八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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お盆祭り

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「迦具土君ももう家族ですものねぇ。お婆ちゃん毎日楽しくて。ありがとう」

そう、祖母が言うとさらに赤くなり、机を拭いて来ると布巾を持って台所を出ていってしまった。

「迦具土君も変わったわねぇ」

「うん。来た時なんて口は悪いし態度も悪かったし」

「そう?最初からいい子だったわよ?」

婆ちゃん、やっぱり婆ちゃんに叶う人はいないと思う!

「そうそう。迦具土君が最初に来た時に火がダメだったでしょう?今ではコンロをつけれるくらいになったのよ?すぐ逃げるけど。でも、表情も豊かになったし、私たち家族のところに来て良かったって思ってくれてたんだなぁって思うと、お婆ちゃん嬉しくて」

「そうだよね。婆ちゃん最近楽しそうだもん」

「お華も習わせようかしら」

ほほほと笑いながら片付けを終わらせた祖母は、お茶を入れに行くと出て行ったので、残りを片付けて戻ると、布巾を机に置いて兄と何か話し込んでいる迦具土。

兄としても色々と聞きたいことは多いのだろう。

一息ついて、兄が帰るのを見送り、一先ずやれと言われているところが来週までに済むように机に向かう。

集中してやっているのは数学と英語。

絶対に毎日やれと言われてはいるが、成績だけ見るとそこまで悪くは無い。

悪くは無いのに、問題集がとても難しく感じるのがこの分厚さのせいだと言い聞かせ、自分の中で決めている夜中の十二時まで頑張り、布団に入ると目が疲れているのか、瞼を閉じるとぐっすりと眠ってしまう。

朝は暑さもあってか、東向きの部屋なので、朝日とともに起きる感じで、五時には起きてしまう。

「おはよ」

「おはよう。今日は早くない?」

「暑くって。お茶ある?」

「氷はあまり使わないでちょうだいね。外の冷凍庫でも作ってるんだけどなかなか出来なくて」

「何かに使うの?」

いつもパンパンに入れる氷を半分にしてお茶を入れ、二杯目を注いでから祖母を見ると、いつもなら氷枕なのに水枕と氷嚢の二つに氷を入れている。

「え?爺ちゃん熱でもでたの?」

「石長さんよ。無理させちゃったのかしら?夜にお茶を持っていったら顔が真っ赤でねぇ。やはり言いにくかったのかしら……」

「病院は?」

「神様よ?どこに連れていけばいいのかわからなくて、今、お爺さんが大国様を呼びに道場に行ってるの。お婆ちゃん氷替えてくるから、翔平今日のご飯はこっちの台所で食べてちょうだいね」

昨日、結構緊張していたみたいだから、そのせいかな?と思いつつも、家で熱が出てよかったとも思う。

もし、自分の屋敷で倒れでもしたら使用人がいるとはいえ、心細かったに違いない。

朝ごはんにはまだ早いからと道場へ行くと、眠そうな顔をした大国さん。

「おー、翔平」

「おはようございます。見に来てくれたんですか?」

「見るも何も、緊張が解けたんだろ?ほら、お前の兄の前だと、ガッチガチに固まるからな石長は」

確かに固まるが、その度に熱を出されても困る。

早く慣れてくれればいいのだが、石長さんの性格からすると、中々普通には出来ないだろう。

大国さんと祖母だけ中に入り、祖父と居間で待っていてもなかなか戻ってこない。

「翔平、まだ掛かりそうだから、ご飯の支度でもするか」

「そうだね。あれ?迦具土は?」

いつもならおたまを持って口うるさく言う小姑のような迦具土の声がしないと気づいたのは早起きのおかげだ……いや、早起きをしたからだと思い祖父を見ると、冷蔵のから卵を取り出し、「今、コンビニに言ってもらってるんだ」と卵を器用に割りながら言う。
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