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石長比売の決断

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「そう?六人分だし、夜にも使うから」

「ねえ、何うどん作ってる?普通のうどんでいいって言おうと思ってきたんだけど」

すると、「え?」と言いながらかまぼこを大量に飾り切りしている石長さん。

「いや、かまぼこは一人三つあればいいから、それでいいと思うんだけど、それ、なんの形……」

よく祖母がやっているような、船とかの形ではなく、何故か小さなハート型でくり抜いたかまぼこが五つ。

その他は何かの葉の形に綺麗に編んであり、器用だなと思いつつも見てしまうのはハート型。

「こここ、これは、可愛かったので……皆さんには普通のおうどんですと伝えてください」

そう言って台所を追い出され、またヒョコッと顔を出すと、迦具土と兄の分なのか、ペットボトルのジュースを押し付けられて追い出される。

ただのうどんでいいのに……

「はい、ジュース」

そう言っておくと、追い出されたんだという顔をされたので、すごいわかめの量だったとだけ言ってペットボトルを開ける。

食前には飲まないのだが、渡されたのでいいだろう。

うどんを二人が運んできたので、それを食べながら、普通のうどんでよかったと隣の兄を見ると、やはりハート型のかまぼこが……

それをニコニコとして食べているので、何から突っ込んでいいかわからずに、ご馳走様でしたと言って、客間に布団を敷に行く。

「なぁ……」

「あ、迦具土。枕取って」

ボフッと投げられ、それを置いてから、今度不意打ちで投げつけてやると心の中で思いながら、言いかけたことを聞くと、「大国が夕方来るだろ?」と言うので、「土曜日だし」とだけ答える。

「だーかーらー!石長をここに置くつもりなんじゃないのか?」

「前にもそんな話出たし、俺はいいんだけど」

「それについては俺も構わん。だが、思ってたよりも早いなと思ってな」

「そう言えばそうかもそれないけど、大国さんにも考えがあるんじゃない?」

「だといいがな。俺は石長を呼んでくる。まだ、神気が弱いから寝るに越したことはない」

石長さんを待っていると、迦具土となにか言い争うような声が聞こえて襖を開けると、「黙って寝てたらいいんだお前は!」と石長さんを怒る迦具土。

「どうしたの?」

「こいつが俺の言う事聞かねーから」

「だから、私は話を聞いて欲しいと言うておる!何故、話をしてはならぬのじゃ!」

久しぶりに姫言葉とでも言うのであろうか、普通に話す石長さんを見たなぁとのんびりと二人のやり取りを見ていたら、『神気』『神の国』と聞こえたので、結構重要な話なのではないかと迦具土を止めて、石長さんに話を聞こうとするも、「とにかく!布団に入ってくれ……お前の話したいことはだいたいわかるんだよ。俺も神だから、きっとお前と同じことをする!だがな、今、弱ってるお前が話したところで誰も話なんか聞きゃーしねーんだ」

「迦具土……?」

「翔平、悪いが掛け布団をめくってくれ」

言われるがままに捲ると、無理やり横にしたと思ったら顔に手を翳す。

すぅっと寝入ったのがわかり、やはり迦具土の方が位が高い神なんだと改めて思ってしまう。
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