八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
59 / 103
石長比売の決断

.

しおりを挟む
襖を閉めて祖父母と兄のいる部屋に戻ると、お茶を入れてくれたのでそれを飲みながら、迦具土が話をしてくれるのを待つ。

「___純平。お前に頼みがある」

「何だ?」

「石長が目を覚ましたら、必ず神気のことを話してくる。何を提案されても聞かないで欲しい」

「わかった」

「ちょ、兄貴!分かったって、何もわからないじゃん」

「いいんだ。迦具土は遠回しに上手く話したりするような性格じゃないだろ?それを頼んでくるってことは、石長さんにとってあまりいい話じゃないと思うんだ」

「そうだ。どう話せばわかりやすいかとか俺は苦手だし……今の純平の中にある神気は安定してきてるし問題もないと思うが、今の少しずつ神気を石長に戻す方法では回復は遅い。だが効果はあるんだ……それをあいつは、要らんと言おうとしてる。少しでもお前の負担にならんようにな」

「気にしなくていいのに……」

「迦具土、さっき聞こえたんだけど、神の国って何のこと?」

迦具土が話そうとしては口篭るので、話してくれるのを待っていると、「今夜の晩飯はなんだー?」と呑気な声が庭から聞こえてくる。

玄関から来いよ!

大国さん……

「大国さん、玄関て知ってます?」

縁側で靴を脱いでいる大国さんに言うと、「知っておるわ!」と返事が来るものの、ポイポイっと本当の子供らしく、靴を脱ぎ捨てて上がってくるが、お茶とお茶請けを見て、早速手を伸ばそうとしたところをパチン__と祖母に手を叩かれて、手洗いうがいに連れていかれる。

こんなこと出来るの、婆ちゃんくらいだよな……

大国さんの分の麦茶を入れるついでに洗面所を見ると、踏み台に乗って手首までしっかりと洗わされている大国さん。

戻ってきた時には、もう食べてもいいか?と祖母に聞いている素直さ。

話さなかったら可愛いのに……

「この、のり塩芋はいつもながら美味いな」

「ポテトチップスって言うんですよ。いろんな味があるんですけど、今日は兄貴もいるから開けただけで普段はあまりおやつ的に出ませんから」

「え?じゃあ、毎週食べられるのか?だったら次は違う味がいい!」

「分かりました。来週はあられ入れておきます」

「何でだ!!!」

「大国さん、石長さんなんだけど……」

「あ、俺がこっちにこさせた。余りにも煩いんでな。先に神気を取ってもいいか?」

「あ、どうぞ」

またも小瓶とハンカチが用意され、小瓶いっぱいに神気が溜まったところで、「やってみろ」と大国さんが兄にハンカチを渡している。

「お前が端っこを持つ。石長が反対側を持つ。これで繋がるんだが、お前から石長に気を送るイメージって分かるか?それが出来れば、純平から直接渡すことが出来る」

「でも量って見えないから、その加減はどうなるんだ?」

「そうだな……最初は小瓶に移せばいい。慣れてきたら溜まるまでの時間を数えて、その数えた分だけ石長に与えればいいんだが……」

「石長はまだ文句を言ってるぞ?純平の言うことなら聞きそうだが、今回はそのやり方は無理だろう」

「迦具土が言ってたやつ?全部まだ聞いてないんだけど……」

そう言うと、ポテチを手に持ちながら大国さんまで口ごもってしまう。

そんなに良くないことなのだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世界的名探偵 青井七瀬と大福係!~幽霊事件、ありえません!~

ミラ
キャラ文芸
派遣OL3年目の心葉は、ブラックな職場で薄給の中、妹に仕送りをして借金生活に追われていた。そんな時、趣味でやっていた大福販売サイトが大炎上。 「幽霊に呪われた大福事件」に発展してしまう。困惑する心葉のもとに「その幽霊事件、私に解かせてください」と常連の青井から連絡が入る。 世界的名探偵だという青井は事件を華麗に解決してみせ、なんと超絶好待遇の「大福係」への就職を心葉に打診?!青井専属の大福係として、心葉の1ヶ月間の試用期間が始まった! 次々に起こる幽霊事件の中、心葉が秘密にする「霊視の力」×青井の「推理力」で 幽霊事件の真相に隠れた、幽霊の想いを紐解いていく──! 「この世に、幽霊事件なんてありえません」 幽霊事件を絶対に許さない超偏屈探偵・青木と、幽霊が視える大福係の ゆるバディ×ほっこり幽霊ライトミステリー!

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

少年神官系勇者―異世界から帰還する―

mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる? 別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨ この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行) この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。 この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。 この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。 この作品は「pixiv」にも掲載しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...