八百万の学校 其の弐

浅井 ことは

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石長比売の決断

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「まぁまぁ、二人とも喧嘩するなって。大国さんには俺の椎茸もやるから」

「要らんわ!器が椎茸しか無いじゃないか!俺にも肉をくれ!」

祖父がお肉を鍋に追加で入れている間も、空になってからだと言われてお預けを食らう大国さんは、本当にすき焼きを食べに来ただけのようにも見えるが、食べ終わったらきっと石長さんの話があるのだろう。

「源三郎、肉!肉をくれ!」

「もうすぐ煮えるので……純平も迦具土君もその辺で。私達の椎茸が無くなるじゃないか。それに、婆さんなんてまだ何も食べてないんだぞ?」

「あ、ごめん婆ちゃん」

「すまん」

「そ、祖母殿、半分椎茸を貰ってくれ。あと長ネギも。源三郎、次の肉は祖母殿に。それとご飯お代わり!」

「はいはい。じゃあ、遠慮なく。そうだわ、お漬物があるのよ。高菜漬けだけれどいかがかしら?」

「きゅうりの大きいのはあるのか?」

「浅漬けですか?」

「それかな?前に食べたごまの香りのやつ」

「それなら直ぐに出来ますから待っててくださいね」

手伝うよと言って祖母についていき、ぬか漬けや高菜を出している間に、洗ったきゅうりを麺棒で叩き、適当な大きさにザクッと切ってから、少しの塩を振ってから、塩昆布と和えてごま油を垂らして白ごまを振り掛ける。

「翔平、これだけは上手よねぇ?」

「これだけじゃないから。キャベツのも美味かったでしょ?」

「塩昆布が丁度いい感じで美味しかったけど、キャベツは焼肉じゃないんだから、もう少し小さく切らないとねぇ」

「今度からそうする。これで全部?」

「沢庵もあるけど、これだけあれば何とかなるでしょ」

祖母と漬物を持っていったら、早速きゅうりを齧りだし、「コレコレ」と満足そうに食べているが、今度は祖母のお椀にたくさんのお肉と野菜が入っている。

大国さんが気をつかってくれたのだろうが、てんこ盛りはやめろ!

すき焼きをみんなで食べたあと、兄が「もういいか?」と言うので、大国さんも「いいぞー、腹いっぱいだ」とご機嫌で言っているが、これを見たらきっと自分にもくれと言うに違いない。

「汁はまだあるな。翔平、卵残ってるか?」

「うん。もうご飯にかけていい?」

「いいぞ。あ、お前肉も残してたのか。俺も残しておけばよかったな……」

「何が始まるんだ?」

不思議そうな顔をしている大国さんに、一度食べたことがある迦具土が、「腹いっぱいなんだろう?もう食えないんだろう?」と意地悪を言いながら、自分のご飯の上にも卵をかけているのを見て、祖父の器の卵を自分のお子様茶碗にかけて、ワクワクしながら待っている。

美味しいものレーダーでも着いてるんじゃあ無いだろうか?

小さめのおたまで温めた残り汁をみんなのご飯にかけていく兄。

生卵なので、この熱い汁でちょうど卵が良い感じになる。

そして濃い汁も卵でまろやかになるので、すき焼きの時は兄も俺も一回りでかい茶碗にしている。

しかも最後にこれが食べたいので軽く一杯しか食べない。

今回はご飯山盛り。真ん中に隙間を開けて卵を流し込み、周りに残った具を置いていつでもかけて貰えるように準備は万端!
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