62 / 103
石長比売の決断
.
しおりを挟む
お菓子売り場でこれでもかというほどお菓子を詰め込んだ子供用のカゴ。
300円を遥かに超えて、祖父はよく食べているせんべいまで手に持っている。
「お爺さん?そのお菓子の山は何かしら?」
「いやな、昔の菓子が沢山あってつい……」
「お菓子は300円までですよ?一週間分でね?」
「そ、祖母殿……ダメか?」
「ダメです!……と言いたいところですけど、石長さんへのお見舞いということで、ちゃんとおすそ分けができるのならいいですよ?」
「祖母殿ー!」
「おい、やるだけじゃだめなんだぞ?」
「なんだ、迦具土も欲しいのか?」
「要らんわ!」
「そうねぇ。買い物袋に入れるところに、小さな袋があるから、そこで三つに分けましょうか」
「み、三つ?何故だ!俺の取り分が……」
「大国さんと兄貴と石長さんの三人の分ですから」
悲鳴と言うよりも、既に青ざめている大国さんを何とかなだめて、お会計をして三つに分ける。
あれはダメこれはダメと文句を言うので、適当に三つに分けて袋に入れると、しっかりとツヤッツヤのほっぺはこれでもかと言うくらいに膨らんでいた。
家に帰ってただいまと言おうとしたが、二人の言い争いが聞こえてきたので、荷物を置いて部屋に行くと、布団の上に立って怒っている石長さんと、同じく腕を組んで仁王立ちの兄。
俺達が買い物に行ってた間に何があったんだ!
それでも手洗いとうがいと言われて洗面所へと行き、迦具土と大国さんと戻った時には祖父母は台所で手洗いなどをしたらしく、冷蔵庫に色々ろと詰めている所で、「まぁ、夫婦喧嘩みたいなものにしか聞こえないが」と祖父も呑気に言っている。
「兄貴……ただいま」
「おう、お帰り。翔平、この頑固な石長さんがお前の姉になるのは嫌か?」
「は?え?姉?」
「姉だとー?」
「まぁ、人間のルールには従えん夫婦とならなれるがな」
早速、おやつの袋をどれにしようか選んでいる大国さんは、サラりと怖いことを言ってのけ、驚いているのは俺と迦具土だけ。
祖父母は呑気に夕飯の支度を始めてしまった……
一体なんの話をすれば結婚となるのか意味がわからない。
「ちょっと二人とも落ち着いてよ。とにかくこっちの居間で座って話したら?」
そう言ってお茶を取りに行き、祖父母に結婚がどうのこうのと言っていることだけ伝えると、「純平が決めることだしなぁ」などと呑気なことを言っている祖父に、「あら、お赤飯炊くのには今日は無理ねぇ」等と祝い事をしようとしている祖母。
「ご飯の支度の前に来てよね?」
それだけ言って、みんなのお茶を持って行くと、あぐらを書いて腕を組んでる兄に、正座をしてプルプルと怒りをあらわにしている石長さん。
「迦具土、怖いよあの二人」
お茶をみんなの前において、話を聞こうとしたら、「あー、これは駄菓子と言ってだな、ほれ、石長に見舞いだ。このいちばん美味しそうな菓子をやる。源三郎と選んだんだぞ?こっちは純平にだ」
「ありがとうございます」
「大国様、ありがとうございます。後で頂きますので机に置いて下さいませ」
「わ、分かった……それより結婚だが……」
「大国様、私の気持ちはもう話してあります。なのに……なのに純平さんが!!!」
「落ち着け。純平、お前、話を聞いた上で何と言ったんだ?」
珍しく大国さんがまともなことを言っている。
それだけでも奇跡なのに、兄は「離れるくらいなら一緒になればいいと言っただけだ」と言う。
全く、雰囲気のひとつもない……が、兄に惚れているはずの石長さんは喜びこそすれ、なんで怒っているのだろう?
