八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
63 / 103
石長比売の決断

.

しおりを挟む
「大国さん、兄貴と石長さんが結婚するのにはどうしたらいいんですか?」

「こちらでの、婚姻届というものは出せないから、人間の国では、純平は独身ということになるな。えーと、なんだ……じ、じ、じ?」

「事実婚のことか?」

「流石純平、よく知ってるな!それだ。だが、一緒に暮らせるぞ?行事の前後等は社に帰らないといけないが、それもアレだ。実家に帰らせていただきます!ってやつだ」

この言葉を聞いて、どれだけ奥さんにその言葉を言われてきたのだろうと、少し大国さんが気の毒になってしまう。

「大国さん、それって、ただの帰省じゃないですか?」

「え?そうなのか?俺の嫁達はよく言うぞ?そして本当に帰って来ないんだ。迎えに行くまで」

それを聞いて頭を抱える迦具土と祖父。

「大国様、事実婚と言っても石長さんは神様でしょう?そんなに社を開けるのは……」

「源三郎の言う通りだが、結婚しても今の女は働くのだろう?純平が仕事に行って、帰ってくるまで社にいるというのならば、問題は無い……が、上を説得……もうしなくてもいいか。俺の管轄だし?という事で、婚約おめでとう」

いいのか?

こんなに簡単に婚約でいいのか?

ものすごく怒ってる石長さんがとても怖いんですけど……

祖母がお茶を持ってきて、大国さんにいくつか質問しているが、結婚のことなんて俺にはさっぱりわからない。

「石長さん、石長さんは兄貴のこと嫌いなの?」

「そ、そそそそそんなことは……ただ、色々と迷惑をかけた上に、神気のこともあるから、私は元の神社の方で過ごしたいと……そうなれば、回復までに今まで溜めておいた神気があるから、早く良くなりはするので、完全に戻るまでどのくらいかかるかも分からないし。だから、このまま……」

「そしたらまた最初の引きこもりと同じになっちゃうじゃん」

「だろ?翔平よく言った」と、何故か頭を撫でられる。

「兄貴も茶化さないで……」

「いや、ある程度回復するまで、自分の神社にいても構わないし、俺も一度行ってみたかったから、行くって言ったら怒りだしちゃって。そしたらもう会わないだのなんだのと……」

「それって、兄貴は振られたってこと?」

「ち、違う!それは違う!!!」と叫ぶ石長さん。

女性の気持ち早くわからない……

「石長、お前、最初の結婚のこと気にしてるのか?」

あぁ、そうだった……

でも、それ言ったらダメなやつじゃ……

「お、大国様!!!」

もう悲鳴を通り越して、泣きそうな叫びに、流石の祖母も「さあさ、ちょっと横になりましょう」と客間へと連れていくのを迦具土が手伝い、また眠らせたらしく、兄に詳しく話せとせっついている。

「いや、話しただろう?」

「そうなんだが、石長が出戻りってのは知ってて言ったのかって事だ」

「ん?あぁ、なんか昔に学校で習ったような気がしないでもない」

「純平……お前は賢いのか馬鹿なのか……」

「爺ちゃん酷っ!」

「そうよ?あなたが石長さんと仲良くしているのは知ってたけど、女性の気持ちをもっと考えられる子だと思ってたのに……これじゃ高校生の翔平と変わりませんよ?」

「婆ちゃん、俺関係ないじゃん!」

「ちょっと待ってくれよ。俺だってちゃんと話を聞いた上で、治るまで待つって言ったんだよ。その後に、今まで周りには友達と言って色々出かけたりしてたけど、神様って知ってたし、それでも俺は真面目に接してきたとも伝えたんだ……そしたら怒り出してさ……なんでだろ?やっぱり俺、振られたのか?」

神様、兄のこの馬鹿さを何とかしてください……

あ、神様目の前にいるじゃん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~

ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。 「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。 世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった! 次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で 幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──! 「この世に、幽霊事件なんてありえません」 幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元魔法少女の後日談は珈琲が飲めるようになってから。

キリ
キャラ文芸
雨谷しぐれが魔法少女の頃はどんなところにでも手が届いた。手の届く範囲内にだけは手を差し伸べたがるしぐれにとって魔法少女は居心地の良いものだった。しかし永遠に魔法が使えなくなる総魔力切れを起こしてしまい、魔法少女を引退する。いきなり手の届く範囲が激減し自分の力のなさを痛感する。 そんなしぐれは同級生の伏名みとまに染髪に連れ出したり、少しずつ普通の生活に慣れようとする。そんな時に一人の怪しげなドレスの女に出会い…… 魔法少女を引退してもなお大きくなる正義感にしぐれは振り回されてばかり……。そんな自分にしぐれは納得出来なかった。だから、魔法少女を引退した彼女が選んだのは魔女になることだった。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...