八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
61 / 103
石長比売の決断

.

しおりを挟む
ルンルンと嬉しそうな大国さんは、しっかりと祖父と祖母の間で手を繋ぎ、迦具土と二人で後ろからついて行く。

「馴染んでるよなー。爺ちゃんたちの曾孫で行けるんじゃない?」

「お前、それよりもあいつら二人にしていいのか?」

「うん。二人で話せる時間いるんじゃないかなって思ったんだよ。兄貴もぶっきら棒に言ってたけど、本当は石長さんを助けに行くほどきっと好きなんじゃないかな?石長さんは気を使いすぎるところがあるから、兄貴の前では素直になってくれるといいんだけど」

「お前……恋愛なんてわからんて言ってたくせに」

「この位はわかるよ。だって、兄貴があんな顔して黙る時って怒ってる時だもん。石長さんが決めたことって言っても納得してないからあんな顔してたんだと思うんだ」

「兄弟だからわかる……ってやつか。ま、二人に任せるとして、走っていったぞ?不良園児……」

「え?」

祖父母もポカーンとしており、スーパーの入口でカートの上にカゴを入れて、祖母と回ってきてと迦具土に言ってから、祖父を連れてお菓子売り場へと行くと、小さな子供用のカゴを持って駄菓子を選んでいる大国さん。

「おお、遅かった……な?」

「大国様、ここはそのような格好の子供が一人で走り回って良いところではありませんぞ?他の買い物客の方々にぶつかったらどうするのですか?誰かが怪我をしたら、大国様が怪我をしたら、今の見た目の状態では、私たち家族が放ったらかしにしていたと世間では見ます。
良いですか?スーパー等、その姿で来るのなら、カートに乗るか、ちゃんとそばに居るかして下され。罰としてお菓子は……」と籠を取り上げると、手を伸ばして「返せー」と言っているが、今の大国さんからしたら、祖父は大男。

曾お祖父さんに怒られる曾孫の図の完成だ。

「もう走らん。皆について行く。おやつも一個で我慢する。だからカゴー!」

そんなやり取りをしていると、やはり周りからはジロジロと見られてしまうので、祖父が屈んで、大国さんにカゴを持たせ、「私とて大国様にこのようなことは申したくはなかったのです。ですが、近年ではこのくらいの年の子供が親の手を離れて遊んでいる隙に、人攫いにあったり、勝手に出ていって車に轢かれたり、危ないことも多いのです。
せめて、人間の住まう所にいる時だけ、私たちのお願いを聞いてくだされ」

「うん、済まなかった源三郎。翔平も」

「爺ちゃん」

「では、一緒に選びましょうか。懐かしい菓子が沢山ありますな」

ウキウキし出す祖父におやつは300円まで!と言って、近くのチョコレートが置いてあるところへと行き、三つ選んで持っていく。

「源三郎、これはなんだ?キラキラした袋に菓子が入ってるのか?それと、これは……」と仲良くしているので、祖母のところまで行ってチョコレートをカゴに入れると、「虫歯になるわよ?それにお菓子は300円迄でしょう?」と言われる。

俺の扱いは大国さんと同じかよ!!!

「勉強してると、甘いものが欲しくなるの!ちゃんと歯磨きするから買って!」

「翔平、ちゃんと合格しなさいよ?」

ぐさーっと来る言葉と共に、ほほほと言いながら果物を選ぶ祖母。

「この間、たくさん買いだめしちゃったからねぇ。純平と石長さんを二人にさせてあげたかったんでしょう?」

勘の良い祖母を持つと、ちょっと怖い。

でもその通りなので、自分の考えと、先程大国さんが怒られていたことを話すと、果物をカゴに入れてお菓子売り場へと行く。

まさか……お説教?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~

ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。 「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。 世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった! 次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で 幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──! 「この世に、幽霊事件なんてありえません」 幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

元魔法少女の後日談は珈琲が飲めるようになってから。

キリ
キャラ文芸
雨谷しぐれが魔法少女の頃はどんなところにでも手が届いた。手の届く範囲内にだけは手を差し伸べたがるしぐれにとって魔法少女は居心地の良いものだった。しかし永遠に魔法が使えなくなる総魔力切れを起こしてしまい、魔法少女を引退する。いきなり手の届く範囲が激減し自分の力のなさを痛感する。 そんなしぐれは同級生の伏名みとまに染髪に連れ出したり、少しずつ普通の生活に慣れようとする。そんな時に一人の怪しげなドレスの女に出会い…… 魔法少女を引退してもなお大きくなる正義感にしぐれは振り回されてばかり……。そんな自分にしぐれは納得出来なかった。だから、魔法少女を引退した彼女が選んだのは魔女になることだった。

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...