300円を遥かに超えて、祖父はよく食べているせんべいまで手に持っている。
「お爺さん?そのお菓子の山は何かしら?」
「いやな、昔の菓子が沢山あってつい……」
「お菓子は300円までですよ?一週間分でね?」
「そ、祖母殿……ダメか?」
「ダメです!……と言いたいところですけど、石長さんへのお見舞いということで、ちゃんとおすそ分けができるのならいいですよ?」
「祖母殿ー!」
「おい、やるだけじゃだめなんだぞ?」
「なんだ、迦具土も欲しいのか?」
「要らんわ!」
「そうねぇ。買い物袋に入れるところに、小さな袋があるから、そこで三つに分けましょうか」
「み、三つ?何故だ!俺の取り分が……」
「大国さんと兄貴と石長さんの三人の分ですから」
悲鳴と言うよりも、既に青ざめている大国さんを何とかなだめて、お会計をして三つに分ける。
あれはダメこれはダメと文句を言うので、適当に三つに分けて袋に入れると、しっかりとツヤッツヤのほっぺはこれでもかと言うくらいに膨らんでいた。
家に帰ってただいまと言おうとしたが、二人の言い争いが聞こえてきたので、荷物を置いて部屋に行くと、布団の上に立って怒っている石長さんと、同じく腕を組んで仁王立ちの兄。
俺達が買い物に行ってた間に何があったんだ!
それでも手洗いとうがいと言われて洗面所へと行き、迦具土と大国さんと戻った時には祖父母は台所で手洗いなどをしたらしく、冷蔵庫に色々ろと詰めている所で、「まぁ、夫婦喧嘩みたいなものにしか聞こえないが」と祖父も呑気に言っている。
「兄貴……ただいま」
「おう、お帰り。翔平、この頑固な石長さんがお前の姉になるのは嫌か?」
「は?え?姉?」
「姉だとー?」
「まぁ、人間のルールには従えん夫婦とならなれるがな」
早速、おやつの袋をどれにしようか選んでいる大国さんは、サラりと怖いことを言ってのけ、驚いているのは俺と迦具土だけ。
祖父母は呑気に夕飯の支度を始めてしまった……
一体なんの話をすれば結婚となるのか意味がわからない。
「ちょっと二人とも落ち着いてよ。とにかくこっちの居間で座って話したら?」
そう言ってお茶を取りに行き、祖父母に結婚がどうのこうのと言っていることだけ伝えると、「純平が決めることだしなぁ」などと呑気なことを言っている祖父に、「あら、お赤飯炊くのには今日は無理ねぇ」等と祝い事をしようとしている祖母。
「ご飯の支度の前に来てよね?」
それだけ言って、みんなのお茶を持って行くと、あぐらを書いて腕を組んでる兄に、正座をしてプルプルと怒りをあらわにしている石長さん。
「迦具土、怖いよあの二人」
お茶をみんなの前において、話を聞こうとしたら、「あー、これは駄菓子と言ってだな、ほれ、石長に見舞いだ。このいちばん美味しそうな菓子をやる。源三郎と選んだんだぞ?こっちは純平にだ」
「ありがとうございます」
「大国様、ありがとうございます。後で頂きますので机に置いて下さいませ」
「わ、分かった……それより結婚だが……」
「大国様、私の気持ちはもう話してあります。なのに……なのに純平さんが!!!」
「落ち着け。純平、お前、話を聞いた上で何と言ったんだ?」
珍しく大国さんがまともなことを言っている。
それだけでも奇跡なのに、兄は「離れるくらいなら一緒になればいいと言っただけだ」と言う。
全く、雰囲気のひとつもない……が、兄に惚れているはずの石長さんは喜びこそすれ、なんで怒っているのだろう?
0
お気に入りに追加
94
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~
ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。
「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。
世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった!
次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で
幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──!
「この世に、幽霊事件なんてありえません」
幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の
ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元魔法少女の後日談は珈琲が飲めるようになってから。
キリ
キャラ文芸
雨谷しぐれが魔法少女の頃はどんなところにでも手が届いた。手の届く範囲内にだけは手を差し伸べたがるしぐれにとって魔法少女は居心地の良いものだった。しかし永遠に魔法が使えなくなる総魔力切れを起こしてしまい、魔法少女を引退する。いきなり手の届く範囲が激減し自分の力のなさを痛感する。
そんなしぐれは同級生の伏名みとまに染髪に連れ出したり、少しずつ普通の生活に慣れようとする。そんな時に一人の怪しげなドレスの女に出会い……
魔法少女を引退してもなお大きくなる正義感にしぐれは振り回されてばかり……。そんな自分にしぐれは納得出来なかった。だから、魔法少女を引退した彼女が選んだのは魔女になることだった。
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる