたんだが、純平には連絡するなよ?」

「それ俺も考えてたんだけど、何で?」

「あいつも仕事があるだろう?休みもなかなか使うわけにいかないだろうし」

「そっか……わかった。でも、大国さんのとこに行くことになったら連絡はするから」
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